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黒の棺

『おい、聞いたか?魔物とやらが現れたようだぞ』


『いやだな、俺達はほぼデスゲームとかしているというのに、不幸だな』


『下手に外に出ることも出来なさそうだ』


道行く人々は一つの噂を呟いていた。


それは先日クロヒメが倒した魔物についてだった。

そしてその噂に合わせて、後日アナウンスにより、全プレイヤーに知らされた。


◇ ◇ ◇

〜数日後〜


ピーンポーンパーンポーンという電子音とともに、いつもの中性的な声が聞こえてきた。


『エリアの調査は捗っていますか?ですが、捗っていたところでこちらには何も影響はありませんが、今日は全プレイヤーの皆様に重要なお知らせがあります』


『一つ目はこれより、職業選択が出来るようになりました。初回の職業選択はシステムウインドウの職業から行えます。次回からは街エリアⅠに設立されました、ゲートより神殿に向かい、行ってください』


『二つ目、新モンスターが追加されました。魔物、神霊、古龍、幻獣種が追加されました。そして、幻獣種は人に懐くものを居て、更に擬人化……つまり、人の様に接することが出来る者もたまにいます。たまにですよ、たまに。更に!幻獣種は1回だけ、テイマーを持っていない人でもテイムすることができます』


『三つ目は、一部プレイヤーに課せられていたバグの解除に成功し、レベルに比例して強くなります。バグなんかで強くなってはいけませんよ。己の力で己を鍛えましょう!』


『以上です』


再びピーンポーンパーンポーンという電子音が鳴り、アナウンスは終了した。


「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」


そして、この歓声よ。全く五月蝿いなぁ、だけど、私も喜ばない訳にはいかない。


「やったぁ!」


職業を選べるようになったのは嬉しい。これでさらに戦略の幅が広がる。


そんな風に浮かれていたからだろうか、クーから発せられた言葉でその気持ちも一瞬で沈んだ。


「ですが、バグも治ったと言っていましたよ?いいのですか?」

「はっ!?」


忘れてた、忘れてた……。


「まぁ、うん。ステータス見れば分かるよ」


そう言って、ウインドウを開いた。


「あぁ、まぁ…なんていうの?トライデントが使えないんですが…。理由?…理由はね、レベルが足りないから、」

「何独り言で喋っているんですか?ここには私達3人と、もりりんしかいないですから、良かったものの……。もしも、ここに大勢の目があれば、ただの痛い子でしたよ」


相変わらず毒舌に加え、鋭いツッコミですね。感服ですぜ、クーさん。


そんなことを考えていると、クーがこっちを見て、「なにか」という心の声がダダ漏れている眼を向けた。


「何でもないよ?うん。クーの考えはごもっともだなって考えていてね」

「それでー、ご主人さまは何か使えなかったって言ってたね。何使えなくなったの?」

「あ〜それはね」


クロヒメは、はは、と笑い、頭を掻き、深刻そうな顔を作った。

そんな、空気を読み取ったのだろうか。クーとシャドは少し黙った。


「レベルが足りなくて、トライデントが使えなくなった」


……………………………………………………………………


そんな冷たい空気が場に流れた。


そして、次の瞬間には深刻な空気など無かったかのように、


「クロヒメ様……。あの、どうでもいいです。少しでも深刻な空気を作ったのが馬鹿でした」

「そーだねー、ご主人さまともりりんの光輝の虹と魔砲シンプルカノンが使えるってことが分かれば…ね」

「がう!」


クロヒメを除く一同は一緒にやれやれと首を振った。


「えー、何でそんな反応なの?私はみんなを守れなくなるかもしれないからこんな表情作ったんだけど。まぁ、私がいなくても大丈夫なら、出てくね」


「じゃね」


クロヒメは最後に手を振り、外に出ていった。


…………………………………………………

再び、部屋の空気は冷たくなった。


◇ ◇ ◇

〜一時間後〜


「大丈夫、まだ一時間だから。クロヒメ様も子どもじゃないし、ね」

「そーだね。まだ、一時間だしね」

「がう」


◇ ◇ ◇

〜そこから、四時間後〜


「まだ、十七時前…。まだまだ遅い時間ではないです」

「さっき、レベルが足りないって言ってたから新エリアに行っているんじゃないかな」

「がう」


◇ ◇ ◇

〜更に二時間後〜


「もう、夜の七時です。そろそろ、帰ってきても良いと思うんですが」

「探しに行く?」

「がう!」


シャドも流石に心配になったのか、クロヒメの探索を勧めた。

だが、世の中はそう上手く回らないようだ。


突然、バァンッと扉がぶち破られる音がした。

そして、その音と共に、たたたたたと、多くの足音がホームに入ってくるのを確認した。


「どこに行こうとしているのかね」


そして、言葉の割にらしくない、若い声がそう言った。

クーはその集団とその言葉に疑問を持った。

シャドは連中に気付かれないようにこっそり逃げるための術を唱えた。


「あの、何のことでしょうか。それより、あなた達は、私達に何か用でも」

「おい、貴様!この組織、黒の棺(ブラック・コフィン)を創った崇高なる御方に対して、なにふざけたことをかしている!」

「いえ、何も?」


「クー、逃げるよ。こんなふざけた連中の話なんて聞いている暇はない」


ご主人さま、──探しに行くんでしょ?と、耳元で囁いた。


「っ」


その言葉で、クーの眼は醒めた。そして、次に何をすべきかをすぐに脳内で構築した。

無言で手を翳し、幻獣種である己の力を人間に示した。


「人間ではない、人間の力、見せてあげます」


クーは無言で天駆を発動した。さらに翼を広げて、一言。


宇宙そらへと広がる夢幻の飛翔」


空間が裂かれた、そんな現象が目の前で起きた。

実際には、裂かれてはいない。スキルを使ったクーにも、家族パーティーと認識されている、シャドともりりんにも。


「はァ!?な、んだ、これは!」


下っ端A…先ほど、組織の名を口走った男は悲鳴のような声を上げる。

それも当然だろう。なんせ、今、目の前の男達は真っ暗な空間で永遠と自由落下をしていると、思わされているからだ。


「ただの幻ですよ。幻影術、夢幻堕天」

「あのー、これ本当はシャドの術なんだけど…やっぱりあれ使ったの?」

「まぁ、シャドが影を作るのに苦労してたからね。大技をと。みんなには内緒だよ」


クーの言葉にバレてたかと独りごちた。


「それと、シャドは何で詠唱が好きなの?私、凄く恥ずかしいんだけど」


クーの指摘にこめかみを抑えた。


「まぁ、影もこの通り作れましたよ。其は、全てを受け入れ包む、漆黒の衣、影衣っと!はい、ようこそ」


全くいつも思うが影に入る時の感覚はどうにも慣れるか気がしない。

全員が入ったのを確認すると、シャドは鼻歌を混じえながら、チャックで服を留めるように、影を元の空間に合わせて、閉じた。


「さ、行こうか」


◇ ◇ ◇


「やっと相手のスキルが解けた!?しかし、何者なんだ、あいつらは」


幹部らしき風貌の男は、思いもよらぬ事態に焦った。

その問いに…


「君はそんなことも分からないのか?」

「ぼ、ボス…」

「あれは、幻獣種だ。しかも、人化できるさらに上の位の、な。あれは組織でも貴重な戦力になるのは一目瞭然だろう?」


「それに、だ、ここはゲームの中。正義も悪も無意味なゲームの中だ」


そう言い、壁を思い切り蹴り、壁に手を付いて、分かるよなぁ?と問う。

流石に組織の一番上の人物にそう言われては、間違っている言葉も、なるほど、そうかと誰もがその言葉に信じた。


そんな中、手のひらを顔に付け、ククッと笑う人物がいた。


こいつらは本当に使い勝手が良い。頭もさほど良くはない。


「さぁ、行くぞ。貴様ら、あの獣どもを捕まえて、俺に差し出せ、──捕まえた暁には、俺が直々に褒美をくれてやる。さぁ、行け!」


「「「「「Yes,Sir!!!!」」」」」

お正月って休む日たよね!?

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