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わから聖女~いいんですか? 神の声が聞こえるわたしを本当に追放しちゃうんですか?~  作者: 藤村灯
異端審問? 敬虔な聖女のわたしにですか?

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13/20

第13話 親友が会いに来てくれるって本当ですか?

「お、あれが伯爵(はくしゃく)さまのお城かー!」

「ふふん。わたしが案内してあげる。ワグルーのお部屋も選ばないとね」


 (ふもと)から木立越(こだちご)しにアメルハウザー伯爵(はくしゃく)居城(きょじょう)が見える。

 感嘆(かんたん)の声を上げるワグルーに、アリーセは(ほこ)らしげに胸を張ってみせた。


「アリーセ、わたしちょっと村に用事があるから、ワグルーと一緒に城に戻っててくれるかな?」

「えぇー! 久し振りにママとお城でゆっくりできると思ったのにー」

「お父さんの様子見なきゃでしょ。それに、わたしは村長に会いに行くんだよ?」

「うぇえ……」


 苦手な人物の名前を出され、アリーセは渋々(しぶしぶ)とではあるが引き下がった。

 アリーセとワグルーなら、森を突っ切り(がけ)を登って近道もできるが、買い込んだ食料やおみやげがあるため、ソーニャは荷馬車(にばしゃ)に料金を上乗せし、つづら折りの山道を進んでもらう。


『マナの流れに変化があるはずだからな。伯爵(はくしゃく)の様子に変化があったら教えてくれ』

「分かったよ、フテネル。ママ、早く帰ってきてね!」


 馬車の荷台から手を振るアリーセとワグルーを見送ると、ソーニャは村への道を歩き始めた。


         §


「申し訳ございません!!」


 ソーニャが帰還(きかん)挨拶(あいさつ)をし、魔晶石(ましょうせき)の話を切り出す前に、村長はスライディングの勢いでソーニャの前にひれ伏した。


「まだなにも言ってないけど……村長さん、また何か申し訳ないことしたのかな?」

「いえいえ滅相(めっそう)もない。不始末(ふしまつ)が判明する前に謝罪(しゃざい)したほうが、受ける(ばつ)も軽いと思いまして」

「なんか傷つくな。(ばつ)もなにも、わたしは女神さまの教えを()いているだけで――」

『口だけじゃなく手を出すから、(おそ)れられるんだろうが』


 人の悪い笑みを浮かべからかうフテネルに、ソーニャは(こぶし)を振り回す。

 (おび)えつつ冷や汗を浮かべながら様子を(うかが)っていた村長は、(ふたた)(ひたい)を床に()()けた。


「そんなかっこじゃ聞きにくいよ。村長さん、この辺で(あや)しい人が出入りしたり、何に使われてるか分からない建物あるの知りませんか?」


 村長夫人が(ふる)える手で出してくれたお茶を飲みながら、ソーニャは(たず)ねる。


(あや)しい? (あや)しいですか……」

『なんか「お前ら以上に(あや)しいやつは見たことない」とか言いたそうだな』


 ソーニャの機嫌(きげん)(そこ)ねないように、慎重(しんちょう)意図(いと)(はか)りつつ記憶を(さぐ)っていた村長の顔が、不意に青ざめ、カップを(にぎ)る手が(ふる)えだした。


「も、申し訳ございません!!」

「今度はなにかな?」


 (ふたたび)びの土下座(どげざ)若干(じゃっかん)引きつつ、ソーニャは(たず)ねる。


「北の森に向かう旅人の一団を見たとの話を、何度か村人から耳にしたことがあります。ずいぶん以前からの話で、特に騒ぎが起こるでもないので、気にせずにおりましたが」

「何かあるのかな?」

「何がなくとも伯爵(はくしゃく)さまの領地(りょうち)ですから、(とが)めるとまでは行かずとも、()(ただ)すべきではありました!」

『「伯爵(はくしゃく)()めてもそれはそれで」くらいは考えてやがったな、この反応は』


 ソーニャは村長を立たせ(れい)を言うと、北の森へと向かった。


         §


 ハスレでの経験から、ランタンやロープなど探索(たんさく)の準備していたソーニャだったが、結果は空振(からぶ)りに終わる。


「なんかあったのは確かなんだけどねぇ」

『先に手を打たれたって感じか……』


 辿(たど)るほどの不自然なマナの流れはなかったものの、人の行き来した痕跡(こんせき)は見つけた。

 目立たぬよう(あと)を消した様子があったことから、フテネルと手分けして周囲を調べると、岩肌(いわはだ)に新しい崩落個所(ほうらくかしょ)を見付けた。


()って調べるのは面倒だねぇ」

『何かがあったって証拠(しょうこ)を見つけたようなもんだから、良しとするか』


         §


 村へと戻るソーニャは、トラーシャへ続く道に急ぎの馬車を目にし、足を止めた。

 この辺りを往来(おうらい)する荷馬車(にばしゃ)でなく、箱馬車(はこばしゃ)なのでやけに目立つ。


「あれ、シリルの家の紋章(もんしょう)が付いた馬車だ。おーいシリルー、久し振りー!」


 ソーニャを見付けたシリルは、窓から身を乗り出し、箱乗(はこの)りになり何か叫んでいたが、馬車がソーニャの近くまで来ると、転がるように飛び降り、()()ってきた。


「ソーニャ!! 貴女、何やらかしてますの!?」


 数か月ぶりの再会に、熱烈(ねつれつ)なハグを受けるものだと期待して、()れながら両手を広げていたソーニャは、シリルに助走をつけての拳骨(げんこつ)を落とされ、頭を抱えてしゃがみこんだ。


「えぇぇぇ……理不尽(りふじん)暴力(ぼうりょく)

「フテネル!! あ、あな、貴女(あなた)が付いていながら……いえ、貴女(あなた)を少しでも信用した私が馬鹿でしたわ!!」

『……あたしもかよ?』


 フテネルを指さし(わめ)くシリルの声はいつもより固く、顔からは血の気が引いている。


「ソーニャ。貴女(あなた)、城を(かま)えて魔族(まぞく)(したが)えているという話は本当なんですの?」


 息を(ととの)えたシリルが真顔(まがお)で問いかける。

 いつにない(げき)おこで、声が低くなっているシリルに(おび)えながら、ソーニャはアリーセやワグルーの顔を思い浮かべる。


「アメルハウザー伯爵(はくしゃく)のお城に厄介(やっかい)になってるだけだよう。魔族(まぞく)のアリーセやワグルーに(なつ)かれてるけど、(したが)うってほど、いつも言うこと聞いてくれる訳じゃあないし……」

聖堂騎士団(せいどうきしだん)とやり合ったというのは? まさか、教団(きょうだん)施設(しせつ)襲撃(しゅうげき)したって話まで、本当じゃありませんわよね!?」


 これ以上シリルを怒らせない正解(せいかい)を求めて、ソーニャはちらちらフテネルに視線を投げる。


『確かに聖堂騎士(せいどうきし)ともいざこざがあったが、理由(りゆう)あってのことだ。シリルも教団の信者全員が品行方正(ひんこうほうせい)でないことは、身に()みて分かってるよな?』

「一つ二つじゃこうはなりませんの! 破門同然(はもんどうぜん)で追放された聖女であるソーニャが、あれこれやらかしてることが問題だと言っておりますの!」

「あの……シリル? 襲撃(しゅうげき)したって話、どこのどの教会のこと?」

「心当たりが(いく)つもあるってことですの!?」


 恐るおそるのソーニャの問いに、めまいを感じ、シリルは深いため息とともにこめかみを(おさ)える。


「シリル、村はすぐそこだから、落ち着けるところでゆっくり話そ? お(とま)りできるんだよね? じゃあ、このまま伯爵(はくしゃく)山城(やましろ)へ行く? ちょっと虫は出るけど、シリルのベッドには(もぐ)()まないようにするから――」

「ああもう、貴女(あなた)って人は! とにかく私と一緒に来なさい! 大聖女様(だいせいじょさま)には、私からもお口添(くちぞ)えしてあげるから!」


「やった! 大聖女様(だいせいじょさま)に会えるの!?」

『もうそんなに大ごとになってるのか?』


 温度差(おんどさ)の激しい反応を返す二人に、シリルは開けたままの馬車の扉を指し示す。


「そうなる前に根回(ねまわ)しするんですの! 大ごとになってからでは遅いでしょ!!」


 ソーニャに手を()()べていたシリルだったが、(ひび)いてくる物音に気付き、トナルの町に続く街道(かいどう)へと視線を(うつ)した。

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