22話 ウノ
「…よしついたぞ。みんな荷物おろして中に入りな。スーツケースは床にそのまま置いていいよ。」
「ちわーっす。」
挨拶をして中に入る。木材メインで作られた、昔ながらの家だ。
住んでいるのが最新式の住宅なのもあって、余計に物珍しい。
どこか稚内のおじいちゃんのとこと似ている。
とりあえずスーツケースを広げて荷物を出し、一度外に出てみよう。
どうやら屋上があるらしい。
「ここの階段上っていいですかー?」
智也が佐呂間さんに聞いている。
えあいつ社交性高すぎない?初めて佐呂間さんと会ったの、たった三〇分前だよ…。
「おお、落ちないようにな。」
どうやらいっていいらしい。
なら登らない手はない。
石段を踏みしめ後を追う。平屋なのですぐに辿りついた。
「わぉ。」
町はずれにあることがよかったのだろうか。
辺り一面夕焼けが広がっている。
「すげえ。めっちゃきれいやん。」
「そうかい。それはよかった。また後でここに来よう。そしたら今度は満天の星空が見えるぞ。」
「マジすか。じゃ後でもっかい来ようぜ。」
智也は相変わらずテンションが高い。
これがあいつのデフォルトなのか。
それともただ深夜テンションなだけなのか…。
「じゃ戻ってみんなでウノでもしようぜ。」
前を下る智也が言う。
このメンツでウノをしたら、さぞ楽しいことだろう。
やらない理由がない。
「おっしゃ負けないでー。」
玄関を通り過ぎて靴を脱ぐ。
そして洗面所で手を洗う。
「ぜってーボコボコにしてやるからなー。覚悟しとけよ智也。」
「果たして君にできるかなー。」
舐めてる。本気で潰しに行く。
「…はいウノって言ってない!」
開始から二〇分。
一切終わる気配がない。理由は簡単だ。
「ウノミッケ」、つまりウノって言ってないから二枚追加させる、というルールが適用されすぎるのだ。出すと同時に言わないともう遅い。
とんでもない泥試合だ。
「ウノ!」
みんなが盛り上がってる隙をついて俺はすかさずウノにした。
よし、次のターンで赤か一が出れば…。
「ドロ二!」
…恐ろしいカードが場に出たようだ。
しかし俺には関係ない。
何しろ俺まではあと四人いて、まさか回ってくることなどありえない。
「ドロ四!」
牧野が続ける。
この時点でプラス六枚の効力がある。
喰らったらさぞ大変だろうなー。
「ドロ四!」
…おっと?
「ドロ四!」
え?
しかし残念。
次は智也のターンだ。
ここまで四人連続でドロ系のカードを出してきている。
さらにこれを跳ね返せるのはドロ四ただ一枚だけ。普通に考えて、智也がその一枚を持っている可能性は低いはずだ。
ああお疲れ智也。
お前あと二枚だったのに、ここでプラス一四枚喰らうのは、さぞかし大変だろうなぁ。
さあどんな顔をしてるかな。きっと絶望しているはず…。
なんであいつ、笑っているんだ?
智也がカードデッキの中から右側のカードを抜き取る。
そしてそれをゆっくりと札山に向けて動かしていく。
「残念だったな。お疲れ、尚。」
智也の指がだんだんと札山に近づく。
嘘だ。そんなはずがない。
まさかそんなことがあっていいはずがない…。
徐々にカードの全貌が見えてくる。
嘘だろ。黒の中に白の楕円。
その上下に…。
プラス四…。
「ドロ四!ウノ!」
「…ああああああああああああああああ!」
東雲尚、昇天。
嘘だろ…。
これは夢か?
それともナイトメアか?
またはバッドドリーム…?
「おーい尚―。プラス一八枚なー!」
「…マジすか…。」
「楽しー!」
横で智也と颯太がハイタッチしている。
「ひどいなぁ。人の心とかないんか?」
「いつ俺が人だといったー?」
…もう訳が分からん。
まさかの智也人外説あるか…?
「もーなんでだよー!」
一九枚に膨れ上がった手持ちのカードを呆然と見つめる。
もちろん俺のターンはスキップだ。
周りはまた一枚、また一枚とどんどん減らしていく。
くっそ、さっきまで俺も…。
「うーん。上がれないか…。」
智也がカードを一枚引いた。
そしてそれを場に出す。
「ウノって言ってない!」
「…うわ、やっちまった…。」
智也は渋々二枚を引いた。
今がチャンスだ。
「俺のターン!ドロー!」
どこかで聞いたことのあるセリフを叫ぶ。
そしてここで…。
リバースカードを出した。
回る順番が変わる。
次は智也の番だ。
「だから持ってないんだってばー。」
そう言って智也が一枚引く。
そしてまとめて三枚場に出した。
「ウノ!」
智也が勝ち誇った顔でこちらを見てくる。
いいんだ。
全て俺の、計画通り。
「…よっしゃようやく俺のターンか。智也め…。さっきはよくもやってくれたな…。」
手札には大量のスキップカードがある。
しかしそんなもの、今はゴミ同然だ。
「な、何をする気だ?」
智也が一歩後ろに下がる。
ただ逃がすつもりはない。
「これでも喰らえ!」
俺はとっておきの一枚を場に出した。
「こ、これは…。」
五人全員がそのカードに釘付けになる。
そして恐る恐るこちらを見る。
そう。俺が出したのは…。
とりかえっこワイルドだ。
自分の手札を任意の相手のものと完全にとりかえ、かつ好きな色を指定できる。
史上最強かつ最悪のゲームバランス崩壊チートカードだ。
「ははははははは。智也、交換だ!」
悪魔のような笑い声になった自覚がある。
でも仕方がないだろう。
だって見事などんでん返しだもの。
「う、嘘だ…。そんなはずが…。」
智也が仰向けになって倒れる。
あーすっきりした。
「最高でーす!あ、色は黄色ね。」
「黄色だと…。ないじゃねえか…。」
ざまあ。
俺の手札だったんだから無い色ぐらいわかるさ。
「いーまどんなきーもち?あはははは。」
「してやられた…。」
「やべ、ウノ!」
「あぁ…。」
続くターンで俺は見事黄色の一を出して一抜けになった。
あー楽しいこのゲーム。
最高傑作だろ。
「おーい飯にするぞー。」
佐呂間さんの声が聞こえる。
俺らはウノを切り上げて食卓へと向かうことにした。




