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魔物の集団と魔砲錬成

「っっ!!」


クロヒメ達は一瞬己の目を疑った。序盤で戦うにはあまりに強敵だった魔物を討伐することに成功したのだから。

お互いに顔を合わせ、同時に、


「やったぁ!!」


パァンッ、とハイタッチしあった。

もしも、何も知らない人がここに来たら何事かと思うほど、音はよく響いていた。…と思う。

そんなことが数十秒間続いた。その音が静まると同時に、ククはクロヒメに向けて一歩踏み出した。


「これで、ガウも解放されたと思います。有り難うございます、ヒメ」

「いやいや、感謝されることではないよ。ほら、私も経験値貰ったし」


そう返すと、ククはそんなことはありませんと言わんばかりに、こちらを見ていた。

その様子を見て、クロヒメは頬を軽く掻いて、


「んー、まぁ…。そうだね、私もβ時代の友達の一人を救えて嬉しいよ。みんなも、手伝ってくれてありがとうね」

「がう!」

「ま、まぁ、シャドの力があれば、みんなを影に入れることぐらい余裕だったけどね」

「はいはい、ご冗談を」

「ですが、シャドのおかげで致命傷を逃れることは出来ました」

「まぁ、そうですね。ですが、結果はクロヒメ様ほぼ一人で敵を倒していましたね。最後の魔法、あれはどうやったのですか?」

「んー、あははは、はは」


もう、笑うしか選択肢が無いクロヒメはただ、ひたすら口を開けて笑った。

みんなを救ってやった英雄(・・)も、その力は何かと問われれば、意外と何も答えられないのがオチだ。

クロヒメは皆の視線に耐え切れず下を向いた、その時。誰かがはぁ、と息を吐いた。


「ですが、ありがとうございます。クロヒメ様があの力を持っていなかったら私達は死んでいました。守っていただきありがとうございます、御主人様(・・・・)


それを聞いた、クロヒメは一瞬、何かが熱くなるのを感じた。そして、何かが頬をつつと滑り落ちる感覚。


「あはは…、あ、れ?……うわぁ、何だろこれっどうしちゃったんだろ、私っ!。こ、これはあれだよ!水魔法のウォーターで少し顔が濡れたんだよ」


咄嗟に誤魔化そうとする、クロヒメだったが、


「シャドもお礼する、ありがとー、ご主人さま」

「私もです。有り難うございます、ヒメ」

「がうがう、がうー」


クーに釣られて、みんなも感謝の気持ちを伝えるものだから、流石のクロヒメも、


「ひっく、えぐ…」


泣き出した。


「ぐす…、みんなずるいよ……、私の方が感謝してるのに、えぐ……。でも、あはは…涙が止まらないけど、何だか不思議だな。…っ……この涙も悲しい涙じゃない、とっても嬉しい気持ちになれるよ。ありがとう、私の友達(・・)達」


クロヒメが嗚咽を漏らしながら、一つ一つ言葉を紡いだ。

クーは「そんなことないです」と少し照れ、シャドは「これからも一緒に行こう、ご主人さま」と、ククは「流石にヒメには涙は似合いません。ほら、笑ってください」、もりりんは「がう、がうがう」と自分の言葉が伝わらないため、力強く鳴いて、クロヒメを励まそうとした。


そんな様子の一同にクロヒメはまた、込み上げてくるものがあり、と。

結果、本調子に戻るのは、10分後のことだった。


◇ ◇ ◇


「ふふ、あれを倒した…か。徐々に、力を現し始めているな。…………さて、時間はかかると思うが次はもっと強い奴を容易するか。例えば、竜とか、な……」


ふふ、木陰で呟き、姿を消した。


それを見ている者が一人。彼、彼女?もまた、先ほど呟いていた者と同類であった。


「あれは、同業者?もしそうだとすれば、クロヒメは今よりもっと忙しくなるだろうね。……が・ん・ば・れ、クロヒメ」


そう言って、ビュオォという風の音を撒き散らし消えた。


◇ ◇ ◇


「帰りましょうか、クロヒメ様」

「ふわぁぁぁ〜、了解。疲れたから帰ろうか」


そのとき、んんぅ、と伸びをしたクロヒメの鼻先を、ヒュンと風を切り裂いて何かが飛んできた。

ざくっと、木に刺さったものを見ると、それは初心者が扱うようなナイフだった。


「なに?私の索敵に引っかからないってことは、かなりのレベルの隠蔽能力だね」


クロヒメは誰もいないはずの空間(・・)へと話しかけた。

何かがおかしい。クロヒメの冷たい声音を聞き、すぐに3人と1匹は構えた。


「ほら、早く出てきたら?こっちからやるよ?」

「わ、分かった」


そんな声が聞こえ、2人の男が現れた。


「え!?」


クーは知っている人物だと分かり、驚きの声を上げた。

それは、ギルド『聖穣の掲げ』の団長、アギトとセイだった。

アギトは自分の存在がバレたことに驚いていたが、セイはそれ以上に驚いていた。

ギルドでも、絶対強者であるそして、父である、アギトの隠蔽を索敵能力無しで見破ったのだから。


「貴方はこの間の…、そうですか、貴方はこの人達のパーティーだったんですか」

「えぇ、すみません。先に魔物倒してしまいました」

「いいですよ。これで、バグは………」


アギトは急に言葉を切り、目を見開き、クロヒメの後ろを見つめた。

うん?と、訝しそうな顔をしながら、後ろを向いたクロヒメもまた、少し驚いた。


──、そこには、禍々しい魔力を纏った、総数50匹超の狼の集団がいた。恐らくは誰かが、送り込んだ。あるいはあの時のガキの魔物達だろう。


だけど、惜しいね。私達を殺すにはまだ力が足りない。


「いくよ、もりりん、光輝の虹レディエンス・レインボー

「ガうぅ!」


再び、クロヒメから魔力が放たれる。そこにもりりんのブレスが絡み、混じり合い一つの光線となり、魔物を薙ぎ払った。

魔物はクロヒメによる圧倒的な威力の光属性攻撃により、一瞬で消滅した。


「何だかなぁ、ただ魔法を『撃つ』では、イメージ力が足りない。もっと大砲から放つイメージで…」


うーん、と、魔物を前にして、クロヒメは思考し始めた。

魔物は、もりりんやクー達が抑えているため、クロヒメも自由に考え事が出来る。


創る。大砲。魔力。放つ…。れんせ…、


「そうか!魔力錬成っ、ハアァァァァ!」


クロヒメは大砲のイメージと威力を想像した。

魔力を練る途中も、クー達は魔物の侵攻を阻止していた。その事には、クロヒメも感謝しきれない程感謝した。

そして、思う。全員で生きて早く、あのホームに戻りたい、と。

そのために…、およそ5分、クロヒメは形になるまで魔力練る。


2分後、クロヒメはすっきりしたような顔を一同に見せた。そして、手を翳し、叫ぶ。


「錬成、速射魔砲トライデント!」


魔物の数には、手数の多さと速さで勝つ!


「数多の時を駆けた、三叉の槍よ。今この時を以て、撃滅の許可を与えん……」


「──ファイア」


腕を振り下ろし、叫んだ。

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