↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは『勇者』と『魔王』の物語  作者: 東の雲
ヴァルファーレ奪還戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/61

グレンの決意

 グレンはブァルファーレの城下町に足を踏み入れた。


 王国の入り口ではすでに作戦が始まっているらしく、街を行き交う人々が、声をひそめて噂話をしている。


「元騎士団長が、王女様を取り返しに来たらしいぞ」


「ゼノドラグスの配下に敵うわけがない」


「下手に刺激して、俺たちにとばっちりが来たらどうするんだ」


 そんな声が、あちこちから聞こえてきた。


 辺りを見渡すと、街の人たちはジークが言っていた通り、かつての元気を失っているように見えた。誰もが何かに怯えるように肩をすぼめ、コソコソと足早に歩いていく。


 昔のブァルファーレは、あんなに笑顔であふれていたのに。


 それが、あのゼノドラグスたちのせいで……。


 ぎゅっと拳を握りしめる。

 胸の奥から、熱いものがこみ上げてきた。


 僕は、いてもたってもいられなくなった。


 何かをしないと!


 気がつくと、僕は無意識のうちに、街の真ん中にある広場まで来ていた。


 時刻は昼の12時を過ぎたところ。広場には、たくさんの人が集まっている。


 こんなところまで来たけど、何をしたらいいのか分からない……。


 足がすくむ。心臓がドクドクと音を立てる。


 そのとき、ジークの言葉が頭の中に響いた。


『自分で考えて、自分で決断するんだ。

どうしたらいいかじゃない。

自分がどうしたいのかを』


 そうだ。僕はどうしたいんだ。

 答えは、最初から決まっていた。


 僕は大きく息を吸い込んだ。


「みなさん!聞いてください!!」


 精一杯の声で叫んだ。


 広場の喧騒の中に、僕の声が響く。通行人が何人か、何事かと振り向いた。


 手が震える。声も震えそうになる。

 それでも、僕は言葉を続けた。


「僕は…

僕は………

僕は、ブァルファーレ王国の王位継承者、グレン・ブァルファーレです!」


 そう叫んだ瞬間、何人かが信じられないという顔で立ち止まった。


「今、元王国騎士団の人たちが、王族の生き残りである王女、僕のお姉様を救うために、ゼノドラグスの手下と王宮で戦っています。

どうか、皆さんの力を貸してください!」


 無我夢中だった。


 ただ、ありったけの思いを言葉にしてぶつけた。


 広場がざわざわと波立ち始める。人が、1人、また1人と集まってきた。


「どうか。どうか、王宮を今一度、僕たちブァルファーレの国民の手に取り戻すために。

力を貸してください!!」


 僕の声を聞き、広場のざわめきはどんどん大きくなっていく。


 そのとき。


「お前、王族の生き残りなのか??」


 背後から、地響きのような低い声がした。


 振り返ると、身の丈2メートルを超える大男が3人、ノソノソとこちらに歩いてくる。


「こいつはラッキーだ。

見回りに城下町に来てみたら、こんなお宝に出会えるとはな!

王族の生き残りのお前を殺して王宮に差し出せば、俺たちの地位も上がるはずだ!」


 しまった!ゼノドラグスの手下たちか……!


 ライザスたちの奇襲作戦で、敵は全員王宮に集まっていると思っていたのに!


 血の気が引いていく。

 広場の空気が、一瞬で凍りついた。


「おい!ブァルファーレの愚民ども、よく見ておけ!俺たちに逆らうとどうなるのか!」


 大男の1人が、巨大な斧を頭上高く振り上げた。


 陽の光を受けて、刃がぎらりと光る。


 逃げられない。


 僕は恐怖のあまり、ぎゅっと目を閉じた。


 その瞬間。


「おいおいおいおい。せっかくいいとこなのに、邪魔すんなよ」


 この声は……!


 聞き覚えのある、あの気の抜けた声。


 おそるおそる目を開けると、僕の目の前に、ジークが立っていた。


 ジークは一瞬のうちに、大男3人を魔法で吹き飛ばした。


 ドガァッ!と轟音が響き、巨体が宙を舞って、広場の向こうへと転がっていく。

 広場が静まり返った。


「グレン。続けろ。

お前の気持ちを、思い切りぶつけてみろ」


 ジークが振り向き、僕に優しく微笑んだ。


 ジークが、初めて僕の名前を呼んでくれた。


 その瞬間、胸の奥が燃えるように熱くなる。もう、心の高鳴りを抑えきれなかった。


 怖さは、もうどこにもない。


 僕は一歩前に踏み出し、腹の底から叫んだ。


「みんな!僕は今から、ゼノドラグスの支配からブァルファーレを奪還する!!

力を貸してほしい!!

かつての幸せだった頃を!ブァルファーレを、みんなの手で取り戻そう!!」


 胸の高鳴りを吐き出すように大声で叫び、腰に差した剣を抜いて、空高く掲げた。


 一瞬の静寂。


 そして次の瞬間、この言葉を待っていたかのように、広場に集まった国民たちが、地鳴りのような歓喜の大声を上げた。


「うおおおおおおおっ!!」


 国民の声は大きな振動となり、僕の体にビシビシと伝わってきた。


 鳥肌が立つ。目頭が熱くなる。


 僕の言葉が、みんなの心に届いたんだ。


 僕は広場の群衆を引き連れて、王宮の入り口へと向かった。


 広場にいた人たちが、次々に僕の後を追ってついてくる。


 王族の僕が立ち上がったという噂は、一瞬のうちに街中へ広まった。


 僕が王宮に向かって歩いていくうちに、後ろにはどんどん、武器を手にした国民たちが集まってくる。


 鍬や棍棒を握りしめた者、錆びた剣を引っ張り出してきた者。誰もが、その目に再び光を宿していた。


 そして、僕が王宮に着いたころには、国民は500人を超えていた。


 これでもまだ、数の利はあちらにある。

 それでも、もう迷わない。


 僕は王宮の門をまっすぐに見据えながら、奪還の決意を、改めて強く胸に刻んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。