どうして【2話】
街を歩いていた魔王ガッデムは、突然衛兵たちに囲まれた。
「いたぞ!あいつだー!」
(え俺?!俺なんかしたっけ?!……そういえば魔王とか名乗ったんだった!!!!)
困惑するガッデムに、衛兵が剣を向ける。
「お前が魔王だな!」
「……そうだ。我輩こそが魔王。魔王ガッデム。」
(やばい超逃げたい。なんで魔王なんて言っちゃったんだ、過去の俺。)
どうにか全速力で走って衛兵達を撒いたガッデムは、とりあえず家に帰って寝ることにした。
しかし数日後、正式に魔王討伐隊が派遣される。その中には勇者もいた。顔を隠し、深くフードを被って王都を抜け出そうとしたガッデムの前に、白銀の鎧を纏った勇者が立ちはだかる。
「貴様が魔王か!」
(やべぇよ。勇者来ちゃったよ。早く逃げたい。)
それでもガッデムは、堂々と頷いた。
「……そうだ。我輩こそが魔王。魔王ガッデム。」
(まじで過去の自分を殴りたい。どうしてこうなった!)
緊迫した空気の中、突然ボンッ!と音が響き、辺りが白い煙に包まれた。
「こっち!」
何者かに腕を引かれ、その場から逃げ出す。しばらくして煙が晴れると、そこにはフードを深く被った少女がいた。
「何者だ」
「そんなに警戒しないでほしいな。」
「なぜ我輩を助ける」
「助けたかったから?」
「我輩は魔王だ。それでもそう言えるのか」
「うん。」
少女は笑った。
「名はなんという」
「謎の少女。」
「名前を聞いているんだが。」
「だから、謎の少女。」
ガッデムは頭を抱えた。少女は楽しそうに笑いながら、魔王に問いかける。
「ねえ、魔王ガッデム。私と一緒に勇者から逃げる旅をしない?」
「一緒に行く理由も意味もわからん。」
「え?だって面白そうだから。」
「……なんなんだ……」
「断られてもついて行くけどね。」
こうして魔王ガッデムの逃走劇に、一人の役者が加わった。
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勇者でぃんは、気付けば王の前に立っていた。ついこの前まで駆け出しの冒険者だったはずなのに、村人たちに勇者様万歳と持ち上げられ、あれよあれよという間に王都へ連れてこられたのだ。
「勇者よ。魔王が復活した。そなたには魔王討伐を命じる。」
どうしてこうなった。
そんな疑問を口にする暇もなく、白銀の鎧と兜を支給され、討伐隊の一員として出陣することになった。
そして現在。
王都を出ようとしていた魔王の前に、でぃんは立ちはだかっていた。怖い、魔王とか怖すぎる。死んじゃうかもしれない。それでも勇気を振り絞り、一歩踏み出す。
恐怖に震える手で剣を握りしめ、精一杯の低い声を絞り出した。
「貴様が魔王か!」
黒衣の男はこちらを見た。そして、静かに頷く。
「そうだ。我輩こそが魔王。魔王ガッデム。」
(怖いよ無理だよ!私まだ新人の冒険者だったのに!ああ、お母さん……親不孝者でごめんなさい。)
緊迫した空気の中、突然ボンッ!と音が響き、視界が真っ白になった。
(これ、私もよく使う目くらましの煙玉だ。冒険者御用達の。)
風が吹き、煙が晴れる。目の前には誰もいなかった。
逃げられたんだ。そして私は、生き延びたんだ。
「勇者様!魔王が逃げました!!追いましょう!!」
「あっ、えっ、追うんですか……?!というか私は勇者では……」
「勇者様、魔王を討てるのはあなたしかいないのです! さあ!」
どうして。どうして私の話を誰も聞いてくれないのか。
「さあ!魔王を追いましょう!勇者様!」
「……どうしてぇ……」
こうして勇者でぃんは、望んでもいない魔王討伐の旅を始めることになった。




