番外編:勇者の話2
>>Side:勇者 愛原桜
「は!てやぁ!!」
私はフィロン神聖国の大神殿にて日課の訓練に精を出していた。
「まだ、あまいです!!」
そう言いながら剣の相手をしてくれているのは神殿騎士のマルガ=オーエさんだ。
オーエさんは女性ながら若くして神殿騎士の騎士団長の任に就いている。
当然、その剣の実力も折り紙付きだ。
彼女は危なげなく私の剣を受けて払う。
それにめげずに何度も何度も私は剣を振るい続けた。
私がこの世界に来てから1年以上がたった。
この訓練は魔王討伐を決意したころから続けている。
最初の内は木剣とは言え相手に怪我を与える恐れのある訓練に及び腰だったが今ではそんな考えはなかった。
これをしなければ生きていけないという気持ちが強いからだ。
私だけではない。
私の仲間やフィロンの人々だって守れない。
だからこそ私は強さを求めて訓練に励んでいた。
「これはどうです!!」
私は上段から力いっぱい木剣を振り下ろした。
オーエさんはそれを手に持った木剣で受け、手首を柔らかくして横へと逸らす。
その顔は涼し気な表情を浮かべていた。
「は!!」
私は再び腕に力を入れる。
次は地面と水平に剣を振るった。
オーエさんは僅かに後ろに飛んでそれを回避する。
そして、すぐさま前に踏み出すと私目掛けて木剣を振り下ろした。
「くっ!!」
私はそれを木剣の腹でで受ける。
力強く振るわれたその木剣は私の技術では逸らすことはできない。
しかし、勇者の高いステータスが幸いして力負けすることは無かった。
しばし硬直状態が続いたかと思った次の瞬間………。
オーエさんがさらに1歩私の方に近づいた。
そして木剣を握った両手の拳を私の腹にあてて力を入れる。
突然力一杯押される形になった私は姿勢を崩して数歩後ろに下がった。
その隙を見逃さずオーエさんが木剣を振るう。
その剣は私の手に持った木剣を天高く打ち上げたのだった。
「あ。」
「はい、勝負ありですね。」
オーエさんが木剣の剣先をこちらに向けてそう言った。
私は両手を上げて降参を伝える。
「まだまだ、あまい所はありますがだいぶ良くなりましたね。」
「そうですか?」
「はい。最初の内はスキルに振り回されてばかりでしたが今ではそんなこともないでしょう?」
確かに彼女の言う通り最初の内は【神聖剣術】のスキルに従って剣を振るっているだけだった。
それはある意味では完成された剣だったのかもしれないがオーエさん曰く綺麗すぎて対処がしやすいとのことだった。
その事もあり今では自分の頭で考えて剣を振るうようにしている。
その違いはあるのかもしれないなと彼女の言葉を聞いて思うのだった。
「でも、オーエさんには勝てません。これでは魔王に勝つことだって………。」
「確かにそうなのかもしれませんが焦ってはいけませんよ。あなたの成長速度を思えば私に勝てるようになるのもそう遠くはありません。焦って剣が雑になってしまうことの方が遠回りとなります。」
オーエさんは真剣な表情でそう口にした。
本当にそう思っていてくれているのだ。
その事が少し嬉しかった。
私はまだまだ発展途上なんだ。
大丈夫、進歩している。
いつかは魔王だって倒せるくらいに強くなることができるんだ。
そう自分の心を鼓舞するのであった。
「いや、素晴らしいですね。」
そんな私に声をかける人がいた。
高山和久さんだ。
彼も剣士と言うクラスを持っているためこうして一緒に訓練に参加していた。
1年前。
色々と諍いはあったもののこのフィロン神聖国に来た異世界人は全員が魔王討伐に参加することを決意した。
今ではフィロン神聖国の他の場所に辿り着いた41人を加えて52人がここ聖都ルーメンにいる。
この訓練は参加するしないは自己判断のため全員が参加しているわけではないがそれでも少なくない人がこうして日々研鑽をつんでいた。
「オーエさん。私の方も一手御指南頂いてもいいですか?」
高山さんはそう言って木剣を構える。
「はい。よろこんで。」
オーエさんもそれに答える。
高山さんはこの訓練に参加している人の中でも特に熱心に自分を鍛えていた。
何が彼をそうさせるのかは分からない。
しかし、仲間としてみるとこれほど頼もしいことは無かった。
私は高山さんとオーエさんの模擬戦を見ながらそんなことを考えていた。
そんな時だった………。
「勇者様!」
私を呼ぶ声が聞こえた。
そちらに顔を向けるとそこには聖女ブラナさんがいた。
「あ、ブラナさん。こんにちは。」
「はい、こんにちは。勇者様、私のことはどうかアイナと呼んでください。」
「それならブラナさんも私のことは桜と呼んでくださいよ。」
彼女と会話するときはこうしてお決まりの文句を互いに言い合っていた。
その事を笑いながら彼女の言葉を待った。
「先ほどの模擬戦はお見事でした。」
「ありがとうございます。でも、負けてしまいました。」
「それは仕方のないことかと。オーエはこの国でも随一の実力者です。その彼女にあれだけ打ち合えるだけでもすごいことなのですよ。」
「それもこれも勇者のステータスがあってのことです。」
私はそう言ってブラナさんの賛辞を固辞する。
事実その通りなのだ。
勇者のステータスは他のどのクラスよりも高い。
だからこそオーエさんとも戦えていたのだ。
「勇者のステータスですか………。そう言えば先日も外に魔物の討伐に出向かれていましたね。その際にまたレベルが上がりましたか?」
「はい。今ではレベル17になりました。」
ブラナさんの言う通り私は魔物の討伐に外に出ることが何度かあった。
これは私だけではない。
この世界に来た異世界人は皆レベルが1であった。
これでは魔王とは戦えない。
そこで神殿騎士の護衛のもと定期的にレベルを上げるために魔物を討伐しに出ているのだ。
私自身何度か参加して今ではレベル17となった。
しかし、まだまだ足りないだろう。
この国で最もレベルの高いオーエさんでレベル52だという。
それだけあっても魔王には勝てないというのだから私たちはそれ以上に強くならなくてはいけないのだ。
「勇者様?」
私が考え込んでいると心配そうにブラナさんがそう口にした。
私は大丈夫出ることを笑顔で示した。
それを見たブラナさんも笑顔を見せて口を開く。
「たった1年でそれだけ強くなれたのです。この調子でいけばすぐにでも魔王を討伐できることでしょう。」
「そうなればいいですね。」
「はい。きっと大丈夫です。」
しかし、本当にそうなのだろうか?
私はここ最近の魔物討伐でレベルが上がりにくくなっていた。
このままではオーエさんのレベル以上になるのにどれだけかかるのか分からないのだ。
だからこそ今までと同じようにしていては駄目なのではないかと最近は考えていた。
そんな不安を私はブラナさんに打ち明けるようにその疑問を口にしていた。
「オーエさんのレベルに至るにはどうしたらいいでしょうか?」
私のその質問にブラナさんはキョトンとした表情を浮かべた。
そして眉間にしわを寄せて口を開く。
「そうですね。オーエのレベルに追いつくのは難しいかと思います。」
その言葉は私の期待を打ち破るものだった。
それほどまでに難しいことを聞いたつもりはなかったのにそんな言葉が返ってくると思っていなかった私は一瞬思考が止まってしまった。
そんな私を置き去りにしてブラナさんの説明は続いた。
「オーエは若い頃に魔物の領域の氾濫に対処しています。その際に多くの強い魔物を相手取りました。それ以外にも何度となく大魔境に入り込んでいます。それにより常人よりも高いレベルを得るに至りました。」
四大魔境。
以前話には聞いていた。
世界に存在する4つの巨大な魔物の領域。
フィロン神聖国の北に位置する天衝く山脈、フィロン神聖国とレンフィスト帝国の間に位置する火の灯る山、大陸東に位置する大森林、大陸南に位置する不毛の大地。
これらの魔境はその巨大さもさることながら中に生息している魔物が強力なことでも有名だ。
オーエさんの強さはそれが理由か。
「私も魔境に行けば強くなれますか?」
だからこそ不意にそんな言葉が出た。
その言葉を聞いたブラナさんは飛び跳ねんばかりの反応を示した。
「勇者様!駄目です!」
「え、なんでそんなに………。」
「魔境に入るなんて言うのは自殺することと同じ意味です。そんなところに勇者様を行かせるわけにはいきません。」
自殺と同じ意味。
そんな風に言われるような場所だったのか。
確かにそれはこれだけ大げさな反応になるのも頷ける。
しかし………。
「私は魔王を倒さなければいけません。そのために強くならなくては………。」
「確かに勇者様に強くなっていただきたいです。しかし、態々リスクを負わなくても強くはなれます。今の方法でも強くなっているのではありませんか?」
「確かに強くはなっています。しかし、今の方法では何年かかるか分かりません。」
そう。
今のまま強くなったとしてもオーエさんを越えるのに何年かかるか分からない。
それは10年以内に魔王を討伐しろと言う神から与えられた使命を果たせないことになる。
その場合にどんな問題が生じるのかは分からない。
だからこそ私は早く強くなる必要があるのだ。
その事はブラナさんも知っている。
だからこそこうして一緒に悩んでくれるのだ。
そんな彼女の横顔を見ながら私は再び口を開いた。
「私は魔王を倒すために強くなります。そのためにリスクを負う必要があるのならば喜んでその危険に足を踏み入れましょう。」
これは勇気なのか蛮勇なのか分からない。
それでも私は強い気持ちを持ってそう口にしていた。
その様子を見たブラナさんは諦めたようなそれでいて期待するような目でもって私のことを見てくれた。
「勇者様のお気持ちは理解いたしました。どうか私に勇者様の無事を祈らせてください。」
彼女はそう言って微笑んでくれた。
その微笑みがとても嬉しかった。
--
私が魔境行き志願して数週間後。
私たちは魔境の1つである火の灯る山に来ていた。
そこは元の世界で言うところの活火山であった。
山の頂上からは煙が上がり、どろどろとしたマグマが留処なく流れていた。
そんな場所とあって当然気温も熱い。
私たちは汗をかきながら必死に山登りをしていた。
「前から魔物です!数は5!」
戦闘を行く神殿騎士の方が声を上げた。
私はすぐさま前に出て剣を構える。
私と同じように剣士のクラスにある異世界人が隣で剣を構えていた。
5匹の魔物をまとめて相手したりはしない。
1匹1匹を引き離し、それぞれを複数人で取り囲む。
今まで戦ってきた魔物たちと同じだ。
魔境の魔物とは言えそこは変わらなかった。
しかし、大きく異なっていることがあった。
それは魔物の強さだ。
今までと比べて魔物が剣をはじくことが多くなった。
今までと比べて魔物の攻撃を受けることが多くなった。
それはほんの少しの差なのかもしれない。
それでも今まで戦ってきた魔物と明確に違いがあったことに間違いはなかった。
今までと同じようにして戦う私たちであったが、その進行速度は遅かった。
当然だ。
過酷な環境に加えて、戦う魔物だって強力なのだから。
しかし、そのおかげもあってレベルの上昇も今まで以上だった。
このペースで戦っていけば10年以内に魔王に届きうると確信する程度にはレベルの上昇が高かったのだ。
そんなことを考えていると目の前の魔物も虫の息となっていた。
私は最後の人たちを加えるべく剣を大きく振りかぶった。
上段から放たれたその一撃は魔物の頸部に直撃しその息の根を止めた。
「こっちは終わりました。」
私がそれを全体に伝える。
そして周りを見てみると、他の魔物も危なげなく討伐されていた。
それを見て一先ずの安心を得るのだった。
まだまだ魔境での狩りは始まったばかりだ私は剣を収めて歩き出す。
そんな私に声をかける人がいた。
「無理してない?」
それは白神響ちゃんだった。
彼女は普段通りの眠たげな視線を私に向けながらそんなことを口にしていた。
「えっと、無理ってなんでかな?」
「だって、さっきから前に出る頻度が多いよ。」
彼女に言われて気が付く。
確かに他の人は場合によっては人に任せて後ろで休んでいる。
そうして私のように連戦することを避けていた。
危険な魔鏡で狩りをする以上はそうやってうまくスタミナを管理することが重要だ。
これは出発前に魔境を経験していたオーエさんから言われていた。
だからこそ彼らはそうしているのだろう。
しかし、それでは強くなれない。
早く強くなるためには多くの敵と戦わなくてはならないのだ。
その考えが顔に出ていたのか私の顔を見た響ちゃんは心配そうな声色で話しかけてきた。
「桜がやらなくても誰かがやるよ。だから、桜は後ろで休んで。」
「でも。」
「それに、桜が前に出すぎるとその分他の人が強くなれなくなっちゃうよ。」
「!!」
響ちゃんに言われて気が付く。
確かにその通りだ。
私は皆が強くなるための機会を奪っていただけではないか?
そんな疑問が頭の中に浮かび上がってきた。
だからこそ続く言葉は自然と出てきた。
「そうだね。ありがとう。少し後ろで休んでいるね。」
「うん。桜が休んでいる間は任せて。」
「うん。任せたよ。」
私はそう言って隊列の後方へ下がるのだった。
その瞬間どっと肩に重しをのせられたような感覚に陥る。
ここにきて気が付いた。
私は意外と疲れていたのだという事実に。
「これじゃあ、駄目だな。」
私はそう言って気合いを入れなおす。
まだまだ、魔鏡での狩りは続く。
今は休憩に専念しよう。
--
そうして、魔鏡での戦闘を経験した私たちは強くなった。
それでもまだ魔王を倒すには至らない。
まだまだ、強くならなくては。
--
私がこの世界に来て1年と少しが立ったある日。
大神殿内を喧騒が包んでいた。
噂橋程度に聞いた限りだとどうやら魔王が現れたとのことだ。
事の真意を確かめるために私はお偉いさんを探していた。
「メルセデス枢機卿。」
たまたま廊下にいたメルセデス枢機卿を呼び止める。
「どうしましたか?愛原様。」
メルセデス枢機卿は人の好さそうな笑顔を浮かべながらそう口にした。
私は少し焦りながら彼に質問した。
「魔王が出たと聞きました大丈夫なのですか?」
「その事ですか………。」
メルセデス枢機卿は少し考え込むようにして口を閉じた。
彼の次の言葉を待つ。
しばらくして意を決したような表情をしたメルセデス枢機卿が口を開く。
「結論から言いますと現時点では何もわかっていません。魔王が現れたとされているのはバリエ公国のアルカと言う町です。その町で魔物を操る男の姿が確認されました。」
バリエ公国はこのフィロン神聖国の南に位置する国のはずだ。
そこに魔王が現れた?
確認されている魔王は北と東にいるはずだ。
そこから離れた南の地に現れたということは………。
「その魔王は3人目の魔王ですか?」
「分かりません。」
メルセデス枢機卿の言葉は簡素なものだった。
私は質問を続ける。
「そのアルカと言う町に住む人々は無事なのですか?」
「分かっておりませんが伝え聞いた情報から生存は絶望的ではないかとのことです。魔王の情報を伝えたのはアルカの町の住人です。彼らの言葉では街中に突如魔物が現れたとのことでした。町の住人はこの魔物に虐殺されていたそうです。」
「な!?」
平和な町に魔物を解き放ったというのか?
何でそんなことができる?
私は魔王の行いに強い憤りを感じていた。
「今、バリエ公国では事の真意を確認するためにアルカの町に騎士隊を派遣したそうです。正確な情報が上がるのはもう少し後になってからとなるでしょう。」
メルセデス枢機卿はそう言うと「失礼します。」と言って足早にその場を後にした。
私は1人残って魔王のことを考えていた。
なぜ、善良な人々を殺すことができたのだ?
魔王とは人類の敵である。
そう聞かされた時、私に実感はなかった。
しかし、今こうして魔王の行いを聞いてはっきりとわかる。
これは不倶戴天の敵なのだと。
人類が一丸となって討滅すべき敵なのだと気づかされた。
私がそんなことを考えていると不意に後ろから声をかけられた。
「愛原さん。」
振り返るとそこには倉野正弘さんがいた。
「倉野さん。こんにちは。」
そう言う私の表情は暗く落ち込んでいたことだろう。
「あー、その様子を見ると聞いたのか?魔王のこと。」
私の表情から心の内を悟った倉野さんがそう言った。
彼自身思うところがあるのか顔色は優れなかった。
「はい。」
私は言葉数少なくそう口にすることしかできなかった。
そんな私を元気つけるように倉野さんが口を開いた。
「あんま気にするなよ?」
「でも。」
「他国の話だ。俺たちにどうにかできる問題じゃない。」
彼の言うことももっともなのだろう。
今、この世界の国々では私たち異世界人の扱いをどうするかで揉めているという。
魔王討伐のために互いに力を合わせるのは一致しているがそれ以外の理由で他国の異世界人を国内に入れることをよしとしない国がいくつかあるのだ。
私たちは個人個人が強い力を持っているのだ。
その力が魔王に向けられるのならばいいが、そうでない場合に御する自信が無いのだ。
特に他国にいる異世界人は人柄も分からないからこそなおさらだ。
もしも今回事前にアルカの町に魔王がくると分かっていても私たちがそこに居合わせることができたかと言うと疑問が残る。
それほどまでに国を出ることに制限がかかっていたのだ。
だからこそ倉野さんはそう口にしたのだろう。
「バリエ公国のことはバリエ公国にいる異世界人に任せておけ。俺たちは仲間だ。その仲間を信じてやることも重要だぜ。」
仲間を信じる。
確かにそうなのかもしれない。
全部1人で抱え込む必要はないのだ。
バリエ公国にだって強い異世界人はいるだろう。
きっと、彼か彼女がそれを成してくれるに違いない。
今はいざ私たちが出るとなったときのために力をつけることが先決なのだ。
私はそう思って手を握り閉める。
そんな私に倉野さんが話しかけてきた。
「そう言えば聞いたか?他の国の話。」
「えっと、何の話でしょう?」
彼のその言葉は色々と言葉が足りなかった。
私は首を傾げながらそう聞き返していた。
「なんでも他の国にも勇者がいたらしいぜ。」
倉野さんのその言葉にドキリとした。
私以外にも勇者がいる。
その事を私は純粋に嬉しいと感じていた。
フィロン神聖国の人々が向ける勇者への期待は日に日に大きくなっていっているように感じていた。
正直私はその期待が重いと感じていたのだ。
だからこそ、その気持ちを分かち合える人がいるのであればこれ程嬉しいことは無かった。
先ほどまで魔王出現の報を受けて暗く沈んでいた気持ちに一筋の希望が生まれた気がした。
私のそんな気持ちを知ってか知らずか倉野さんの話は続いた。
「なんでもレンフィスト帝国に1人、リトレ王国に1人いるらしい。つまり愛原さんを合わせて3人の勇者がいることになるな。」
3人の勇者。
それを聞いて作為的なものを感じた。
この世界に存在する魔王も3人。
その3人の魔王を倒すために今回3人の勇者が生まれたのではないか?
そんなことを考えずにはいられなかった。
それは倉野さんも同じようだった。
続く彼の言葉は私の考えを代弁するものだった。
「魔王も3人いるってことは魔王1人に対して勇者1人なのかな?」
「そうなのかもしれませんね。」
だからこそ私はそんな言葉を返していた。
「そうなると俺らは何なんだろうな?」
彼はどことなく暗い表情をしながらそう言っていた。
魔王に対抗して勇者がいるのなら勇者以外の異世界人は何のためにいるのか?
確かに彼の言う通りだった。
もしも魔王を倒すのに必要なのが勇者の力なのならば3人だけでいいはずだ。
それが300人弱に及んだのには何か理由があるのか?
私にはその答えは分からなかった。
しかし………。
「私にはわかりません。でも、私はこうして一緒に魔王討伐を決意してくださった倉野さんたちがいて嬉しく思っています。」
私のその言葉を聞いて倉野さんは一瞬キョトンとするもすぐに笑顔を見せた。
その笑顔を見て私も頬が綻ぶのを感じていた。
>>Side:勇者 愛原桜 End
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