↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは『勇者』と『魔王』の物語  作者: 東の雲
ヴァルファーレ奪還戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/61

援軍

 クリスは、王宮の裏手から攻め込み、次々と兵を倒していった。


 裏門の前には、元ブァルファーレの騎士達が、ずらりと隊列を組んでいた。


 その数は、見える範囲だけでも数百。


「突撃ーっ!」


 第2部隊20名の雄叫びが、裏手に響いた。


 私は先頭に立ち、剣を抜いて駆け出した。

 腕輪の虚脱感が、足に重くまとわりつく。

 だが、体は思った以上に動いた。


 前から振り下ろされる剣を、半歩ずらして躱し、脇腹へ刃を滑らせる。


 背後から迫る槍の気配は、見なくても分かった。身をひねって穂先をかわし、柄を掴んで引き寄せ、肘を叩き込む。

 騎士達が、次々と倒れていった。


 そんなに強い敵はいない。


 恐らくは、ゼノドラグスの手下ではなく、寝返ったブァルファーレの騎士がほとんどなのだろう。


 刃を交えるたびに、彼らの剣に迷いがあるのが伝わってくる。

 本心から、ゼノドラグスに従っているわけではないのだ。


 ドォォォン!


 そのとき、遠く、正門の方角から、爆音が響いた。


 続いて、怒号と悲鳴と、剣のぶつかる音が、風に乗って聞こえてくる。


 マオさんとライザス殿達が、突入を始めたのだ。


 ゼノドラグスの手下も混ざっているのか、時折、化け物みたいに強い奴が、騎士達の中に紛れている。


「うおおおっ!」


 その1人が、大剣で反乱軍の兵士達を薙ぎ払った。


 3人の兵士が、まとめて宙を舞う。


 そしてその男の次の狙いは、リガンだった。


「リガン、後ろだ!」


 リガンは、騎士の足元をかいくぐっていたところだった。


 振り向く間もなく、大剣の腹が、リガンの小さな体を捉える。


 ドガッ!


「ぐっ……!」


 リガンの体は、ボールのように吹き飛び、壁に叩きつけられて、ぐったりと動かなくなった。


「リガンッ!!」


 駆け寄ろうとした私の前に、大剣の男が立ちはだかる。


「次は、お前だ」


 くそっ。


 ただでさえ、こっちは数が少ないのに。


 ブァルファーレの騎士程度の相手なら、今のリガンなら簡単に倒せるのに、貴重な戦力を最初に失ってしまった。


 とはいえ、反乱軍の戦士達も、みんな頑張っている。

 私が教えたことが身についているのか、寝返ったブァルファーレの騎士相手なら、ものともしていない。


 ゼノドラグスの手下は私が引き受け、弱いブァルファーレの騎士は、反乱軍の兵士達に任せた。


 大剣の男と斬り結ぶ。


 重い。


 受け止めるたびに腕の骨がきしみ、足元の石畳にひびが走る。


「ちょこまかと…!」


 唸りを上げて迫る横薙ぎを、身をかがめて躱し、懐に飛び込む。


 剣先が、男の鎧の隙間を捉えた。


「ぐあっ!」


 男が膝をつく。ようやく、1人。


 だが、息をつく間もなかった。


「あの助っ人を狙え!」


 裏門の奥から、新たな影が3つ、飛び出してきた。

 いずれも、さっきの男と同じ、ゼノドラグスの手下だ。

 そのうち2人が私に斬りかかり、残る1人は、反乱軍の隊列へと切り込んだ。


「うわぁぁっ!」


「くそっ、強すぎる…!」


 手下が1人加わっただけで、反乱軍の隊列は、あっという間に崩された。


 1人、また1人と、傷を負って倒れていく。


 倒れた仲間を、後ろへ引きずって下がらせる者もいた。


 正門の方からは、ひときわ大きな怒号と、地面が揺れるような爆発音が、断続的に響いている。


 あちらも、激戦のようだ。


 時間が経つにつれて、状況は悪化していく。


 このままじゃ持ちこたえられない。

 ユウナさん。

 早く王女を奪還してくれ……。


 気付けば、20名いた第2部隊は、半数以下になり、さらに数を減らし、残りの反乱軍は3人と私だけになっていた。


 やはり無謀な作戦だったのか?


 マオさんに頼って、全員での正面突破を提案すべきだった…。


 …なんて後悔している場合じゃない。

 少しでも時間を稼ぐんだ!


 剣を持つ手に力を入れ、再度、敵に向かって行こうとした、そのとき。


 遠くから、怒号のような声が近づいてくるのが聞こえた。


 声は段々と大きくなり、地鳴りのように、地面が揺れ始める。


 あれは……?


『俺たちの手で、ブァルファーレを取り返すぞー!!』


 みんな口々に、そう叫んでいた。


 鍬を担いだ農夫、鍋の蓋を盾にした女将、棍棒を握る若者。


 武器とも呼べない物を握りしめた人々が、坂の下から、波のように押し寄せてくる。


 そうか、ブァルファーレの国民達か!

 私達の戦いを見て、立ち上がってくれたんだ!


 200名ほどが駆けつけてくれ、裏手は再び、大混戦となった。


 所詮はただの国民だが、ブァルファーレの騎士達は、そんなに強くない。

 この援護は、素直にありがたかった。


 戦いが進んでいくと、戦場に異変が起こり始めた。


「おい、やめろ!俺達の国を、俺達の手で潰す気か!お前も、毎日うちの店で飯を食ってただろ!」


 国民の1人が、騎士の1人に向かって叫んだ。


 騎士の剣先が、震える。


 その横では、別の騎士が、母親らしき女性に抱きつかれ、立ち尽くしていた。


「……すまない」


 1人の騎士が、剣を下ろした。

 それを合図に、1人、また1人と、騎士達が国民の側へ歩み出ていく。


 国を取り戻そうと必死になる国民達に感化され、ブァルファーレの騎士達も、少しずつこちらの味方になっていった。


 いつしか、数の利は、こちらに傾いていた。


 遠く、正門の方角からも、わあっという歓声が上がるのが聞こえた。


 あちらでも、国民が、騎士達を動かし始めているのかもしれない。


 その後は一気に反乱軍が押し勝ち、裏門を制圧した。


 国民達は裏門を解放すると、王宮へと雪崩れ込んでゆく。


 私は気絶したリガンを抱え、裏門から王宮に入った。中央の広場に行くと、そこにはマオさんとライザス殿、グレン王子がいた。


「グレン王子…!!

なんでここに??」


 キャンプで待機していたはずのグレン王子の姿に、困惑した。


「ジークがけしかけたみたいなのよ」


 マオさんは、呆れたように言った。


「グレン王子の判断で、連れてきた国民は二手に分かれたの。

300人が正門、200人が裏手。

正門の騎士達も、国民の呼びかけで、ほとんど戦意を失ったわ」


 そうか、国民達が急に立ち上がったのは、グレン王子が来たからだったのか!


「お姉様の奪還はもちろんですが、ブァルファーレも、今日、取り戻します。

みなさん、もう少しだけ、力を貸してください」


 グレン王子が、力強く言った。


 さっきまでテントで大人しくしていたグレン王子とは、別人のように覇気がある。


 そう。


 これは、れっきとした王の風格。

 この短期間で、一体何があったのだろうか。


「王子…ご立派でございます」


 グレン王子の成長に感動して、ライザス殿が涙を浮かべている。


 マオさんが、私の腕の中のリガンの額に、そっと手を当てた。


「気を失っているだけよ。すぐ目を覚ますわ」


「…で、そのけしかけた張本人は??」


 マオさんに聞いた。


「また行方不明よ。

グレン王子の話だと、広場までは一緒にいたらしいけど」


 あの人の行動は、本当に理解できない…。

 けど、あの人なら、また何かやってくれる。


 そんな期待が、胸に湧いてきた。


 ユウナさん達は、もう地下牢にたどり着いているだろうか。


「まずは、お姉様を奪還しましょう。

地下牢に行きましょう」


 グレン王子が力強く言うと、ライザス殿と並んで先頭に立ち、私達はその後を追った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。