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19話 北極星

 「オリ曲班の人今日集まってくださーい。」

帰り学活の連絡の時に颯太が言う。

あれ、俺何か考えてたっけ?

「気をつけ、礼。あざしたー。」

帰り学活が終わった。

次々と皆が去る教室で、俺と颯太と福田と月川は教室の中央に集まる。

「じゃもう少し人が減ってから始めましょう。」

颯太がいう。

ちょうどよかった。

いうべきことを考えなくては。

この一か月間の行動を思い出してみる。

何をしてたっけ。月川に送った三〇秒ぐらいの曲を二曲作った。他は…。

「やっべ、なにもしてねえや。」

「はいじゃあ話し合い始めまーす。」

それぞれ席について、話し合いが始まる。

颯太はパソコンの画面を開き、派手なスライドを見せてきた。

「皆さん、二月中に考えてきましたかー?」

「…。」

全員沈黙する。

颯太は想定通りといったような反応を見せて続ける。

「私もあまりできていません。とても難しいです。」

やたらと丁寧な口調で続ける。

一体何を考えているんだ。

ここで颯太が一度話すのをやめ、こちらを向きなおした。

「私に二つ案があります。一つは、完全に一から曲を作る、という案。そしてもう一つは…。」

なんだろう。

一から作る以外の選択肢があるというのか。

「既存の曲を元に替え歌を作る、というものです。」

説明が続く。

「実行委員の方から三月中の提出を求められています。今から曲を作成するのは非常に難易度が高いので、個人的には替え歌の案を進めたいです。」

なるほど、確かに時間がまずいかもしれない。

ただ俺だって曲を作った。

それをそのままお蔵入りさせるのは口惜しい。

「でも俺、曲作ったよ?」

「え?」

颯太が驚いた表情でこちらを見る。スマホを開いて颯太に聞かせる。

「どう?試しに作ってみた。」

「おぉ…。うん…。」

何とも微妙な反応だ。

わかっている。短すぎる上に微妙なのだろう。

「まあ別に、替え歌でもいいと思うけどね。」

しっかりと付け足した。

それを聞いて、颯太は安堵したような表情を浮かべた。

「じゃあ、替え歌の方向でいきましょうか。」

ひとまず方針は決まった。

しかしこれで終わりではない。

次は替え歌の原曲を見つけなくては…。

「やること多いなー!」

窓の方を見て笑いながら叫ぶ。

スマホを開きながら、元にできそうな楽曲を探す…。

いつの間にか、とんでもない時間が過ぎていた。

「おーいお前ら!完全下校時刻だぞ!」

先生の声が聞こえる。

ふと時計を見ると、もういつの間にか六時だった。

「やっべ。急いで帰りまーす。」

慌てて荷物をまとめて撤収する。

でも今日で大体のことは決められた。

「お疲れ様でしたー!」

教室を飛び出して階段をかけ下る。窓の外には気動車が止まっているのが見える。

「まずい。あれを逃すと三〇分待ちじゃねえか。」

颯太が横で呟く。

それは避けたい。

早く帰ってプロ野球のオープン戦を見たいんだ。

なにがなんでもあの列車に乗らないと…。

「ピィィィィィィ!」

ホイッスルのような警笛を鳴らして、気動車が駅を離れる。

やってしまった。今日はせっかく注目のドラ一ルーキーが先発だったのに…。

「ま、そんな日もあるか。」

二人で並んで駅まで歩くことにした。

しかし、俺はひとつ違和感を感じていた。

「あれ、月川たちは?」

「え?あの二人歩いて帰ったでしょ。だってここまでそんな遠くないだろうし、三〇分駅で待つぐらいなら歩いた方が速いだろうからね。」

「へー…。」

「あれ?もしかして残念がってる?」

「いやそんなことねえし。勝手に解釈すんなよ。」

多分ごまかせたはず…だ。

ただこのままではまた蒸し返されかねないので、急いで話題を変える。

「そういえばさー、研究の論文終わった?」

「おい話題変えるなよー。まあ終わってないわけないんだけどさ。」

「まじかー。俺もやらなきゃなー。」

いつの間にか駅についていた。

二人でベンチに腰掛けて空を見上げる。

透き通ったような夜空の中心に、北極星が輝いていた。

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