終章 守の宮にて
番外です。とても短いのですが、やはり抜かせないので。
「タチバナの乙女が定まったとか?」
今代の守は微笑んだ。
「はい。候補としては橘の正嫡が参るとのこと。」
「おや、それも重畳。」
正嫡の難攻不落ぶりは、守の宮にも届いていた。能力には問題はないが、町中の娘と引き合わせても決まらない。いっそ、同性と引き合わせてはと心配される始末(一応、記録はある)。
「乙女はいずこに隠れていたのやら?」
「例の叉始祀より入られた、と」
ぴく、と眉が跳ねた。
「----芳の、」
だがすぐに平静な表情に戻り、微笑む。
「はい。橘正の末裔だということです。」
「生き延びたこがあったとは、まさしく重畳重畳。」
手の中の扇が、ひらひらと寿ぎを送るように揺らされた。
「花香にしても実にしても、橘の涼やかさがなくては競も寂しいからね。」
くもりない黄色に色づいた銀杏の葉が、風に乗って舞い上がっていく。それを横目に捉えつつ、守は懐かしい何かへと呟いた。
「此度も、時じく香久の菓子は垂涎の的となろうねえ。」
これにて完結とします。
衛心が押しかけて気絶したあたりとか、紫子が「祭りの前に転校する」といった理由(舞合わせをして不調)とか、「おひめさまが、いない」と紫子が騒いだという台詞は「紗子がいなくなってて頭にくる、ではなく、紗子がいないどうしよう」が真意とか、崩壊の日に香子を護ったひとの話(連れていけと言われた人)とか、紗子(香子)に施されたいくつもの目くらましと守りの手段(虫よけのバッグ。さりげなく、級友にまぜ込まれた時鳥。毒見のために先に取る食事。)などなど、書こうと思ったことはまだありますが、冗長になりそうなので、ひとたび置きます。




