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005


次の日。


俺はリリとともにアルカの商店通りへと来ていた。

目的は彼女の服を買うことだ。

しかし………。


「ユーイチ、本当に良いんだよ。」


リリはそう言って服を買おうとする俺の提案を固辞する。

その表情は本当に申し訳ないと思っているようであった。

そんな彼女の気持ちは嬉しいが俺は取りやめるつもりはなかった。

ボロボロな彼女の見た目を見てどうにかしてあげたいと思ったのだ。


立ち並ぶ店を適当に見て回りながら買い物を続けていると不意に声をかけられた。


「おい、魔族が俺の店に来るんじゃない。とっとと消えろ。」


その声は俺とリリが店頭に並んだ商品を確認しているときに聞こえた。

そちらに顔を向けると恰幅の良い男性が眉を潜ませながらこちらを睨んでいた。


「聞こえなかったのか?とっとと消えろ。」


男はそう言ってリリの肩に手を伸ばす。

俺はとっさに男の手を止めた。


「なんだよ、おまえは?」


「おまえこそ何をするつもりだったんだ?」


俺は男を睨みつけながら手に力を入れる。

しかし、男はそれでも語気を緩めなかった。


「あ?魔族を追っ払おうとしていただけじゃないか。何を睨んでいるんだ?」


その言葉に俺は頭に血が上るような感覚を覚えた。

ここでも魔族か?

そんなに魔族であることが悪いことなのか?

男の腕を握る手にさらに力が入る。


「っつ!がぁ、やめろ、やめろぉおおお!!」


痛みから男が悲鳴を上げた。

俺はとっさに男の腕を放した。

男は飛びのき俺たちから距離をとり腕をさする。。

その姿を冷めた目で俺は見ていた。


「おまえ何のつもりだ!!」


腕に異常が無いことを確認した男はそう言って俺に食って掛かった。

この状況でもなおも怒りをあらわにする男に俺は静かに口を開いた。


「おまえこそ何のつもりだ?」


「あ?」


「子供に手を上げようとしていたろ?何故そんなことができるんだ?」


「子供?関係ないだろ!?そいつは魔族だぞ!?」


男のその言葉に俺は一生平行線だと呆れてしまう。

きっと、この世界の人とは理解し合うことはできないのだと思う。

俺はリリを魔族だからと言う理由で害そうとするその感性は理解できなかった。

俺がそんな諦念に浸っているとなおも男は怒鳴り散らす。


「な?俺は間違ってないだろ?分かったら何とか言ったらどうだ!?」


「うるさい。」


「あ?」


「殺すぞ?」


俺はそう言って魔力を滾らせる。

ゆっくりと男の周りを魔力で満たし男の体を地面に縫い付けるように下向きの力を魔法で生み出す。

発動した魔法は物理的な力を伴って男に襲い掛かる。

急に重力が強くなったような感覚に陥った男は両足で立っていることができず、その場に倒れ伏してしまう。

それでも俺は魔法を止めない。

その状態で俺は男に向かって言葉を投げかけた。


「魔族だから害してもいいなんて決まりがあるのか?」


「あ、な。っつ!!」


男は声を出せない。

呼吸さえも儘ならない状況でなおも口を開こうとするが出てくるのは言葉にならない音ばかりであった。

店の周りに人だかりができているのが視界の端に映った。

がやがやと騒がしいが俺はそれを無視して男に再度言葉を投げかけた。


「もう一度聞く、魔族だから害してもいいという決まりがあるのか?」


男に投げかけたその言葉は意外なところからの返答を生んだ。


『マスター、念のために申し上げますと法律でそう言った決まりのある国はありません。それはあくまで社会風習の一環でしかありません。』


俺はアディのその言葉を聞いてほくそ笑むのであった。

なんだ、やっぱりそんな決まりは無いじゃないか。

なら遠慮する必要はない。


俺は男を拘束する魔法をより強める。

男の体中の骨がきしみを上げる。

それを見下ろしながら俺は口を開いた。


「ないよな?なのにおまえはリリを害そうとした。なら、おまえ自身理由も無く害されても文句は言えないよな?」


「がぁ、あぁあああ。」


俺はさらに力を加えていく。

それに伴い男の発する音も悲鳴のそれに代わってきた。

そん時だった………。


「ユーイチ。」


不意にリリが不安そうな声で俺に話しかけてきた。

その顔を見て俺は思いとどまる。

リリの頭を一撫でして魔法を解除した。

男は荒い呼吸を繰り返す。

骨は折れてはいないとは思うが、すぐに立ち上がることはできないだろう。

そんな男に俺は再び声をかけた。


「次は無いぞ。」


そう言って俺とリリはその場を後にした。

それを見ていた辺りの人々は騒然としていた。


その後の買い物中に魔族と言う理由で絡まれることは無かった。

どうやら先ほどの商店での一幕は噂話として通り中に話が言ったようだった。

怖がられるのは心外だがそれでリリが守れるのならいいと思えた。


そんなことを思いながら1つの商店に入った。

そこは服屋だ。

店内は色とりどりの服やそれに合わせる装飾品の類が陳列されていた。

とはいっても、現代ほどに品ぞろえは良くはない。

それでも商店通りを一通り見て回って一番の品ぞろえを誇っていた店に俺たちは訪れていた。


「こっちの方がいいんじゃないか?」


「いえいえ。お嬢さんにはこちらの方が似合うと思います。」


その店の店員はリリが魔族と知っても変わらずに対応してくれた。

それは先ほどの一軒を知ってのことなのかは定かではない。

それでも俺にとって普通に対応されるというのは嬉しかった。

リリ自身も同じ気持ちなのだろう。

着せ替え人形のようにいろんな服を着せられているリリはどことなく嬉しそうにするのであった。


「じゃあ、これとこれ、あとこっちもくれ。」


俺はその店で何点かの服を購入した。

リリには何度となく固辞されたがそれでも俺は押し通した。

その様子を店員は微笑みながら見ていた。


「そうだ。最後に帽子も見せてもらえないか?」


「帽子ですか?少々お待ちください。」


そう言って店員はいくつかの帽子を持ってきた。

その中で俺は1つの帽子を手に取ってリリに被せた。


「どうだ?これならリリの角も隠れるだろう?」


「え?」


「そうすれば、一見して魔族と見られないはずだ。角を隠すのがリリ的に嫌だって言うことじゃないならこうしたらどうだろう?」


「うん。ありがとう。」


リリはそう言って鏡に映る自分の姿を見ていた。

その表情は嬉しそうに微笑みを浮かべていた。


「じゃあ、これもくれ。」


「はい。お買い上げありがとうございます。」


俺は服と帽子の代金を店員に渡した。

そして、俺たちはその店を後にする。


俺の目の前には今しがた買った服を着こみ、帽子をかぶったリリが楽しそうに歩いていた。

そんな彼女の背中を見て俺は声をかける。


「リリ。」


「ん?なに、ユーイチ。」


「似合ってるぞ。」


俺のその言葉を聞いてリリは顔を真っ赤にする。

その姿が可愛らしくて俺は頬が緩むのを感じた。


「もう、ユーイチ。からかわないでよ。」


「からかっていないよ。本当にそう思ったんだ。」


そう。

確かにそう思ったんだ。

新しい服を着こんで年相応に陽気にはしゃぐ彼女を見て本当に似合っていると思った。

その姿を見れて本当に嬉しいと思えた。

そして決意するのだ。

これからもっともっと彼女が笑えるようにしてあげるのだと。

俺が守ってあげるのだと決意するのだった。


俺の気持ちを知ってか知らずかリリは俺の横に並び嬉しそうに笑みを浮かべた。

その表情を見て俺も再び顔が綻ぶ。

俺たちは2人並んでアルカの町を歩いていた。


--


リリの服を購入し、商店通りを後にした俺たちはその足で冒険者ギルドを訪れていた。

目的は当然昨日納品した魔物の代金を受け取るためだ。

俺たちが冒険者ギルドの扉を潜ると中はざわつき始めた。


「おい、あいつ。」

「ああ、ベルナンドさんをやった。」

「しっ。目をつけられたら俺たちも……。」

「何で魔族なんて連れているんだ?」


昨日の騒動が未だに尾を引いているようだ。

俺のことを見ながら話すそんな声が聞こえてきた。

俺はそれを無視しながら換金カウンターの方に向かった。


誰も関わり合いたくないのかそこにいた冒険者は皆道を開けてくれた。

楽でいいとほくそ笑みながら俺はカウンターの前に来た。

俺の顔を見るとギルド職員は「少々お待ちください。」と言って奥へと言ってしまった。

まだ何も言っていないのに察してくれたようだ。

しばらく待っているとギルド職員が戻ってきた。


「金額が大きいので奥の部屋で代金の支払いと内訳の説明をいたします。」


そう言って俺にギルドの奥へ行くように手で促してきた。

俺はそれに従って女性のギルド職員とともに奥の部屋へと向かった。

そこは椅子が向かい合わせで置かれた対談用の部屋のようであった。

そこには年配の男性職員がすでに椅子に腰かけていた。


「こちらにどうぞ。」


俺を案内した女性職員はそう言って椅子を示す。

俺はそこに腰かけ、リリに隣に座るように促す。

リリは珍しいものを見る目で部屋を見回しながら俺の隣に腰を落とした。


「さて、まずは礼を言わせてくれ。今回多くの魔物の素材を納品してくれてありがとう。」


俺の対面に座る男性職員の隣に女性職員が腰を下ろしたタイミングで男性職員がそう言った。

そして、男性職員と女性職員は頭を下ろす。

その様子を見てリリはおろおろとしているが俺は落ち着いて次の言葉を待った。


「さて、今回の支払いについてだが………。」


男性職員はそう言って隣の女性職員を見た。

女性職員は1度首を縦に振り口を開く。


「ここからは私が説明いたします。まず………。」


そうして女性職員から今回俺が納品した魔物毎の金額を説明された。

こういう理由からこうなりますと懇切丁寧に細かく説明を受けるのだった。

全て説明を聞いて女性職員が「以上となります。」と言葉を締めくくったのを聞いて俺は口を開いた。


「分かった。その金額で問題ない。」


「はい。ではこちらが代金となります。」


そう言って女性職員は一抱え程ある袋を取り出した。

じゃらじゃらと音がすることからどうやら中にお金が詰まっているようだった。

俺はそれを受け取り中身を確認せずに空間魔法でしまった。

それを見て職員2人は目を丸くしていた。


「それが噂に聞く空間魔法か?」


驚きを隠せないと言った表情をしながら男性職員がそう言った。


「ああ、そうだ。」


「いや、伝説上の魔法をこの目にできるとは思わなかった。見たところ高位の魔術師なのかな?」


「みたいなものだな。」


「あの魔物たちも魔法を使って討伐してきたのかな?」


「ああ。これは何の質問なんだ?」


尋問するようにそう聞いてくる男性職員に俺は訝し気な目を向けるのであった。

それを見て俺の気持ちに気が付いたのか男性職員は首を振ってこたえる。


「いや、済まない。別に問いただすつもりはないんだ。ただ、あの素材が何処から持ってこられたのかはっきりとさせたくてな。」


「そう言うことなら、あれは不毛の大地の魔物だ。」


「やはりそうなのか。」


俺がそう答えると男性職員は納得の表情を浮かべる。

彼自身そう予想していたのだろう。


「しかし、不毛の大地と言ってもいくつかは中心部まで行かないと出てこない魔物だった。まさか、それが外縁部まで近づいてきていたのか?」


男性職員の表情は不安そうなものであった。

それも当然である。

雄一は知らないことだが、もしも中心部の魔物が外縁部に出てきているとなると町に被害を及ぼす可能性があるのだ。

特にレッサードラゴンなんかが出れば町を放棄することを検討しなくてはならないだろう。

それを思って彼は不安に感じていたのだった。

しかし、その心配は杞憂である。


「いや、そんなことは無いから安心すると良い。あれらはどれも不毛の大地の中心部まで行って取ってきた魔物だ。」


「………どうやってだ?」


「魔法を使ってだ。どんな魔法なのかは態々教える必要はないだろ?」


「まあ、そうだな。聞かされたとしてもそれが本当かどうかは私たちに判断できない。」


俺の説明で男性職員は一応の納得を示してくれた。

そして考え込むようなしぐさをして黙り込んでしまう。

俺は静かにそれを見守るのだった。

しばらくして彼は顔を上げて口を開いた。


「今後もこうして魔物を納品してもらえるのだろうか?」


「そうだな。しばらくは不毛の大地を中心にして狩りを行うから、またこうして納品することはあると思う。」


嘘だ。

ダンジョンがあるのだからこの先不毛の大地から大きく離れることは考えていなかった。

それでも、魔王であると明言するわけにも行かないため俺はそう答えるのだった。

それをどうとるかは分からないが、この言葉から俺が魔王だと気づかれることは無いだろう。


「そうか。それなら冒険者登録をするのはどうだ?」


冒険者登録。

それは昨日も進められた。

俺の中ですでに答えは出ている。


「いや、それはやめておこう。」


「なんでだ?」


「俺にとっては冒険者として得られる恩恵よりも、デメリットの方が大きいからだ。」


「そうなのか?」


この男性職員は昨日の一幕を知らないのだろうか?

キョトンとした表情で聞いてくる男性職員にそんな印象を受けた。


「昨日の1件は知らないのか?」


「いや、報告は受けている。赤竜の翼に所属するベルナンドと決闘して勝利したのだろう?」


「決闘じゃない。一方的に難癖付けられて食って掛かってきたのを払っただけだ。」


「そうだったのか。彼の日ごろの行いからは想像もできないが………。」


男性職員にはベルナンドと言う男はそう見えていたのか。

それは意外だったな。

あの行いからは想像もできなかった。


「その際にギルド職員に言われたんだ。冒険者同士の諍いはギルドは介入しないと。もし俺が冒険者となった場合、食って掛かる冒険者を態々相手をする必要がある。それは面倒なんでな。」


「なるほど。冒険者じゃなければギルドが何とかすると。確かに冒険者は粗野なものが多いがそれでも毎日決闘騒ぎを起こしたりしないぞ。」


「そんなのは知らないよ。俺は俺が今まで見た冒険者の印象からそう感じただけだ。」


「なるほどな。」


「もう1つ加えるなら。昨日、俺は冒険者じゃないと宣言していたにも関わらずギルドは何もしなかった。だからこそギルドが信用できないという理由もあるな。」


俺のその言葉に男性職員は驚いたような顔をした。

その話は聞いていなかったのだろうか?

しかし、考えればわかると思うのだがな。

そもそもギルドが何とかできていればベルナンドと決闘することにならなかったのだから。


「それはギルド側の落ち度だ。申し訳ない。」


そう言って男性職員は頭を下げた。

ここでこういう言葉出てくるということはこの職員は相当えらい立場にいる人なのだろうか?

しかし、それは関係ない。


「と言うわけだから、俺は今は冒険者になるつもりはないよ。」


「そうだな。そこまで言われてしまえばこちらとしてもこれ以上強くは言えない。しかし、それを抜きにして1つ頼まれてはくれないか?」


男のその言葉に俺は眉を顰める。

この状況で頼み事ができるとは相当に肝が据わっていると思う。

豪胆なのかそれともただの馬鹿なのか………。

今までの会話から前者な気がする。


「なんだ?」


「最近、アルカの北西、不毛の大地の北部地域でロックゴーレムが多発している。そちらに派遣した冒険者の話ではギガントロックゴーレムを見たという証言もあるのだ。これの討伐を頼みたい。」


討伐依頼。

それ自体は俺にとっては手間ではない。

ゴーレム自体も不毛の大地で狩りをしているときに何体か戦ったことがあるため経験もある。

しかし………。


「何で俺に依頼するんだ?それこそ冒険者に依頼したらどうなんだ?」


「残念ながら今この件に対応できる冒険者はこのアルカにはいない。」


男性職員のその言葉を聞いて俺は首を傾げる。

ゴーレム自体は決して弱い魔物とは言わないがそれでもそんなに強い魔物と言うわけでもない。

確かに上位種のギガントロックゴーレムの討伐まで含めるなら相当に実力のある冒険者が必要となるかもしれないが、それでもあのベルナンドレベルの冒険者なら分けないだろうと思っていた。

俺がそんなことを考えていると男性職員は再び口を開いた。


「最初は赤竜の翼に依頼しようと思っていたのだが昨日の件もあり現在は傷を癒し、武器を整えることに専念したいと申し出られてしまった。いくらベルナンドが実力者とはいえ武器が無いのでは戦えない。」


「それなら他の冒険者はどうなんだ?別にベルナンドが最高戦力と言うわけではないだろう?同じくらい強い冒険者に依頼すればいいじゃないか。」


「何か勘違いしているようだが、ベルナンドは文字通りこのギルドの最高戦力だ。彼に並び立つ冒険者はこのアルカにはいない。」


意外だった。

あのレベルでこのギルドで一番の実力者とは思わなかったのだ。

正直あのレベルなら俺のダンジョンに侵入してきた冒険者たちの方が強い。

町にはそう言ったレベルの冒険者がごろごろいると思っていた。

いや、単にこの町はそう言う町だと言うだけかもしれない。


「他の町から冒険者を連れてくればいいんじゃないか?」


「確かにそれも検討した。しかし今のバリエ公国にはベルナンドレベルの冒険者はそうそういないんだ。」


「そうなのか?」


「ああ。それにそれほどの冒険者となると有事の際のために囲っておきたいと考えて、その町のギルドは派遣を渋る。実際今回もいくつかのギルドに打診をすでにしていたが色よい返事は得られなかった。」


それも変な話だ。

不毛の大地の魔物を討伐できなければ危険はこのアルカだけでは収まらないだろう。

それならこぞって冒険者を派遣してもいいのではないか?

それともそんな危険は無いのか?


「ロックゴーレムならびにギガントロックゴーレムが討伐されなかった場合はどうなる?」


「数が増えすぎた場合は不毛の大地と言う領域をから溢れ出る可能性がある。」


増えすぎれば生息域から移動する。

魔物にそんな習性があるとは知らなかった。

しかし、生物としてみれば当然のことか。

何にしろギルドとしては不毛の大地に収まっているうちに数を減らさなくてはならないわけだ。


「魔物の領域から溢れた場合の町への被害は?」


「数にもよるがよくて半壊。最悪は町が崩壊するだろう。それはこのアルカだけではない。バリエ公国の西部に位置する街全てが同じ危険を孕んでいる。」


「なら、それを伝えれば他の町から冒険者を派遣してもらえるのではないか?」


「その危険が分かっていないんだ。他の町のギルドでは。だから、不毛の大地のことはアルカで何とかしろと言う姿勢を崩さない。」


男性職員は多少感情的になりながらもそう口にした。

確かにこれはまずそうだな。

彼の言葉からは反乱するまで他の町は動かないと言っているようなものだった。

ゴーレムがどれだけの数いるか分からないがこのままいけば反乱するのは確実だろう。


「俺が断ったらどうするんだ?」


「………イチかバチか今アルカにいる冒険者を総動員して討伐に向かう。多大な犠牲は出るだろうが反乱までの時間稼ぎはできるだろう。その間にベルナンドの準備が整えば討伐を行い。無理なら町を放棄することを検討するしかないだろう。」


そう言う男性職員の表情は悲壮感に満ちていた。

彼だって多くの犠牲を強いるその計画を実行したくはないだろう。

しかし、それしか手は残されていなかった。


俺はリリの方を向いた。

リリは不安そうな表情で俺を見上げていた。

彼女もこの町が滅ぶようなことになるのは望んでいないのは明白だった。

彼女の不安を取り除いてあげようと俺はリリの頭を撫でた。


そうだな。

この町がどうなろうと俺にとってはどうでもいい。

でも、リリが住んでいるこの町を守ると考えるならやってもいいと思えた。

俺は男性職員に向き直り口を開いた。


「俺は冒険者にはならない。」


「分かっている。」


「だから今回のこの1件は冒険者の依頼とは別と考えていいな?」


「ああ。」


「分かった。それならその依頼受けよう。」


「本当か!恩に着る!」


男性職員はそう言って頭を下げた。

俺はそれを見つめながら次の言葉を待った。

しばらくすると男性職員は頭を上げ、笑みを浮かべながら口を開いた。


「では、依頼の具体的な話をしよう。まずは………。」


その後、俺と男性職員は依頼の内容を話し合った。

討伐のターゲット、その数、報酬。

全てのことを話し終えると俺とリリはギルドを後にするのだった。


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