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6話

 今日も、ヒロシの母さんは、神社にやって来た。あれから、何回も何回も、ヒロシが早く帰ってきますように。って一緒に神様にお願いをしてるから、すっかりヒロシの母さんの匂いも覚えたもんね。


 ヒロシの母さんは、毎日、毎日、僕にドッグフードを持ってきてくれる。毎日、美味しいご飯をありがとう。

だけど、僕はやっぱり、ヒロシが持ってきてくれるご飯の方が、美味しくて好きなんだ。

だから、ヒロシ、早く帰ってきて僕にまた、美味しいご飯を食べさせてよ。


 今日も、ヒロシの母さんと神様に、ヒロシが早く帰ってきますようにってお願いした後に、縁側に座った、ヒロシの母さんのお膝の上で、お話を聞いたんだ。

今日のお話は、いつもと違って、夕方はヒロシの母さん神社に来れないって言ってた。


 「大丈夫! ヒロシの母さんの分も僕が夕方のお願いも、ちゃんとしておくからね」


 そう言ってから、ヒロシの母さんの顔をペロペロ舐めてあげたんだ。ヒロシの母さんは、くすぐったそうに笑ってた。

笑った顔が、ヒロシにそっくりだったなぁ。


 今日は、ヒロシの母さんが夕方は来ないから、夜のご飯は、久し振りに、ベスおじさんのところに行って、ドッグフードを分けてもらうんだ。


 ちゃんと、ベスおじさんと約束した通り、夜中になってから、向かわなくっちゃ。また、ベスおじさんに怒られちゃうもんね。



 そろそろ、ベスおじさんのところに行っても大丈夫かな?

僕は、神社の境内から街を見下ろして、街の明かりが少なくなってるのを、ちゃんと確認してから、ベスおじさんの棲み家に向かったよ。

車に気を付けて、道路の端っこを、ヒョッコリヒョッコリ進むんだ。そうそう、車だけじゃなく、大人の人間の男の人にも、気を付けなくちゃダメなんだよね。棒で叩かれたりしたら、とっても痛いんだもん。


 「ベスおじさん、ベスおじさん」


 ベスおじさんの飼い主さんの、お家の外から、約束した通りに最初にベスおじさんに声を掛けるとすぐに。


 『坊主か? 久し振りじゃな、入っておいで』


 そう、言ってくれたから、僕はいつものように、お家の門のすきまから、ベスおじさんの元に向かったんだ。


 ベスおじさんは、僕が来なくなってたから、とっても僕の事を心配してくれてたみたい。僕は、ヒロシが突然消えちゃってから、毎日、ヒロシの母さんと一緒に、神社に住んでる神様に、早くヒロシが帰ってきますようにってお願いしてる事や。ヒロシの母さんが毎日、僕の大好きなドッグフードを持ってきて、ご飯を食べさせてくれてる事を、ベスおじさんに言ったんだ。


 『そうか、そうか、坊主に優しくしてくれる人間の世話になってたのか、安心したぞ』


 「あのね! ベスおじさん! ヒロシの母さんの匂いも、手の暖かさも、ヒロシと同じぐらい、良い匂いで暖かいんだよ、知ってた? あっでも一番は、ヒロシだけどね、早くヒロシ帰ってきたらいいのに……」


 『そうじゃな、でも毎日、ヒロシの母さんと坊主は、神様にお願いしてるんじゃろ? それなら、絶対にヒロシも帰って来るじゃろ』


 「ほんとに?」


 『本当にじゃ』


 「ほんとに、ほんとに?」


 『本当に、本当にじゃ』


 「ほんとに、ほんとに、ほんとに?」


 『あぁ、あぁ、本当に本当に本当に本当にじゃ』


 そう言って、ベスおじさんは楽しそうに笑ってた。僕もベスおじさんに釣られて笑ったんだ。だって、ベスおじさんがヒロシが帰って来るって言ったから、ベスおじさんは、僕にウソなんか言わない優しい犬だもんね。


 久し振りに来たから、ベスおじさんは、僕の為にドッグフードは用意してくれてなかったんだ。ガッカリしてたら、ベスおじさんは、少し困った顔をして、犬小屋の中から、何かを口に咥わえて持ってきた。



 『すまんのぉ坊主、ドッグフードの代わりに、これをやるからな』


 そう言って、ベスおじさんが僕の目の前に置いてくれた物を見たんだ。


 「わ~い! 骨ガムだ! いいの? ほんとに僕が食べちゃっていいの?」


 前に一度、食べてみたくて、お願いしたんだけど、絶対に分けてくれなかった骨ガム。ベスおじさんの大好物の骨ガム。

ベスおじさんが、美味しそうに食べてた骨ガム。うれしいなぁ。

ありがとうベスおじさん。


 今日は、ヒロシの母さんがくれる、ドッグフードは食べられなかったけど、前から食べてみたかった骨ガムも食べられたよ。美味しかったなぁ骨ガム。

今日は、神社に帰ったら、縁の下の棲み家に戻って寝る前に、もう一度神様に、お願いしてから、寝ようかな。


 「神様、早くヒロシを僕とヒロシの母さんのところに帰してあげて」


 って……。

 

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