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雑草令嬢は野獣令息の腕のなか〜背徳契約から始まる復讐錬金術〜  作者: gen.


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11. 錬成





 中間口頭試験(ミッド・ターム)が終わればすぐ、最終学年は最後の難関、卒業査定試験(グレート・エグザム)の準備に取り掛かります。

 具体的には学年内で成績順とバランスを考慮したチーム分けが行われ、その顔合わせがあるのです。

 チームは一つにつき原則5名。この中で最も成績優秀な者がチームリーダーに任命されます。このリーダーというのが、ただのまとめ役ではなくチームが取り組む科目と課題まで決定する権限を持つ、というか、負わされるのです。

 よって人望がない人間がリーダーになったりしたらあら大変。チームがぎくしゃくするどころか課題達成まで持っていけないなんてこともございます。その責任もまたリーダーにかかってくるなかなかにヘビーなお役目です。まあ、それでも全員卒業がかかっているので何とかするんですけどね、結局は。

 さて、私ロサ・デ・シルベストレ。今回リーダーになっちゃいました。うふふ超面倒。


 そんなこんなで、昼休みが終わった午後一番の授業時間。各リーダーの待つ教室に続々と学年中から選ばれたメンバーがやってきました。

 特待生(スカラー)同士を同じチームにするわけがないので、イシドロとは当たり前のように引き離されてしまいましたし。そんなイシドロが指揮するチームに選ばれたメンバーたちがお通夜の顔でこの教室に集まってましたけど、まああなたたちはラッキーですよ。フアナがいてくれるので。

 私のチームはというと、交流があるのは勉強会メンバーのコンテスティ君ぐらいで、あとはなんというか、知ってるような知らないような顔ぶればかり。

 あ、でも一人だけクラスメートがいました。以前夏季休暇明けのイシドロへ果敢にアタックして玉砕したあと、私の噂をばらまいてらした伯爵令嬢さんが。本人なにやら青い顔でぷるぷる震えてますが、肉布団もとい取り巻きさんたちがいなくなって寒いのかしら?取って食べたりしませんよ。ちゃんと使われてくれれば。


「それではあらためまして、このチームを任されることになりました。ロサ・デ・シルベストレです。皆さんよろしくね」

「セフェリノ・デ・コンテスティです。よろしく……」

「イ、イサベル・デ・アグアージョですわ。……よろしく、お願いいたします……」

「アレクサンドラ・デ・グリン。よろしくね」

「ニコラス・デ・ハロペスだ。みんな、よろしく頼む」


 ああ、そうそうアグアージョ伯爵の令嬢さんでしたね。思い出しました。グリンさんは一本の三つ編みにした髪といい、快活そうなご令嬢。ハロペス氏は力仕事を任せられそうな、がっしりした体躯が特徴的なご令息。


「では早速ですが、選択科目と課題の発表に移ります」

「!?も、もうですの!?」

「?早い方が心の準備その他ができるかと思いまして……」


 アグアージョさんが悲鳴のような声をあげますが、もったいぶるようなことでもないのでさくさく参りましょう。コンテスティ君はいつも通り。グリンさんたちもちょっと驚いた様子ですが特に意見はなさそうなので次に進みます。


「私たちの選択科目は『錬金術』、課題は特殊指定宝飾品『恋多き女王の指輪』の錬成です」

『!?』


 両手を合わせてにっこり微笑んだ私に対して、グリンさんが口の端を引きつらせながら笑いました。


「……本気(マジ)?」

大本気(おおマジ)ですよ」

「『恋多き女王の指輪』とは、たしか、特級SSクラスの……」


 ハロペス氏が金色の太い眉を寄せながらこちらを伺うように見たので、その通りですと言う代わりに頷いで見せました。


「やるなら天辺(テッペン)狙いませんと。私、評価Sプラス以外に用がないもので」

「……いろいろぶっ飛んでるってのは、新聞の誇張表現じゃなかったみたいだね……」


 失礼な。今のところぶっ飛ばしたのは厩舎(ミューズ)だけですよ。

 初日の顔合わせは、こんなかんじで終わりました。

 翌日からはいよいよ具体的なお話に入ります。この時点で課題選定がどうのというスローペースなチームもありますが、私たちにそんな時間はありません。

 この時期にになると、お昼休みが終わった後の授業時間はすべてこの卒課チーム作業にあてられます。私たちの今回の集合場所は、錬成釜と錬成炉が備えられた作業室。ちょっと埃っぽいですが、まだ実践作業に移ってないチームがほとんどなので、いまはがらんとした穴場です。

 私は集まった面々を見ながら、ぱん、と手を叩きました。


「それでは指輪の錬成素材、を錬成するため、各素材担当の打ち合わせに入りましょうか」


 『恋多き女王の指輪』が難易度特級SSクラスと言われているのは、最終錬成、つまり指輪を作り出すまでの素材もまた複雑な錬成工程を要求するためです。その中でも。


「……ブルーブラッドルビーのあては、あるんですよ、ね……?」

「もちろんです。ブルーブラッドルビーについては私にお任せください。すでに有志の血液提供者も決まってます、といいますか」


 私はこの時のために持ってきた鞄を、作業台の上に置きました。二重の魔術封印を解除して、蓋を開け、取り出しましたのは一つの小箱。


「もう錬成済みです」

『!?』


 チームメンバーにも見えるように、小箱の蓋を開けて作業台の中心に置きました。途端に、日差しを受けた小箱の中身から、群青と紅の光が溢れて覗き込んだメンバーの顔を照らし出します。

 そこには指定通り、二十カラット以上のブルーブラッドルビーが妖しい光を反射させながら煌めていました。

 信じられないものを見た目で、アグアージョさんが箱と私を交互に見ます。


「れ、錬成済みって……か、簡単に仰いましたけれど、このルビーを作るには……」

「採血から三日以内の、()()()()血液七百ミリリットルを要す。何でしたら皆さん、血液提供者の方と面会されますか?きっとご納得いただけると思いますよ」


 あら、心なしか声が弾んでしまいました。コンテスティ君以外ドン引きのお顔が並んでいます。引っ込み思案ではあるけれど、その実割と怖いもの知らずなコンテスティ君が首を傾げます。


「ちなみに……その、有志の方って、お名前は……?」

「テオドロ・デ・バルラガン――――このアカデミーの大学部に在籍されてる、私たちの先輩です」

『!?』

「ああ……なるほどぉ……」


 コンテスティ君がのんびりと納得の声を出しました。ええ、あのイシドロの血縁ですもの、お察しいただけますでしょう?顔面力については。


「では次、魔術回路を焼き付けたマジックゴールドインゴットについてですが……」

「魔術回路の設計がいるやつだね?確かそれを基盤に……」

「こちらがその回路の設計図と、焼き付け先のマジックゴールドインゴットです」

「…………」


 唖然としたグリンさんの前に、私は回路の設計図の巻紙を広げて、インゴットを重石代わりに置きました。指輪一つ作る分のインゴットなので大した量でもありませんし、一々これを採取しに竜種を探しに言ったりするのも面倒なので、買い上げました。

 回路の設計図は課題を決めた時点で作り始めていたものです。間に合ってなによりです。


「あと、精霊石英の純度が百パーセントの珪砂ですが……」

「もう何が出てきても驚かんな……」

「星の砂と八対二で配合済みの珪砂がこちらです」

「………………」


 どさり、という音を出した小袋を、ハロペス氏の前に置いたところで、私は鞄の蓋を閉じました。例によって精霊石英は買い上げ物です。時は金なりとはよくいったもので、採取などという運任せに頼ってはいられないのです。寒いですし。いま。

 皆さんが "チーム制作とは……?" という目で私を見てますが、もちろん皆さんの仕事はきちんと残してあります。


「さて、素材はこの通り大まかにそろっていますが、これからアグアージョさんにはルビーの鑑定を、グリンさんとコンテスティ君には魔術回路の設計が間違っていないかの確認を、ハロペス氏には珪砂の純度の計測をお願いしたいと思います」

「あーつまり……最終工程前の確認作業ってわけ……?」

「まあ、そうとも言えますね」


 グリンさんの呆れ半分の声に頷きつつ、私は邪魔になった鞄を作業台から下ろしました。


「さて、皆さんぼさっとしている時間はありませんよ。我々の目標は冬季休暇前にこのすべての確認と錬成工程を終えて、休暇中の居残りなどせず完璧な完成品と実験レポートを提出することです!」

「はーい……」

「は、はい」

「やるしかないかあ……」

「うむ……」


 はいわかったら作業作業!



「――――え、ええと……ルビーの鑑定、終わりましたわ。色、純度、カラット、カッティング、どれも基準値以上です」

「こっちも回路の確認終わったよ。鉄くず相手に試しで魔力を走らせて見たけど、きちんと台座の形になった」

「魔力衝突、論理矛盾、いずれも確認されませんでした……」

「こちらも問題ない。熱を加えた状態で、流し込む魔力を調整することで色が変わる、という点もクリアしてる」

「はい、皆さんありがとうございます」


 レポート用ノートのチェック欄にチェックを入れていきながら、また作業台へ集まってきた皆さんの報告を受け、私、ほくほく顔になりました。

 丁寧に作ってきた素材が設計図通りに納まるべきところに納まってくれる、錬金術師としてこんなにうれしいことはありません。

 しかし油断は禁物。鞄を開いて、チェックの終わった素材たちを仕舞っていきます。


「では、次回はいよいよ錬成ですね」

「なんか階段を百段飛ばしで上っちゃった気がしないでもないけど……」

「結果良ければ全てよし、です」

「あんたが言うと説得力が違うね」


 肩を竦めたグリンさんが苦笑しながらこちらを見るものですから、私もついにっこりと笑顔を返してしまいました。

 今日のタスクはこれでおしまいなので、明日の錬成のため、炉と釜の使用許可及び予約を申請したら解散です。

 私は寄宿舎へ直帰予定でしたが、大事な素材を持っているということで、メンバーたちが特待生寄宿舎(スカラーズハウス)まで送ってくれました。途中であの寮長さんを含んだ一団とすれ違ったんですが、なんと一番後ろを歩いていたのがカミロ。まさかの配属にちょっと吹き出しそうになったのは内緒です。あの寮長さんにはお気の毒様とだけ思っておきましょう。思うだけなら誰の損にもならないので。


「――――課題の進み具合はどうだ?」

「あら、もう他チームを偵察ですか?余裕ですねイシドロ」


 宵の口、食堂での夕食も終えて談話室でくつろいでいると、そんな質問が降って来ました。

 イシドロは私の隣で図書館から借りてきたのだろう召喚魔術についての書籍をめくっていましたが、飽きが来たのか、隣で錬成道具のカタログをめくってる私にちょっかいをかけることにしたようです。


「目下のライバル偵察は重要だからな」

「科目選択と課題決定は終わってる、とだけ申し上げておきましょう」

「ほう?」


 なんて、言ってはいますがテオドロの採血時に泣き喚く彼を拘束してくれたのはほかならぬイシドロですし、私が買い上げた工房でブルーブラッドルビーを錬成したときの助手も彼なので、ある程度の進み具合は把握されているんでしょう。


「そういうイシドロこそ、やっぱり選択科目は保健学ですか?」

「どうだか。呪文学かもしれんだろう」


 どちらもあなたの得意分野ですからね。私はイシドロの手元を覗き込んで、開かれたページに記された召喚可能モンスターを見ると思わず片眉を持ち上げてしまいました。


「スプリガン?」


 召喚難易度特級SSSクラスのモンスターです。古代の石柱に高純度の精霊鉱石を捧げて召喚する巨大な石属性のモンスター。召喚する条件が厳しいだけあって、その体は頑強無比。一撃で並のモンスターは塵になる、そんな味方になればこの上なく頼もしく――――敵に回れば恐ろしく厄介な存在。


「まさか……これを討伐する気ですか?」


 保健学で試されるのは、あくまで体力強化の補助魔法の精度と、それをかけられた側の攻撃連携度合のはず。よって相手がゴブリンの群れだろうとワーウルフだろうと問題ない、のですが。こんな召喚物を出されて討伐されたら、加点はどれほどのものになるか。

 思わずイシドロの顔をまじまじ見てしまった私に対して、イシドロは機嫌よくその本を閉じてしまいました。


「お前のその表情が見れただけで、選んだ甲斐があるというものだな」

「……ライバルへ塩を送ったことを後悔しないことですね」


 私の唸るような声に、イシドロはクツクツと喉を鳴らすのでした。


 

「非常事態です」


 翌日。私の宣言に、アカデミーの工房に集まったチームメンバーたちの間へ緊張が走りました。


「特級SSSクラスの召喚モンスターを討伐しようとする小癪なチームが現れました」

「ウソでしょ!?」

「しょ、召喚段階だけで呪文学だったら評価S判定じゃありませんの……!」

「あー……」


 慌てるグリンさんとアグアージョさんに対し、コンテスティ君はなんとなくお察ししたようですが、ええ、その通りです。愛らしくも小憎らしい私の婚約者様ですとも。


「こちらは特級SSクラス……トップは確実かと思っていたが……」


 ハロペス氏に一つ頷いて、私は素材の入った鞄を作業台に載せつつ、拳を握ります。


「こうなったら私たちのチームがトップを取る道は一つ。完成させた『恋多き女王の指輪』の()()()()()()を上乗せします」

「体験レポートって、つまり……」

「誰かに指輪を装着させて、その効果のほどを確かめる、ということか?」

「ええ、その通りです」

「となると……アカデミー側に、危険度特級Sクラスのアイテム試用申請を出して……被験者も探して……すること、倍増ですね……」

「た、たしかにこの段階でもう完成まで漕ぎつけてるチームは、いないでしょうけど……間に合いはするでしょうけど……!」


 私はジロリと全員を見回して、鞄の上に拳だった手のひらを叩きつけました。


「これは決定事項です」

「わーブラック……」


 コンテスティ君、シャラップ。


「とにかく本日の作業に取り掛かりましょう。まずは回路のインゴットへの焼き付け。しかる後に錬成炉で魔力を注入しながらインゴットを台座へと成形させつつ、ブルーブラッドルビーや他の貴石と融合させます。それが終わって指輪が冷えたら、今度は融かした珪砂で魔力注入のエナメル仕上げです」

「配分は?」

「回路焼け付けはコンテスティ君、成形と融合はグリンさんとハロペス氏、最後のエナメル仕上げ前の磨きと、珪砂のペースト作り、ペーストを乾燥させる工程はアグアージョさん。残りの魔力を注入しながらの焼き付け、絵付けは私が行います」

「どれも責任重大だな」

「チーム制作とはそういうものです」


 私が笑って見せると、ハロペス氏もまたつられたように不敵な笑みを返してきました。


「では、作業開始です」


 

 ――――結論からいうと、錬成は大成功でした。

 コンテスティ君が回路焼き付けのための魔法陣を描いているときに、ようやく課題が決まったらしい別チームが工房に入ってきてぎょっとされたり、すでに錬成炉を使い始めてるのを四度見されたりといったことはありましたが。正直、私たちは自分たちの作業が忙しくてそれどころではありませんでした。

 特に私が担当した、女王の顔を焼き付ける回数は実に二十回。取り出すその度に私は周囲の空気の塵を炎魔法で焼き尽くしつつ、新たなエナメルを塗り重ねて、炉の中へと指輪を戻します。取り出す際のわずかな温度変化でエナメルが割れたり、空気中の塵がエナメルに交じって焼き付いたりしたら一巻の終わり。

 チーム皆に見守られながら、最後の透明なエナメルを塗り重ねた指輪を、炉から出した瞬間の歓声を私は忘れることができないでしょう。

 アグアージョさんが最後の磨き作業をしてくれて、横顔だけの女王がぱちりとその目を開いた時の感動といったら!


「アグアージョさんの磨き技術はやはり一級ですね。あなたに任せて、本当によかった」

「っ……!!」


 ベルベットの上に置かれた指輪を前に、心底からの賞賛を送った心算だったのですが、何故かアグアージョさんは涙ぐんでしゃくりあげてしまいました。

 グリンさんがぽんぽんと背中を叩いてあげると、そのまま彼女にしがみついて泣き出してしまったので、私何か失言したでしょうか、とコンテスティ君に横目で聞いてみたら、なんだか生暖かい目で見られてしまいました。なぜ。


 そんな些細な?トラブルもありつつ、きょろきょろと周囲を見ている女王様には一旦ベルベットの毛布に包まっていただき、箱の中へ。

 明日は危険アイテムの試用許可申請を出して、被験者探しですね。まだまだやることは山積みです。



「――――わたくし、被験者に立候補しますわ」


 なんてことを思っていたら、思わぬところからブーストがかかりました。

 やけに気合の入った表情で本日の集合場所である教室に集まったアグアージョさんが、誰も予想していなかっただろう一言を言い放ったのです。

 危険アイテムの使用許可申請書を書いていた私も、それを見ていたグリンさんたちも、思わず顔を上げてアグアージョさんへ注目します。


「やらせてくださいまし。わたくし……わたくしが、このチームで一番成績が低いだろうことは、存じています」


 チーム全員の視線を浴びて肩を揺らしたアグアージョさんでしたが、決意を新たにするように胸元に置いた手をぎゅっと握って、私の目を真っ向から見つめ返しました。


「でも、シルベストレ嬢。あなたはわたくしを "お荷物" 扱いはなさいませんでした。我がアグアージョ伯爵家が宝石に所縁のある家柄と、ご存じだったかはわかりませんが……わたくしが全力を出せるお仕事を割り振ってくださいました」


 真っすぐな金髪を揺らしながら、アグアージョさんが彼女なりに、懸命に言葉を紡いでいるのが伝わってきます。


「ですから、最後のこの重要なお役目もチーム外の誰かに任せるのではなく……わたくしにお任せいただきたいのです」

「危険ですよ」

「承知の上です」

「洗脳効果のせいで、誤解を招くかもしれない」

「ええ」


 ふむ。私は書き終えた使用許可申請書からペンを離しつつ、周囲のチームメンバーへ視線をやりました。グリンさんやハロペス氏は深く、コンテスティ君は浅く頷いています。

 反対意見はなし、と。


「では、私も反対する理由はありませんね」

「!有り難うございます……!」


 ともあれ、この使用許可申請書が通らないとまずお話にならないのですが、そんな野暮は黙っておきましょう。

 嬉しそうに頬を染めたアグアージョさんは、正直指輪を身に着けてる間は全力でメンバーによるガードが必要だろうな、と思う程度には可愛らしかったので。


「――――通りました」

「早っ」

「さすが特待生(スカラー)だな」


 まさか即日で判子がもらえるとは私も思ってなかったので、ちょっと驚いてますが。

 私以上に驚いてるだろうグリンさんやハロペス氏たちにぺらり、と赤い "許可" の判が捺されている書類を見せつつ、緊張した面持ちのアグアージョさんへ振り返ります。


「さて、ここからが本番ですよ」

「……ええ」

「では、コンテスティ君は装着中のアイテムの魔力変動を観測。グリンさんとハロペス氏は血迷った連中が乱入してこないか注意しつつ、各自レポートを取ってください。私もガードに入りつつ、行動レポートを取る側に回ります」

『了解』

「ボールルームに移動しましょう。女王の指示があったとき、一番対処しやすい場所でしょうから」


 全員の頷きを確認し、鞄を手にした私を先頭にチームメンバーはぞろぞろと移動を始めました。アカデミーの申請所から出ると、同じく卒課のチームだと思われる面々がそこら中できゃっきゃとお喋りをしながら図書館に行ってみようか、誰それのチームを見学してみようかなどと盛り上がっています。

 そんな彼らを尻目に、我々は早くも最終段階の第一歩を踏み出したのでした。

 ええ、悠長に構えてらっしゃるとよろしい。トップは私たちがいただきます。





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