蘇る過去
〜影の中〜
「逃げたものの…、私たちはどこを探せばいいのでしょうか」
現在、絶賛彷徨い中。
「シャドは一回獣化してみる、ご主人さまの匂い覚えている……気がするから」
「──何ですか、その間は」
「てぇい、獣化!」
変な叫び声とともにシャドの身体は光に包まれた。一秒経つ度にその形はぐにゃぐにゃと歪みながら、少しずつ小さくなっていた。
「説明しよう、獣化とはスキルを使い、人の形から獣の形から出来るスキルだぞ☆一部の人間はこのスキルを使えるようだけど、本来は幻獣種専用のスキルだぞ☆覚えておけよなぁー」
「何ですか、そのキャラクターは……、クロヒメ様そっくりですね、そのふざけかたは」
しかし、シャドまで毒されていたとは想定外のクーにとっては、額を抑えて、項垂れることしかできなかった。
「ふんふーん♪おぉ、ご主人さまの匂いはっけーん。ここから、んと、西にある荒野エリアからだね。いく?」
「もちろん」
「がう!」
◇ ◇ ◇
「はっ!?ここは?」
ヒュ〜。
「…まさか、荒野エリア!?だよね。なぜ私はこんなところに…」
顎に指を当て、考えること30秒…、突然、頭を抑えて、唸った。
「あぁーっ、そうか私は…確か──」
〜五時間前〜
「いやぁ、少し拗ねただけなのに、飛び出してきてしまった。どうやって謝ろう」
そういうクロヒメは、自分のホームの前でうろうろしていた。傍から見ると、変質者のように見えるが、これでもこの家の立派な持ち主である。
「うぅ、何だか入りずらいな。………でも、夜にならないうちに帰ってくれば大丈夫だよnっ!むぐ!?」
しまった。背後への注意を怠っていた──っ!?
そうだよ…私の容姿って、何かと良いんだった。
「んー!んー!んー……」
ごめん……みんな、今日は帰れないかも。こんな薄い布なんかで呼吸が苦しくなるなんて…、息が…、
このゲームなんでこんなところにもリアルを追求したんだ!?
クロヒメはそんな思考を脳内によぎらせ…、糸の切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
「さて、これで良い。そいつを荒野に連れて行って、作戦を決行するぞ」
「すいち…ゅ、こ、きゅ……」
「どんな夢を見ているんだ……」
……………そうだった。
「無駄な所がリアルなこのゲームを舐めていたよ、私は」
「そうだよね、初日に実感したんだった。ゴブリンを殺した時、血が溢れていた…、割と現実的に」
「それより、何故、背後の注意を怠った!?私は!現実世界では、人一倍、周囲に殺気を放っていたというのに」
「やはり、ゲームは現実とは違う。今回で痛感したよ」
それより…………。
「──っ、ここはどこだー!!」
あー、あー、あー、と山が無いくせに声が木霊した。
だが、その木霊も虚しく、周囲の風音により、かき消された。
「しかし、こんなにわかりやすく犯罪をする連中は久しぶりだな。こういう連中は確か前にお父さんの仕事に付いていった時にも…あ…」
やばい、私の馬鹿。こんな時に死んだ家族のことを考えてどうする。
「くっ!はぁはぁ……、うぐ!?」
ゲームの中でも一時的に発作が!?全く忠実すぎる。
そうだ、あの時も好奇心を抑えられなくて、誘拐されたんだっけ。名前も顔もよくわからない男に…、いや、腕の感触や指の大きさ、形は覚えている…。
「確か……、いや、まさかあいつが!?」
だけど、あいつは刑務所にいて…、まだ出てくることはない。だけど、あの指の感触は、やっぱりあいつだ…。
「私に恨み、か」
当時の事件について私とあいつ以外、誰も知らない秘密がある。
あいつは上手くいっていれば、本当に計画通りに行っていれば、私と引き換えに莫大な額をもらって逃走することが出来たはずだ。
──そう、私、黒埜卑弥呼という少女がイレギュラーな存在で無ければ。
当時の私は既に、黒埜家に伝わっているとされる、術を覚えていた。それは、多彩舞術と言われる。本来は踊りなどに使われる術だが、私がアレンジを加えると共に、戦うための術と、生まれ変わってしまった。
捕まった時には、前に進むための運動量を全てを身体の回転力に回して、あいつを思い切り、投げ飛ばしてしまったのは鮮明に覚えてます、はい。
「そういえば、みんなはどうしているんだろう。それに、私をこんなところに連れてきた理由は…」
「それなら、俺が教えてやろうか。久しぶりだなぁ、ひみこちゃんよぉ」
「な!?おまえは!」
突然、目の前に来た男を、見たクロヒメは焦ったような声を出した。
この声、この体、指、腕の太さ…、全てが私を誘拐した男に似ていた。
当時は知らなかった名前だが、この男を見て、心の中に封印していた名前を思い出してしまった。
「仙道ォ……」
「あぁ、そうさ」
仙道は近づいて、クロヒメの頭をがしがしと触った。
「いつかはミルク臭いガキだと思ったが、成長したら思ったより、綺麗になってんじゃねぇか。あぁ?」
「触るな。また投げ飛ばすぞ」
「おーお、怖いことを言ってくれるじゃねえか。だが、今は状況が違うんだ。俺の組織は今、お前のホームに向かっている。そこに上玉の幻獣種が二匹、いるらしいじゃねえか」
「は?」
つまり何か?目の前のこいつは私の大切な、たった一つの家族を奪おうと?
その時、頭の中で何かが切れた。
「許さない……」
「あ…?」
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない…絶対にユルサナイよ?」
「ひ、い!?お、まえは、何なんだァ」
「ふん、あの子たちの家族だよ。それにな、あの子たちも人間になんか、捕まるわけがないけどね」
「──その通りです」
その声と共に、蒼色の髪を持つ、少女が影の中から、現れた。
さらにその後ろでは、シャドがとっても嬉しそうな顔をして、意味もその効果も知らないが、自然と鳥肌が立ちそうなスキルを発動した。
「漆黒の宇宙を泳いでみようかー、夢幻堕天」
「あ!?うおおぉぉぉぉぉ──っ!?」
「ひぇ、シャド怖いわ。それって、もしかして…?」
「うん、影狼である私のための幻影スキル」
怖い、そのスキルかなり恐ろしい。絶対にトラウマになりそう。
仙道…お前は敵ではあるけど、同情するよ…。御愁傷様でございます。
「おーけー。で、みんなはどうやってここまで来たの?こいつが起きるまで簡単に教えて」
「それはですね……」
クーが代表して、この場所に至るまでの経緯を説明し始めた。




