表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わから聖女~いいんですか? 神の声が聞こえるわたしを本当に追放しちゃうんですか?~  作者: 藤村灯
異端審問? 敬虔な聖女のわたしにですか?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/20

第16話 代わりに弁明するっていうのは、違うんじゃないですか?

「我々の完敗(かんぱい)でございます」


 歩み寄るソーニャの前で、 僧衣(そうい)が汚れるのも構わず、ピュルケは見事な土下座(どげざ)披露(ひろう)した。


「んー、そういうの見慣(みな)れちゃったからなぁ」


 首を(かし)げるソーニャの周囲で、無事だった2体のゴーレムが、文字通り人形のようにくずおれる。


「ゴーレムと魔晶石(ましょうせき)入手経路(にゅうしゅけいろ)(もう)せません。(かさ)ねて虫の良いお願いではございますが、妹の、ペカテの命だけはお目溢(めこぼ)しください。多少、奇矯(ききょう)な振る舞いは致しますが、(あつ)い信仰心をもち、根は純粋な娘です」

「殺さないって」

寛大(かんだい)なお言葉、感謝の念に(たえ)えません。これで心置きなく()くことができます」


 ピュルケは身を起こし(ふところ)からナイフを取り出すと、ためらいもせず(のど)を突いた。


「だから、殺さないってば」


 体にめり込む(はがね)の冷たさと、(あふ)れる血の味まで感じたのに、痛みを感じない。

 呆然とするピュルケの目の前には、怒っているようにも、泣き出しそうにも見える、微妙な表情のソーニャが(ひざまづ)いている。


「こういうの止めよう? 分かってくれたならもういいよ」


 ソーニャが投げ捨てるナイフを見て、残り少ないマナで(いや)してくれたのだと(さと)る。

 ピュルケは見開いた目から流れる涙も(ぬぐ)わずに、壊れた馬車にめり込んだままのペカテのもとに走った。


「どうにも調子狂っちゃうな――」


 立ち上がり、倒れている異端審問官(いたんしんもんかん)たちを(いや)そうと周囲を見渡したソーニャは、見回す動作のまま力なく(くず)()ち、意識を失った。


        §


 レーネを解放(かいほう)した異端審問官(いたんしんもんかん)たちが引きあげた後も、ソーニャは意識を取り戻さなかった。

 マナ切れのため、いつものように傷が自然に()えることはない。


「れ、レーネが捕まったせいで……ぴ……ぴえ……ソーニャ様ぁあ!」


 ソーニャに(すが)りつき、大泣きしていたレーネだったが、シリルの治癒(ちゆ)奇跡(きせき)でみるみる傷が(ふさ)がるのを目にし、ひとまず落ち着きを取り戻した。

 だが、体力が回復しないせいか、ソーニャの意識は戻らないままだ。


『マナが空っぽになるような無茶(むちゃ)を、続けてやらかしたからな』


 (つぶや)くフテネルを、ソーニャを膝枕(ひざまくら)(いや)していたシリルは、キッと(にら)みつける。


無茶(むちゃ)見過(みす)ごしたのは貴女(あなた)でしょう! 貴女(あなた)と違って、この子は人間ですのよ!?」

『なんだと!?』


 何か言い返そうとしたフテネルだったが、(さわ)ぎにも目を開けないソーニャに視線を落とし、(くちびる)()むと、そのまま姿を消した。


「シ、シリル様。ソーニャ様(うご)かしても大丈夫(だいじょぶ)そなら、すぐに村まで運びましょう! あいつら以外の襲撃(しゅうげき)あるかもだし? それとも、襲撃(しゅうげき)(そな)えるなら、村より伯爵(はくしゃく)山城(やましろ)のほうが良さげ?」


 シリルとフテネルの口論(こうろん)に、口を挟めずにいたレーネだったが、村と城との道を見比(みくら)べ、おずおずとシリルに問いかける。


「意識が戻らないのは、おそらく急激(きゅうげき)なマナ切れが原因でしょう。(いや)したとはいえ、(きず)具合(ぐあい)も心配です。あの村では十分な治療(ちりょう)(ほどこ)せるとは思えません。それに、今アメルハウザー伯爵(はくしゃく)の城へ運び込んでは、いらぬ誤解(ごかい)(かさ)ねるだけです」


 シリルは、ソーニャの顔から目を()らさずに、


「この子はレスタリア家で(あず)かります」


 そう言い切って、横たわるソーニャを抱きあげようとし、果たせず体勢(たいせい)(くず)した。


「シリル様ぁ……レーネ、手伝(てつだ)おうか?」


        §


 馬車の中、シリルはずっと膝枕(ひざまくら)で寝かせたソーニャの寝顔(ねがお)見詰(みつ)めている。

 同乗(どうじょう)するレーネも心配でたまらなかったが、異端審問官(いたんしんもんかん)たちに人質として使われた手前(てまえ)、すごく居心地(いごこち)が悪い。


 レーネにも、依存性(いぞんせい)のあるマナドリを売り付けていた(うし)(ぐら)さはある。だが、(かせ)いだ金をレーネ自身が使い放蕩(ほうとう)するのではなく、マナドリの開発製造費(かいはつせいぞうひ)や、レーネ自身が育った孤児院(こじいん)へ回していたことを、ハスレの町の者はみな理解(りかい)している。


 金づる(あつか)いしていた聖堂騎士団(せいどうきしだん)たちでさえ、依然(いぜん)レーネに対する好感度(こうかんど)は高いままだ。異端審問官(いたんしんもんかん)たちに対しても抵抗(ていこう)してくれたが、ペカテひとりによって、ことごとく叩きのめされた。

 ソーニャの活躍(かつやく)で、ピュルケたち異端審問官(いたんしんもんかん)退(しりぞ)いたが、誰の手引(てび)きかは分からないまま。


 せっかくソーニャがやり直せるチャンスを与えてくれたのに、このままレーネがハスレの町に戻ってしまっては、周囲の人たちを巻き込む危険性が残っている。


 レーネは、シリルの(ひざ)で眠るソーニャの顔を(ぬす)み見て、そっとため息を()いた。


「マジ()みそ。ソーニャ様ぁ……はやく目を覚ましてよぉ」


        §


 夜通(よどお)し馬車を走らせトラーシャのに到着(とうちゃく)すると、シリルはレーネの手を借り、こっそりレスタリア家の自室へソーニャを運び込み、ベッドに寝かせた。

 シリルの両親はソーニャのことを、シリルの良き学友としても、第666代聖女としても見知(みし)ってはいるが、いざという時巻き込まない体裁(ていさい)(ととのえ)えておきたかった。


「レーネ、私が出かけている間、ソーニャのお世話、(たの)めますかしら?」

「かしこまりィ! 聖女様のお願いで聖女様のお世話とか、マジ上がる!」


 (たよ)りにされたレーネは、名誉挽回(めいよばんかい)のチャンスとばかりに(ひとみ)(かがや)かせる。

 レーネのノリに一抹(いちまつ)の不安を抱えながらも、シリルは湯を使い、旅の汚れを落とし身なりを(ととの)えると家を出た。

 向かうは西方大聖堂(せいほうだいせいどう)


 トラーシャには現在、3人の大聖女(だいせいじょ)の一人、クローディッドが滞在(たいざい)している。

 聖堂騎士団(せいどうきしだん)に同行し、北方(ほっぽう)での魔族討伐(まぞくとうばつ)から凱旋(がいせん)したばかりだ。

 事前に面会(めんかい)の申し出を済ませていたため、シリルはすんなり来賓室(らいひんしつ)に通される。


「やあ、君が新しく認定(にんてい)された聖女の一人、シリル君か。若い子が自ら会いに来てくれるのは嬉しいよ」


 クローディッドは大仰(おおぎょう)に手を広げ、にこやかにシリルに歓迎(かんげい)の意を表す。


 シリルを若い子などと言う彼女自身もまだ20代前半。男物(おとこもの)の純白の僧衣(そうい)を着こなし、長い手足で芝居(しばい)がかった仕草(しぐさ)を見せる。

 舞台(ぶたい)に立つ俳優(はいゆう)のような洒落者(しゃれもの)ぶりだが、凛々(りり)しくも優美(ゆうび)な顔立ちで、修道女たちの間でも人気が高い。(ひたい)にかかるひと(ふさ)の前髪を除けば、(ゆる)やかに波打つ金髪を、男性のように短く整えている。


「大聖女なんて肩書(かたがき)があると、煙たがられることが多くてね」


 気さくな様子で案内役の修道女(しゅうどうじょ)を下がらせると、手ずからお茶を()れシリルに(すす)める。


就任(しゅうにん)挨拶(あいさつ)がてら、親睦(しんぼく)を深めに来てくれただけでも大歓迎(だいかんげい)なんだけどね」


 (かた)い表情を浮かべたままソファに腰を下ろさず、お茶にも手を付けないシリルに肩を(すく)めてみせると、クローディッドは長い(あし)を組み、ソファに深く身体を沈めた。


「話があるんだろう。今年西方で認定されたもう一人の聖女。面白いほうの子の話かな?」


 クローディッドの言葉に、シリルの(まゆ)がピクリと動いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ