ヴァルファーレ最終決戦
グレンは、再びお姉様の牢屋の前に行くと、ジークさん達が待っているのを見つけた。
ライザスもかなりのダメージをくらっていたが、一緒にいた。
それにしても、ジークさん達は、あれだけの連中を無傷のまま倒したのか。
流石としか言いようがない。
「随分と男前になったじゃねぇか、グレン」
ボロボロの僕の姿を見て、ジークさんが言った。
「おかげさまで」
僕はニコリと笑って返事をした。
「あの大人しくて引っ込み思案のグレンが……こんなにも逞しく…」
僕の成長を実感したのか、お姉様が泣いていた。
僕はジークさんにもらった鍵を使って、お姉様を牢屋から解放した。
「ライザス。お姉様をお願いします。
僕はこれから、王の間に向かいます」
そう、戦いはまだ終わっていないんだ。
ライザスにお姉様を預けて、僕は2階の王の間に向かった。
王宮内では、まだ激戦が繰り広げられていた。
死んでいる国民の姿も目に入ってくる。
みんなごめん。
みんなありがとう。
そんな感謝と懺悔の気持ちが、同時に押し寄せてくる。
こんな戦いを終わらせるためにも、僕が敵の大将を討ち取る。
ジークさん、マオさん、クリスさんの3人が、僕の後ろを追ってきてくれ、僕の道を拒もうとする敵をやっつけてくれる。
王の間にたどり着いた。
本来、僕の父上が座るべき場所には、若くガタイのいい男が座っていた。
そいつは、王様のように煌びやかな鎧と、純白のマントを身に付けていた。
こいつが、ゼノドラグスの手下の大将。
この国を乗っ取った、偽りの王か。
「貴様らか。私の国でこんなくだらんクーデターを起こしたのは?」
「私の国…だと?
ブァルファーレは僕の……僕達の国です!」
「ふん。貴様らは我らに降伏をしただろう。今は我らの国だ。
まぁよい。これまでのように、また我らの力で降伏させるだけだ。かかれ」
王がそう言うと、あたりから兵が集まってきて、襲いかかってきた。
「グレン。雑魚は俺らに任せろ。
お前はあの国王もどきをやれ」
ジークさん、マオさん、クリスさんが、僕の道を作ってくれた。
僕はそのまま王の元に駆けていき、剣を振るった。ナイトドラグルをも倒せた一撃だ。
僕は、その一撃で全てを断ち切ることができると思っていた。
しかし、王はそれを軽々と受け止めた。
「くははは。それが本気か?そんなんじゃ国は取り戻せんぞ?」
王が攻撃を仕掛けてくる。
スピード、パワーもナイトドラグル以上だ。
ナイトドラグルとの戦いで負傷している僕は、攻撃の糸口を掴めずに、防戦一方となっていた。
「くはははは。
その程度の実力しかないのか?
所詮貴様は、誰かに助けてもらわないと何もできない弱き者!力無き者に王の資格などないのだ。潔くここで死ねぇ!」
王の猛攻は凄まじく、避けきることはできず、剣は何度か肌をかすめ、ダメージが少しずつ蓄積されてゆく。
このままじゃ負ける…。
王が僕にトドメの一撃を振り下ろそうとしたとき、一筋の黒き閃光が飛び込んできた。
王は攻撃を止め、後ろにステップをして避けた。
王が閃光の出どころに目を向ける。
そこには、マオさん達が立っていた。
周りには、襲ってきた兵士全員が倒れていた。
「貴様ら!あの数を全て倒したというのか?!しかもこんな短時間で…!」
「こんなザコ、どれだけ数が集まろうとわけないわね。はっきり言って、私達が本気を出せば、あんたなんか秒殺して、こんな戦争も一瞬で終わらせられるのよ」
ジークさん、マオさん達は、そんなにも強かったのか…。
王は眉間に皺を寄せ、じりじりと後ずさりした。
「でも安心なさい。私達はただの旅人。
国の行方を決める最後の一手には、口を出すつもりはないわ。
つまり、あなた達の戦いに手を出すつもりはない。
グレンが勝てば国は返してもらう。あなたが勝てば私達もここを引くわ」
「本当だな!?このガキを倒せば見逃してくれるんだな?」
王はニタァっと笑みを浮かべた。
「えぇ。ただし勝てたらね」
「ぐふふふ!こんなガキに、私を倒す実力があると思っているのか?」
「じゃあ聞くけど、あなたに、この国を支配するだけの実力があると思って?」
「当然だ!国民の力やお前達の力に頼って、自分1人では何もできないような奴よりも、私のような強者の方が王には相応しいのだ」
「それぞれに考え方はあるから、あなたの考えを否定するつもりはないわ。
だけど1つ気に入らないことがあるわね。
あんた、それだけのことを語っていて、自分1人の力でなんとかしてきたと思っているの?」
そう言うと、マオさんは、肩に乗せていた黒い小さな豚を手に掴んだ。
「誰かの力を借りないと何もできないのは、あんたの方でしょっ!?」
マオさんは、王に向かって、その黒豚を思いっ切り投げ付けた。
「リーナ。何をするべきか分かっているわよね?ちゃんとやらないと、お・し・お・き・よ」
その投げつけられた黒豚は、王に噛みついた。
「なんだ…これは……。
力が抜けていく…」
「その黒豚ちゃんはね、元ゼノドラグスなのよ。
あなた達ゼノドラグスの手下が、何かしらの魔法で身体能力が強化されているのは知ってるわ。
その黒豚ちゃんは今、その魔法を解いたのよ」
「な……なんだと!
ゼノドラグスをペットにしているなんて…貴様ら何者なんだ…」
王の表情には、明らかに恐怖が窺えた。
「何者?私達は通りすがりの魔王と勇者よ。
人の力を借りないと何もできないのはどっちかしらね?
さぁ、グレン。あとはあなたの仕事よ」
僕は剣に力を込めて、再度、王に向かっていった。
「はぁぁぁーー!これで、終わりです!!」
「くそっ!こんなガキぐらい、私の実力だけでなんとかしてみせる!」
王は僕の攻撃を防ごうとするが、今までのような反応速度はなく、僕の攻撃は、王の体を真っ二つに切り裂いた。
「ぐふっ。そんな……。王の私が敗れるなんて…。
せっかく力を、富を、名声を手に入れたのに……」
「国民達をないがしろにしたあなたに、王の資格などなかったんです。
確かに僕は、1人じゃ何もできません。
だからこそ、国民達みんなの助けが必要なんです。
僕は国民達に支えてもらいます。
だから僕も、その国民達の幸せのために、できる限りのことをします。
ブァルファーレは、それでいいんです」
敵はゆっくりとその場に倒れた。
終わった……。
安堵で体の力が抜け、意識が遠のいていった。




