↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/21

勘弁して【3話】

王都から逃げ出した二人は、ひとまず街道を外れ、日が暮れる前に人目につかない森を目指していた。


「とにかく、人目のつかない場所を歩きたい」

「そうだね。勇者一行も追いかけてくるだろうし」

「…………」


ガッデムはちらりと隣を見る。

当然のようについてきている謎の少女。


(なんでこいつついてくるんだよ。俺は魔王だ。魔王ともあろうものが、女一人に「ついてくるな」と懇願するわけにはいかない……)


「………ついてくるな!」

「えー、そう言われてもついてくって言ったじゃん」

「ええい、我輩は魔王だぞ!」

「わかったわかった」


少女はくすくすと笑った。


(全然わかってない……)


「別に邪魔しないし、メリットもあると思うよ?」

「どんなメリットだ!」

「んー……これから遭遇するであろう魔物が弱体化するとか?」

「……魔王が魔物に襲われるわけないだろう」

「えー?どうなんだろ」


少女は楽しそうに笑う。ガッデムは頭を抱えた。


(頼むから余計なことを言わないでくれ。今の俺は勇者一行から逃げてる最中なんだぞ)


その直後、ガサッと茂みが揺れた。


「………まさか…」


「グオオオオッ!」


森の奥から魔物が数匹飛び出してきた。


「…………なぜだ!」


ガッデムは再び頭を抱えた。


(なんで本当に出てくるんだよ!)


「ほら、私の言った通りじゃん」

「嬉しそうにするな!」


魔物が唸り声を上げながら迫ってくる。


(どうする。俺は魔王だ。ここで逃げたら威厳が死ぬ。)


ガッデムは覚悟を決め、自前の杖を取り出した。


(俺は今まで冒険者をやってきた男だ。この程度の魔物、俺の手にかかればちょちょいのちょいだ!)


「へー、どんな魔法を見せてくれるの?」

「ふん。今に見ていろ」

(魔法だ。華麗な魔法で一撃だ。炎か雷か……)


刹那、魔物が飛びかかってきた。


「ぬおおおおおっ!」


ドゴッ!


「ギャッ!」


バキッ!


「グゲッ!」


ボコッ!


「グオッ……!」


数秒後。魔物は地面に伸びていた。


「…………」


ガッデムは杖を肩に担ぐ。


「どうだ」

(……よし。倒した。勝った。問題ない)


少女は倒れた魔物と杖を見比べる。

そして──


「物理じゃん!」


少女は腹を抱えて笑い転げた。


「魔法じゃないじゃん!杖で殴っただけじゃん!」

「うるさい!」

「魔王なのに!」

「我輩は魔王だ!」

「魔法使わないのに?」

「杖を持っているだろう!」

「その杖鈍器じゃん!」

「うるさーい!」


笑い続ける少女。

ガッデムはこめかみを押さえた。


(……勘弁してくれ)


ようやく少女が笑いを収めた、そのとき。


「で、これからどうするの?」

「どうする、とは?」

「追手から逃げないとでしょ?」

「…………」


そうだった。王都から逃げてきた。勇者たちにも追われている。魔王を名乗ってしまった以上、今さら戻るわけにもいかない。


そして──隣には、勝手についてきた謎の少女。


(……俺、これからどうすれば?)


ガッデムは空を仰いだ。日が傾き始めている。


「……とりあえず、森で夜を越す」

「じゃあ、寝る場所探さなきゃね」

「そうだな」


二人は再び歩き始めた。


その直後。


ガサッ。


「…………」


二人の前で、茂みが揺れた。ガッデムの足が止まる。


「また魔物かな?」


少女が楽しそうに覗き込む。ガッデムはゆっくりと杖を構えた。


「…………」


茂みから、小さなウサギが飛び出してきた。


「…………」

(神様お願いします、勘弁してください)


次は勇者サイドです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。