いつまで【7話】
「勇者と魔王の伝説?」
「はい、女神教に伝わる伝説っすね」
「ふん。我輩は興味などない」
(大まかには知ってるけど、実は詳しく知らないんだよな……)
「私は聞きたいなー。君、詳しいの?」
「教会で兄が働いてるんで、ちょっとだけですけど」
「あ、街見えたよ」
「やっとか。適当に宿を取って飯を食うぞ。我輩は腹が減った」
(ああ…疲れたしふかふかの布団で寝たいよ…)
「酒場行ってみよっか。まだ指名手配とかはされてないと思うし」
街についてから三人は二階が宿になっている酒場へ入った。
とりあえず二部屋を取り、宿代は謎の少女がさらっと支払った。
「謎さんかっけー」
「……羽振りがいいな」
「それほどでも〜」
「自分、さっきの戦闘でかなり汚れたんで、湯浴みしてきますね」
「我輩も行こう」
(やっと風呂に入れる…!)
「そう?じゃ私も少し休もうかな」
がろとガッデムは浴場へ向かい、謎の少女は部屋へ向かった。
湯浴みを終えた男二人は、酒場へ降りてくる。
「さて腹が減った。何か食べよう」
「その前に、どんな依頼があるか確認してみません?」
(腹減ったって言ってるのに!!!!)
酒場の壁には、冒険者向けの依頼書がいくつも貼られていた。
「魔物討伐に護衛、薬草採取……色々ありますね」
「うむ」
(ああダメだ腹が減った)
「……魔王討伐の依頼は、まだ来てないですね」
「そうか」
(……今夜くらいは、何も考えずに休んでもいいか……そんなことより腹が減った…)
「まあ、今日はもう休みましょう。せっかく宿を取ったんですし」
(ガッデムさんずっと腹鳴ってるなあ)
「うむ。一晩くらいゆっくりしても問題あるまい」
がろはふと周囲を見回した。
「あれ?謎さんは誘わないんですか?」
「部屋の前に置き手紙があった」
「なんて?」
ガッデムは懐から手紙を取り出す。
『眠すぎるので休みまーす。二人でご飯食べてきて〜』
「……謎さんらしいっすね」
「まったくだ」
二人はそのまま酒場の席についた。
「とりあえず酒を頼んで飯を食わねば」
ガッデムは店員を呼んだ。
「謎の少女から、食事代も宿代に入ってるからね、と言われている」
「じゃあ、いっぱい食べられますね!」
「うむ!」
(よっしゃいっぱい食べられる!昨晩は何も食べてないからもう腹が背中にくっつきそうだ…)
二人は酒を飲みながら、料理を次々と注文した。
肉に魚に芋料理。
気付けばテーブルの上は料理で埋め尽くされていた。
「ごちそうさまです!」
「我輩も満足だ」
(久しぶりに落ち着いて飯を食えた気がする……。やっぱり魔王なんて名乗らなければ……いやもうあとには引けないんだ。)
二人でたらふく食べたあと、ガッデムは部屋へ戻ることにした。
「じゃあ、俺はちょっと出てきますね」
「どこへだ」
「近くにある教会へ行ってきます」
「そうか」
「じゃ、ガッデムさんまた後で」
がろは酒場を出て、教会へ向かった。
ガッデムは一人、部屋へ戻る。弟子になるとか言っておきながら、師匠を置いていくらしい。
扉を閉めると、さっきまでの喧騒が嘘のように静かになった。
ベッドに腰を下ろし、天井を見上げる。
(勇者と魔王の伝説……か)
ふと、王都で出会った勇者の姿が頭をよぎる。
(俺は、いつまで逃げ続ければいいんだろう)
そんなことを考えながら、ガッデムは目を閉じた。
ただ魔王を名乗っただけの男と、望んでもいないのに勇者にされた少女。
二人の運命は、違う道を通るだけで同じなのかもしれない。




