魔砲と新たな戦いへ
「魔砲錬成!魔砲トライデント」
「ファイア!」
クロヒメが叫び、砲を放った。砲から放たれたのは一本のレーザー。
それは、連鎖と二重魔法を合わせないと発動しないはずの光輝の虹だった。
そして、更に驚きのものを一同は見た。発射速度が冗談のように速いのだ。その速さ、1秒に2発分のレーザーを出せるほどに。
その光速の一撃は魔物を貫き、薙ぎ払った。
「…すごい」
「さすがご主人さま、シャドには真似出来なさそう」
「がう、ガうぅ」
「さすがヒメ大胆ですね。……リアルの時とは大違いに」
一同は驚きの声を上げたが、1人、冷静に呟いた。
「ふむ、確かにこのゲームでは、上位のレベルだな。しかし、トッププレイヤー達はこんな魔法など使わず、剣一振りで敵を屠れるぞ」
「分かってるよ、団長さん。私がこのゲームでは、まだまだ若輩者だと。だけど、これを見てまだ…そんなこと言える?」
「全砲門解放」
と、呟いた瞬間、空間がパカッと開いた。その数、30ほど、そして、
「無銘魔砲、シンプルカノン」
その空間から、トライデントとは格が落ちるが、空いた穴の数、魔砲が現れた。
それはどれも無骨で華やかな装飾などない。が、敵を屠るには十分な強さだ。未だ、増え続ける魔物を討つのには丁度良い。
「ファイア!!!」
砲から放たれるは、様々な属性の初期下位魔法。フレイム、ウォーター、ウインドカッター、ストーンバレット、スパーク、レーザー、ダークボール。
色鮮やかな魔法は着弾し、焼き、溺れさし、切り裂き、貫き、感電し、焼き貫き、闇に沈めた。
「これでどう?私のMPはバグったらしくて、MP回復力が早くなったらしいんだ。シンプルカノンと初級魔法は無理なく連続で撃てるよ」
「ちなみにレベルは?」
アギトは聞きたいことを問うた。
「うーん、分かんないな。魔物は一人勝ちしたけど、レベルは5ぐらいじゃないかな」
「な!?」
クロヒメの答えに驚いたのはアギトの息子、セイだった。
「ありえない…、トッププレイヤーだってあんな強さレベル5でなんて倒せるはずがない。トップの剣王ですら、無理だ」
「あれ、君はあれと戦ったことあるの?だけど、こういうことは考えられない?君が弱すぎたっていうこと」
「なっ!?」
先ほどのクロヒメによる弱いという発言で微妙にキレていたセイは何かが頭の中で切れた。
「何だよ、何なんだよ、お前は!俺は弱くない、ギルドでも団長の次に強い!俺が弱いなんてことは絶対にない」
「止めろ、セイ。敵が目の前にいる状態で味方と争ってどうする」
「止めないで、父さん。俺はこいつが許せない…」
言いながら剣を振りかぶる。そして、
「エアスラッシュ!!」
セイは剣を振り下ろし一撃を放った。その一撃は刃に風を纏い更に巨大化していった。威力は下位の上のモンスターを軽く倒せるほどに。
「中々良い一撃だね。ただ悲しいかな、その攻撃はただの力任せだ。威力は高いけど、何の気持ちも篭ってない」
大きく息を吐いて、告げた。
「──そんな一撃で私を倒せると思って?」
クロヒメから吐き出された言葉はあまりに冷たく、その場にいる者を凍らせるには十分な声音だった。
「砲撃止め……、全砲門、標準…私の後方へ、ファイア」
約20門の砲がセイにより放たれた斬撃へと殺到した。
残りの数門はセイの牽制のために待機させた。
放たれた魔法は、セイの斬撃を薙ぎ、貫き、焼き……。
「良し、やめ」
クロヒメがすっきりした顔で砲撃を止めた時には、その斬撃は消え、クロヒメが放った魔法の痕跡も無かった。
「分かったら、邪魔をしないで。死にたいの?」
クロヒメの問いにセイは全力で首を横に振った。
セイは、クロヒメとの圧倒的な力量差を見て、流石にもうクロヒメの邪魔をしないと誓った。
『死にたいの?』。その言葉を聞き、クロヒメに関わらないと誓った。
クロヒメは化物を見るような目で見られたことに、はぁ…、一つ息を吐いた。
「まぁ、仕方がないよね、」
化け物なんて、ゲームの世界には沢山いる。一々気にするわけにもいかないし。
私は…、前を向くことしか出来ない。後ろなんて振り返っている暇なんてない。
「はぁ……」
また、息を吐き、前を見据える。途中で邪魔が入ったせいで魔物はまだ数体残っていた。
「魔砲トライデント!敵を焼き貫け、フレイムアロー!」
トライデントから放たれたのは、炎の矢。それを受けた魔物は、焼き尽くされ、散った。
炎の矢の雨は数十秒続き、魔物を焼いた。
途中、割とリアルなこのゲームは肉や毛を焼いたような複雑な臭いを発した。が、それは無視した。
そして、また数十秒…敵に矢の豪雨を降らし……。
「はぁ、終わった」
魔物はポリゴンと化し、宙に散っていった。あとに残るのは、草木が燃え、焦げたような臭い。
辺りに微妙な風が吹く。
しかし、クロヒメはそれを気にするでもなく…
よっし、と腕を振り上げ、喜びのポーズを演じた。
実にクロヒメらしく、自由だった。
戦闘終わり!えーと、レベルは、と
クロヒメ Lv.6
SP:15
スキル
火魔法 Lv.3 (ファイアーボール) 風魔法 Lv.3 (ウインドカッター、風翔逆波)
水魔法 Lv.3 (ウォーター) 雷魔法 Lv.2 (スパーク、
土魔法 Lv.2 (ストーンバレット) 光魔法 Lv.4 (レーザー、虹の軌跡)
闇魔法 Lv.2 (ダークボール) 調教師 Lv.3 (HPが微UP、ランクアップ可能)
魔力増加 魔法操作 錬成 魔力錬成 細工
アビリティ
連鎖
二重魔法
固有魔法
虹の軌跡+ライトブレス
光輝の虹
固有スキル
魔砲錬成 (トライデント、シンプルカノン)
使役
もりりん/森狼 Lv.8 (ランクアップ可能)
クー/空狐 Lv.5
シャド/影狼 Lv.5
「ふむ、もりりんが、ランクアップ出来るらしいです」
「がう?」
何のことか分からないと行ったようなもりりんの声を聞き、クロヒメは簡単に説明をした。
「うーん、簡単に言うとだな、進化だな。姿が変わって、能力も上昇するんだ。進化する?」
「がう!」
おけーだ。っと、ランクアップ可能なモンスターはもりりんで、ランクアップ先は…
フォレストウルフ→ブラックウルフ
→ブラウンウルフ
「OK、もりりんをブラックウルフに」
「がう」
そして、光が身体を包んだ。光の中でもりりんの身体は、少しずつ形を変え、少し大きくなったような気がする。
しゃーん、という音で光が散り、姿が変わったもりりんを見た。もう、森という名前は合わないほど、黒い狼になった。獣化したシャドより少し、大きいか。
周りからはおぉぉぉぉ、という歓声。クーとシャドは自分もこんなふうにランクアップするのだろうかという期待を胸に抱いた。ククはβ時代にガウをランクアップさせた時を思い出して、少し懐かしい気持ちに浸った。
アギトはモンスターのランクアップを初めて見て、ここまで成長するのか、と驚いた。
しかし、一番驚いていたのはクロヒメだった。
「おー、もりりんいいねー、私好みの黒に成長しやがってこのやろー」
そう言って、わしゃわしゃと毛を撫でた。
「がう!」
もりりんも褒められて、気分が良くなり、一鳴き。
尻尾もぶんぶんと振って、嬉しそうだ。
さて、一段落。これで魔物は全部倒したし、帰れるよね。そうだよね、では、
「帰ろうか」
「「「はい」」」
「がう」
クロヒメのパーティーは一斉に応じた。
「俺達も帰るか、セイ」
「うん。……父さん……俺…もっと、強くなるよ」
「そうだな」
「強くなったら、私に挑戦してもいいんだよ」
「!!」
セイはクロヒメに盗み聞きされていたことに驚いたが、
「いや、遠慮しとく。あんたには勝てそうにない」
「まぁね、私は最強になるからね」
『『『『『自分で言うな』』』』』
それは、全員の思っていることを=して足して割った心の声だ。
「まぁ、そうなりたいね。あはははは」
クロヒメは自分で言って、自分で笑っていた。
それに釣られて、場の一同も笑った。
やっと、みんないい顔になった。私が冗談を言ったお陰かな♪
場の空気は穏やかになり、そろそろ帰ろう…。
その時…。
『森エリア、最終ボスを倒しました。これより、新たなエリアを開放。街エリアⅡ、荒野エリア、湖エリア、浅海エリアが追加されました。新たなモンスター、新ボスを追加しました。街エリアⅡより職業を実装しました』
「まず、帰ろっか」
タイトルがタイトルですが、まだ続きます。




