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第27話 各々のテスト結果

〈第一学年 夏季長期休暇明け試験 成績優秀者一覧〉

 1位 片鳥 観己  496点

 2位 小枝 玄音  491点

 3位 福瀬 一樹  485点

 4位 獅子原 舞  483点

 5位 宇理須 兼二 482点

 6位 町嶋 純   479点

     ・

     ・

     ・



 「片鳥くんすごーい! また1位だったんでしょ!?」


「うん、ありがとう」


 「やっぱり片鳥くんにとっては簡単だったの?」


「比較的そうだったかな。1学期の考査と似た形式の問題も多かったから、対策はしやすかったよ」


 「なあなあ片鳥、今度勉強教えてくれない?」


「いいよ。時間がある日を教えてもらってもいい?」



ーーーーーーーーーー



俺が廊下の人混みを掻き分けてなんとか教室に避難すると、席で荷物の整理をしている純が話しかけてきた。


「おはよう、観己。廊下に一覧表が貼り出されてたね」


俺は一旦荷物を自分の席に置き、純の元へ駆け寄る。


「おはよう。

 いやぁ、あそこの人集りは大変なことになってるよ。満員電車かっていうくらい。5分も足止め食らったし」


「1年生はみんな一覧表の前に集まってるもんね……。

 そういや俺も観己の結果見たよ。また1位だなんて圧巻だなぁ」


「ありがと。ていうか純こそ、1学期末考査の時より9も順位を上げてたでしょ。今上先生も、『町嶋は学年1のダークホースだ』って褒めてたよ」


「それはどうも。……って、せっかくなら今上先生本人の口から直接伝えて欲しかったんだけど……」


「あ、それはすまん」


俺と純で笑っていると、既に教室に入っていた映真もこちらへやってきた。


「おはよ、観己。やっとあの集団から解放されたんだね」


「流石にタイミング見計らって抜け出してきた。全員と話すのは時間的に厳しいし……」


「ま、観己が話題を掻っ攫ってくれるお陰で、私の転校生ブームが落ち着いて助かってるよ」


新学期スタートから1週間。

映真は、俺についての話題をまるで他人事みたいに話せるほどに『映真の役』に慣れてきていた。


映真が現れたばかりの頃はどうしようか大丈夫だろうかと心配だったが、どうやら新生活の第一関門は無事 に突破できたみたいだ。

俺自身も、映真を極度に気遣う必要が無くなり、夏休み以前のいつもの生活に戻りつつあった。


「……そういえば宝生さんって、夏休みテストは受けたの?」


「うん。転入試験として、夏休み中に受けさせてもらったよ。点数は教えてもらってないけどね」


純の問いに対して映真はそう返して微笑むが……その言葉は嘘である。

実際は、映真の得点は立見校長から知らされていた。


496点。


現在 張り出されている俺の得点と全く同じ。


俺が復習に費やせる時間は2週間ほど映真より多かったはずだが、その上で同じ点だったというのは、俺としては少々悔しい所でもある。


それもあってか、映真が俺に向ける笑みがそこはかとなく挑発的な気が……。


きっと映真を睨み返して俺が席に戻ろうとしたその時、教室の外からツヤのある女子の声が聞こえてきた。


「片鳥くん。少しよろしいでしょうか」



ーーーーーーーーーー



ひとけの無い屋上行き階段まで俺を連れ出した黒髪の淑女——小枝は、姿勢正しく俺の正面に立っていた。


「小枝に呼び出されるなんて、1学期の中間考査の時を思い出すな……。今回も2位おめでとう。490点台を維持できるなんて、相当な努力をしてるんだね」


俺が小さく微笑むと、彼女は表情一つ変えず呟く。


「……それは、片鳥くんに勝てなかったワタシに対しての皮肉ですか?揶揄ですか?」


「あ、いや、ただの純粋な称賛のつもりだったんだけど……」


気を悪くしたのならごめん、と、俺の笑顔が苦笑に変わる。


「いえ、謝る必要はありません。むしろ、何故ワタシを称えるのか分かりませんね。

 いとこ との同棲で忙しかったであろう今回の貴方にも、ワタシは全く歯が立たなかったんですよ?」


「そう、それ。小枝のそういう真面目な向上心に感銘を受けてるんだよ、俺は。

 あまり自分を卑下するなよ?」


「卑下ではなく、自分への戒めのつもりだったのですが……。

 片鳥くんこそ、学年1位とは思えない謙虚ぶりですね」


「まあね。別に、俺は己を誇示したいわけじゃないから」


「……そうですか」


小枝が俺と積極的に関わるようになったのは、俺が前学期の中間考査で小枝を下して学年1位を取ってからのことだった。

以来、『ライバル』……という言葉で表すのは少し安っぽい気もするが、俺たちは妙な関係性を築いている。

小枝の頭脳明晰で負けず嫌いな所は、どこか希美と通ずるものがあるんだよな。


……と思いつつ、段々と話が逸れていたので俺は小枝の目的を確認する。


「……んで、どうして俺を呼び出したの? もしかして、週末の山梨旅行の感想会?」


「なるほど、それも良いですね。お聞かせしましょうか?」


「あーやっぱりストップ。小枝の話ならもっと時間のある時に聞きたい」


とりあえず本題を頼む、と俺が手を合わせると、小枝は少し目線を逸らして口を開いた。


「では、片鳥くんに1つ頼み事がありまして」


「頼み事?」


「ええ。実は先ほど、カナから『今回のテストについて、今日の昼休みにアドバイスをもらいたい』との相談を受けたんです。

 ですが、ワタシは人に知恵の貸すのが苦手なものでして……片鳥くんにも協力して頂きたいのです」


そう言って、小枝は綺麗に一礼する。


「へぇ……あのカナが自分から勉強の話をするなんて珍しいな……。

 分かった。そういうことなら俺も勿論 協力……あ、待てよ。俺、昼休みは備品倉庫の整理の手伝い頼まれてるんだったっけ」


小枝の頼みを受け入れようとした所で、俺は今朝しれっと届いていた仲の良い先輩からの依頼メールを思い出した。


「ごめん、俺行けないわ。代わりにアイツを派遣するよ」


「……『アイツ』、ですか?」



ーーーーーーーーーー



昼休み。貸し切った自習室の席の1つに、カナは座っていた。


「小枝だ!やっほー!

 ……あれっ、どうして映真ちゃんも?」


カナが立ち上がり手を振る先には、今まさに部屋に着いた小枝と、もう1人、映真の姿があった。


そんな映真の面持ちは、決して晴れやかなものではないが。


(なんか俺、段々と観己のパシリみたいになってない? いや別に、不満ってほどではないんだけどさ……。

 転校生設定って割と使い勝手が良いというか、都合が良い存在というか……)


「俺の代わりに、小枝と一緒にカナの様子を見て来てくれ」という観己の頼みを頭に過らせながら、映真は室内に足を踏み入れる。


「あれだけ『テストの話はしない』って言ってたカナが小枝に相談してる、って聞いたから、私 気になって来てみた」


映真のその言葉で、カナはギクリとして顔を伏せた。

恐らく、週末のサ◯ゼリヤでの会話を思い返したのだろう。


「ほんとはね、テストの話はしないつもりだったんだけど……。

 もうウチの今回のテストがあまりにもヤバくって!

 悩んだ挙句、1番ダメージを受けなさそうな小枝に相談することにして……!」


「てことはもしかして、私には来てほしくなかった?」


「あーいや!そこまでは言うつもりは無いんだけど……。

 このままだとウチの情けない所を映真ちゃんに見せることに……!」


頭を抱えて蹲るカナ。

机を挟んだ彼女の向かい側の席に座った小枝は、隣にいる映真の耳元で囁く。

「あの……これって、ワタシが片鳥くんを誘ったのが原因ですよね……?

 すみません、宝生さんも巻き込んでしまって」


「いいよ。正直、この流れは少し想定していたから」


「そうなんですか……?」


「まあね」


『カナの勉強の相談』という時点で、彼女のテスト結果が芳しくなかったのだろう、と映真は察しがついていた。


ま、人には得意不得意があるわけで、不甲斐ない一面を見せたくないという感情は誰でも持っている。

だから流石にカナをいじめるつもりは無いし、むしろ手を差し伸べてあげるべきだろう。


「大丈夫だよ、カナ。私も小枝と一緒に相談に乗るから。優しく教えてあげる」


「え、映真ちゃん……ありがとう!」


映真の笑顔を見て、さっきまで気まずそうだったカナの顔は明るくなった。


さて、じゃあまずはあれを聞かないとな。

「とりあえず、カナのテストは何点だったの?」


「えっとね……195点!」


(…………ん? ひゃくきゅうじゅうご? 5教科で?

 ……てことは1教科平均39点?! えっ、低っ! そうなの?!

 まさかここまでとは想定してなかった……!

 本当は教科ごとのアドバイスとか予定してたんだけど、そういう問題じゃないよなこれ)


小枝も思わず「なるほど、低いですね」と呟き、カナは顔を赤らめてしまう。


「……カナ。前言撤回させて。多分 根本的な勉強方法に問題があるから、私が厳しく教えてあげる」


映真は転校生という立場だから遠慮する、とかはもうこの際 関係ない。カナを救出するには、少々 鞭を入れなければ。


何かを諦めたような表情をした映真を見て、カナは顔をこわばらせた。

「えっ、映真ちゃん……? なんか観己っちみたいな顔してない……?」


「いいからとりあえず、テスト前の勉強方法を教えてよ」


「あっ、えっとね……毎日2時間、ワーク解いたり教科書読んだり、マイノートをまとめたり……」


「マイノート?」

何かとても嫌な予感がして、映真は聞き返す。


「うん。自分なりに試験範囲を整理したノート。今も一応持ってきてるよ」


そう言ってカナは、持参していた小さな手提げ袋の中からピンクのシンプルなノートを取り出して開いた。


「じゃん! どう?良さげでしょ?」


それを一目見て、小枝は思わず溜め息を吐く。

「なるほど……これはよろしくないですね」


「えっ、そうなの?! ウチの努力の結晶が?!」


目を丸くするカナを横目に、映真もそのノートを見てみる。


「……カナ。まずね、字が汚いかな。行頭や行間も統一性がなくて読みづらい。

 それに、教科書丸写しで自分の言葉が少ないから、内容が頭に入りづらいんじゃない?」


「そ、それは……」


「あと問題はこれ。色ペンとマーカー使い過ぎ。何色あるの?

 どこが重要なのかさっぱりだし、色分けの作業に時間取られるだけだよ?」


「えっ、そんなぁ……。普通これくらい使わない?」


「使わないよ」「ワタシもせいぜい3色くらいですね」


2人の言葉に衝撃を受けたのか、カナは急いで自分の筆箱を取り出して中身を見せる。


「ほら、10色! 可愛くてテンション上がるんだよ?」


「……勉強道具に可愛さって要るのかな?」


ハートのストラップが2つも付いた猫型の筆箱を怪訝そうに映真が眺めると、カナは額に手を当てた。


「あちゃー、これはもっと布教が必要ですな」


「むしろ、私の考えを布教してあげる。さ、アドバイスの続きするよ」


「ひいぃっ……」


それから昼休みが終わるギリギリまで、映真と小枝による助言がカナの耳に襲いかかるのだった。

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