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第23話 ドキドキのプリクラ

【シーン2 ~ドキドキのプリクラ~】


アイスを満喫した俺たちが向かったのは、1つ目の予定であるゲームセンター。


ちなみに、先ほどの万華の『イチャイチャ』発言は、なんとか取り消してもらえた。

もうそういう話は無しにしよう、って以前に伝えたはずだったのに、あの女子の勘違い恋愛脳ときたら全く……。


「おー、相変わらず賑わってますなぁ~」

「ここのゲーセン大きいよね〜」


アミューズメント施設の常連であるカナや万華は、辺りを見渡しながらウキウキで歩みを進めていた。


「ゲーセンねぇ……俺が来るのは久しぶりだな」


俺が高校に入る前は、定期的に姉妹と太鼓の音ゲーをしに来ていた。『むずかしい』に挑戦して見事に爆死する双葉の姿を何度見たことか。


だが正直言うと、人が多くて騒がしくてクーラーがガンガンに効いているゲーセンという場所は、俺はあまり得意ではない。


純や柳井とは一度も来たことがないこの場所で、女子たちと何をするのか……

という疑問の答えは、まあ大体予想がついているけど。


カナは足を止め、ある物を指差す。


それは、自販機を2台並べたくらいの大きさの白い箱。

外側には、加工もりもりの女子の顔写真がドアップで印刷されている。


「プリクラ撮ろ!」


そう。

いまだ若者の中で根強い人気を誇るプリントシール機、『プリクラ』だ。


「もちろん、4人全員で撮るからね!」


「……俺も入らなきゃ駄目なの? なんかめっちゃ、『男子禁制』みたいな雰囲気あるけど……」


「だいじょーぶだよ! 男子だけでもOKな所もあるんだし、観己っちは気にする必要ないって!」


「お、おう……」


俺の返事の端切れが悪いのは、『同級生女子と一緒に初めてのプリクラ』という状況が、なんだか居心地が悪かったからだ。


一度でもいいから、姉妹と一緒に撮っておくべきだったな……。


萎縮する俺の肩を、映真はポンポンと叩く。

「ほらほら。せっかくの機会なんだし、観己も楽しもうよ!」


一方で映真はというと、この通り、意外と乗り気らしい。

化粧が映真に与えた自己肯定感上昇魔法のせいだろうな。


ま、プリクラの利用方法だけさっさと実践して覚えて、こんな陽キャの巣窟からはすぐに撤退してしまおう……。


俺は、ブース外にあるパネルの前に立つ。

「えっと……まずは支払いね。1回500円だから、1人125円か」


「えぇ、そんなに小銭持ってないよ。今日は、ウチが500円出すから」


「いや、でもそれは……」


俺は人に奢らせるのは好きではないのに、カナには「気持ちだけもらっとくよ」とだけ言われて、金を払われてしまった。


映真は、俺を軽く睨んでいる。「1番 金を持ってるくせに、なんで女子に奢らせてんだ」とでも言いたそうな顔だ。

「なら映真が出せよ」と、俺は頭の中で返事をする。


一方のカナは、ご機嫌そうにパネルを操作していた。

「人数は4人で〜 とりあえずシールはスタンダードにして〜 アプリ会員証をかざして~……。

 観己っちも映真ちゃんも、プリクラ撮るのは初めてなんだよね?」


「「うん」」


「……んじゃ、中に入ろっか!」


何かを言いたそうなカナだったが、結局そのまま飛び込むようにブースへ突入。万華もそれに続く。

俺たちはその後を追い、中からカーテンをピシャリと閉めた。


ブースの中は、思ったよりも広かった。

個人的には、証明写真の撮影機よりもちょっと大きいくらいだと勝手に思い込んでいたのだが……実際は、4人が余裕を持って入れるし、足元に荷物も置けるしで、かなりの広大空間である。


「じゃ、ウチと万華は前で、観己っちと映真ちゃんは身長高いから後ろに入ってね〜。互いの距離は詰めてよ〜」


流石は経験者といったところか。カナは、テキパキと指示を出す。


言われるがままに、俺は映真の右隣に立った。

彼女と肩が接触し、俺は、映真の表情を横目でチラッと見る。


笑顔だった。


きっと、『今から自分の顔がどんな感じに加工されるんだろう』といった感じでワクワクしているんだろう。


映真に比べて、自分の顔に自信があるわけじゃない俺にとっては億劫が勝つけどな。


「みんな!目の前のあの画面じゃなくて、その上にあるカメラの方を見るんだよ?いい?可愛く写るように笑顔でね?ポーズは無しで撮るからね?はーい撮るよー!」


万華はちょっとうるさい。七五三のカメラマンかよ。



3、2、1……パシャ。



カウントダウンが終わり、1枚目が撮り終わる。

大抵のプリクラは、全部で10枚近くも撮るらしいけど……


『ピース!』


油断していたら、画面にいきなりそんな表示が出てきて面食らった。


あれっ、さっき万華が『ポーズは無し』って言ってなかったっけ?


「ほらっ、ピースするよ!」


カナに急かされ、俺と映真は慌てて指を突き出す。


うわ、なんだかだっさいピースになった気が。


とりあえず、シャッターには間に合ったから良かったけど……


『ヤッホー!』


え、まだ続くんかい。や……やっほお?

手のひらを広げるだけでいいのか?


『ガオー!』


ん?百獣の王?……なんで?


『虫歯!』


いや虫歯て。なぜそのネーミングになった。

頬に手を当てるならまだ『美味』とかの方が良いと思うが。


『2人でハート!』


次から次へと、新しいポーズを要求される。忙しいぞこれは。


俺と映真でなんとかハートを作り終えると、ようやく撮影が終了した。

……て俺、なんで映真なんかとハート作ってんだろ。反射的についやってしまったけど、よくよく考えたら謎状況だよな……。


「ふぅ。ちょっと……2人とも。ポーズやるんだったら最初から言ってよ。それならもっと準備できたのに」

流石の映真も、女子陣にクレームを入れた。


女子2人は笑いながらブースの外に出て、パネルを確認する。

「ごめんね! 実はこのプリ機は、ランダムにポーズを要求してくるやつなんだ。

 プリクラ初挑戦の2人に向けての、ちょっとしたサプライズのつもりだったんだけど……ってうお!片鳥くんと宝生さんでハート作ってんじゃん!」

「観己っち意外とノリいいねぇ!」


その画面には、先ほど撮った写真のサンプルが表示されていた。そう、俺と映真で作ったハートの写真もだ。

万華とカナは、それを見て妙に興奮している。

やっぱコイツら、俺と映真との件でまだ何か妄想してるんじゃ……。


ちなみにここからは、落書きタイムらしい。

もちろん俺にはセンスとか分からないから、こういうのは女子2人に任せるとして……


「お!私、結構 可愛く加工されてない? 特に目がいいね、目が。最新技術は優秀だね」


自分の写真を見てそうニヤニヤしている映真と、写真に写っている でっかいおめめの俺が、妙に気持ち悪くて仕方なかった。

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