VS黒の棺……ただし一方的な殲滅
「まぁ、ここへ来るのは簡単でした。うん?考えているっていう顔をしていますが待ちません。答えはシャドが獣化して、狼の嗅覚でクロヒメの匂いを感知したのです。狼とは元々、犬に近いので嗅覚も鋭いようで」
「がうっ!」
「はいはい、分かってるよ。もりりんも私の場所、感知したんでしょ?」
「がう」
うむ。と、そんな声が聞こえてきそうな鳴き声を聞いた。
「ほんの一時間の距離でしたのですぐ着きましたよ」
「そっか、ありがとう。それと、ごめんね、」
「「え?」」
「がう?」
「あれだ、つまんないことで出ていっちゃってさ」
クロヒメは頭を更に下げて、
「本当にごめん」
頭を下げるクロヒメに誰かの手が置かれた。
慌てて、クロヒメは頭を上げると、全員がクスっと笑い、
「大丈夫ですよ、ほら、早く帰りましょう。クロヒメ様」
「あの時はシャドも悪いと思ったから、お互い様」
そう言われて、クロヒメの中に何か熱いものが込み上げた。瞼の裏が暖かいもの…、頬を伝う水。
いつの間にか、両目から涙が溢れていた。
「あ、ちょ、これは違うよ!?安心して色々ね」
「良いんですよ。嬉しい時は泣くものです。それは人間でも幻獣でも、です」
「ほら、帰ろうよ。今日は疲れたよ」
とは言っても、ここはゲームの中にと言っても、やはり、クロヒメが生きている世界なのだ。
人生がそうも上手く行くとは行かなかった。
「おら、待ちやがれ」
「どこへ行くんだ。そして、そいつに何をした。我々にとって不愉快な者だとしても仲間であることは違わない」
一呼吸、置いて、
「さて、仲間の敵だ、全力で行かせてもらうぞ。行け!」
「「「「「「「Yes,Sir!!!!」」」」」」」
「行くぞ、この数の魔法を受けられるかな?全員、発射!」
その掛け声と共に、魔法が一斉に放たれた。赤、青、緑などの様々な光球がクロヒメ達に殺到した。
だが、クロヒメもその言葉を黙って聞いている訳ではなかった。
「クーとシャド、準備は良い?じゃ、行くよ」
クロヒメとクーとシャドは一斉に手のひらに無属性の魔力の玉を作り、手を合わせた。そして、同時に己の魔力をさらに魔力玉に注ぎ込んだ。
全員がそれぞれの属性を与え終わえ、顔を上げた。
「行くよ……、固有魔法、風と影の閃光!!」
そして、それぞれ3人から放たれた3つの魔力玉は、宙に浮かび、その場に停止した。そして、中から、一線のレーザーが放たれた。
光球と光線、互いにぶつかり合う。お互いに押し出し、打ち消し、力はほぼ互角だった。
「だったら、MP全部使っていいから持ってけ、光輝の虹&無銘魔砲シンプルカノン!」
「がぁう!!」
クロヒメは風と影の閃光を撃っている途中に、光輝の虹とシンプルカノンを放った。
『上位、固有魔法の多発により、新たなアビリティ、多段撃ちを解放します。』
多段撃ち
上位以上のスキルを連発で打つ時に消費MPを減少。
「なん…か、多段撃ちってい…うのが解放…され…た」
く…MPの消費が多すぎて…。このゲーム、リアルだ…。身体の精神力が一気に失われて、少しでも気を抜いたら、すぐに気を失いそうだ…。
己のMP…精神力が失われる恐怖に、たまらず不安になり、クロヒメは自分のMPゲージを確認した。
「あれ?」
何を見たのか、クロヒメは疑問の声を上げた。
その主の様子にクーは、
「どうしたのですか?」
と、心配した。
「ん〜、とね、私のはバグじゃなかったみたい」
クロヒメは頬は掻きながら、答え、自分のステータスは可視化した。
ちょいちょいと、クーを呼んだ。空いた穴は微力ながら、もりりんが埋めた。
「?……あっ!」
クーは口元に手を当てて、叫んだ。
「えっと、MP回復高速化…?なんですか、これ。チートでしょうか?」
「ち、違うよー、多分。天がね、私に手助けしてくれているんだよ」
「何とも羨ましいことですね」
そう言い、額に手を当て、溜め息を吐いた。
現在のクーの内を当てるとすれば、このままクロヒメ様を甘やかして良いのだろうか、と。
「さて、そろそろ終わるよ。正直、私の魔法って別に操作とかしなくていいし、自動で補足してくれるし、楽だよね。あ、光輝の虹は違うよ?」
「クソッ!!お前らは何なんだよォ」
見れば、MPを底まで使い果たし、何となくやつれた様子の男が呟いた。確か…手下にボスとか呼ばれていたな。
ていうか、手下はまだ魔法撃ってんのに、こいつはやわ過ぎるだろ。
「はっ、私が何だって?教えてやろーか?」
「いや、良いです、言わなくて」
「私は魔砲使いを始めました。βの雑魚と呼ばれし、名をクロヒメ!」
嘘だ──っ!
その時、敵味方は関係無く、初めて考えが一致した瞬間であった。
「「「その、冗談やめようか!」」」
そして、3人とも声がハモった。
正直、こんな扱いされるなんて…、泣くよ?
「まぁ、これでスキルを薙払えば、行ける」
そう言い、さらにMPをレーザーのエネルギーに注ぎ込む。最初は一般の水道管ぐらいの大きさしかなかったが、強化されたレーザーはさらにその二回りほどの大きさになり、相手を相手の魔法諸共、払った。
…ついでに、クロヒメを誘拐した男も痛めつけ、精神的にも肉体的にも起き上がれないだろうダメージを与えた。
「終わったね」
本当にね、周りの建物ぶっ壊して、荒野とは何だったのか、と思えるほど魔法の影響で地形が変わった周囲を見渡した。
「えぇ」
「……そうだね」
クーは地形に対して、何となく申し訳なく。
シャドはこめかみを抑えながら、何とか状況を呑み込んだ。
「くろりんも頑張ったね」
「がう?がう、がうが!」
「いや、うん、もりりんだけどさ。体毛も黒くなって、ちょっと森っていうイメージがね」
「がう!がるぅ!」
OK、認めるという、もりり…いや、くろりんの声を聞いた。
「さて、帰ろう。こいつらは殺して、黒の鉄球の前で待機しているククに任せよう」
「でも、ククさん一人で大丈夫ですか?」
「大丈夫、念のため、アギトとセイ…その他の豊穣の掲げのメンバーもいるから」
言い終わり、HPが危険域に達していた相手を全て吹き飛ばした。
吹き飛ばす度に空中で四散し、ポリゴンに変化していくっていう光景は、何だか気持ちが良かった。
あ、不謹慎ですね。だけど、御愁傷様!
◇ ◇ ◇
その後、街エリアⅠに戻り、ククに状況を聞いた。
予定通りに、黒の鉄球前に転送された黒の棺のメンバーを捕らえることが出来たと、聞いた。
さらに運の良いことに、何故か私たちが荒野エリアに行っている途中に偶然、監獄エリアが出来ていて、組織の奴らはそこに入れられた。
テイムしたモンスターにはどんな名前を付けますか?
私は単純な名前にします




