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わから聖女~いいんですか? 神の声が聞こえるわたしを本当に追放しちゃうんですか?~  作者: 藤村灯
すごいです! 飲めば元気になるマナ水ですね!

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11/20

第11話 マナを吸い取っちゃうって本当ですか?

 倒れていた聖堂騎士(せいどうきし)たちが意識を取り戻し、動けない者を運び引き上げた後。ソーニャたちは教会に招かれ、レーネから話を聞くこととなった。


「ここがマナの泉だったのはホント。聖魔戦争(せいませんそう)前からニクスやニクセが()みつき、泉守(いずみも)りに棲家(すみか)を守ってもらう代わりに、マナの豊富な水を分けてくれてたの。今はもうこの子だけになっちゃったけど」


 レーネは小瓶(こびん)に戻ったアシュレと目を合わせる。


「レーネが聖女候補ってのは()った話ね。薬草(やくそう)鉱石(こうせき)の勉強して、年々効き目の薄くなるマナ水の代わりを作ろうとしただけ」

『あたしが見えるんだから、お前にもそれなりの力はあるはずだぞ。聖女になれるかは知らんけど』


 フテネルに()められたのだと(さと)り、レーネは(うつむ)いてもじもじする。


「お婆ちゃんにあげるマナ水には、ちゃんとマナを込めてたんでしょ。マナドリのほうはやりすぎだったけど」


 水汲(みずく)み場での騒ぎの後、再び腰の曲がった老婆に尻を叩かれ、「レーネちゃんを(いじ)めるんじゃないよ!」と(しか)られたのだ。


「マナドリの(かせ)ぎでも、薬草や鉱石を買い込んだ分にまだ()りなくって。追放されたとはいえ、聖女の資格を持つ人に知られたら、レーネもうお(しま)いかもって思って」

依存性(いぞんせい)の強いのはまずいけど、疲労回復(ひろうかいふく)の飲み物なら、うちにも(おろ)してほしいな」

「マジ? アリ()りかな?」


 そろばんを(はじ)くメルに、レーネは顔を(かがや)かせる。


「う、うーん? 国が禁止してる薬物でなければ、いいのかなって」

「パねぇ、マジアガる! ソーニャ様(とうと)みの(きわ)み。マジ聖女!!」


 よく理解できないリスペクトと(とも)首元(くびもと)に抱き着かれ、キスの雨を受けながら、ソーニャは曖昧(あいまい)な笑みを浮かべる。


『この町の水源(すいげん)は? 昔から精霊が()みついてて、今でも一体とはいえ()んでるんだ。調べる価値はあるんじゃねーか?』


        §


 ハスレの南にそびえる山脈(さんみゃく)。メルを町に残し、レーネの案内で向かった山肌(やまはだ)に、ソーニャはマナの()い場所を見つけた。

 木立(こだち)に隠れ、目視(もくし)ではしかと確認できないが、マナを(たよ)りに探すソーニャたちには、人工の建造物(けんぞうぶつ)らしきものが存在するのが分かる。


「あそこ、何かある!」

『ありゃ聖堂(せいどう)か? なんであんな所に』


 生まれたときからハスレで育ち、教会に関わりの深いレーネも、知らないと首を()る。


「レーネは聖堂騎士の人たちから、山の施設(しせつ)で任務が――なんて話聞いたことないし」

異教徒(いきょうと)の教会だったりして?」


 アスタリア王国で聖堂を(かま)えるほどの教団を、ソーニャはフェルシア教団以外で見たことがない。東方や南方、あるいは魔族領(まぞくりょう)まで広げれば、ありはするのだろうが。


『アリーセがいたら分かったかもな』


 巧妙(こうみょう)に隠されてはいるが、人が通った形跡(けいせき)はある。ふわふわと(ただよ)うフテネルや、体力お化けのソーニャについて行けず、すぐにへたり込んだレーネを背負い、峻険(しゅんけん)山肌(やまはだ)を登る。

 探し当てた背の低い聖堂のような構造物からは、山肌を(けず)()られた洞窟(どうくつ)が続いている。


「この奥かな?」

「こわいよ~」


 漆黒(しっこく)の闇に(おび)えたレーネが、ソーニャの首筋にしがみつく。

 ソーニャも見えてはいないが、フテネルの先導(せんどう)(たよ)りに道なりに下り続ける。

 どれくらい歩いただろう。やがて巨大な石造(いしづく)りの扉に行き当たった。


秘術師(ひじゅつし)魔術錠(まじゅつじょう)か? 見たことない代物(しろもの)だな』

「いまどき魔術ってマジありえない」

『お前なー。魔術師なんて、ほんの100年前にはごろごろいたんだぞ?』

「いないから秘術師(ひじゅつし)呼ばわりなんだよねえ」


 魔術錠(まじゅつじょう)の放つ(あわ)い光のおかげで、レーネに軽口(かるくち)を叩く余裕が戻る。

 ソーニャはレーネを下ろし、マナを込めた拳で(じょう)をぶん殴った。


「いったたた……やっぱ無理か」

『馬鹿。そのための(じょう)だろ馬鹿』

「2回目の馬鹿は余計かなって」


 ソーニャは拳をさすりながら、しばらく門扉(もんぴ)を眺め考えていたが、


「これならどう!?」


 扉の蝶番(ちょうつがい)にあたる岩肌(いわはだ)を、ありったけの力を込め殴り付けた。


『馬鹿だ……馬鹿がいる。だが、(じょう)を掛けたやつは、こんな馬鹿まで想定(そうてい)してなかったようだな』

「ソーニャ様マジリスペクト」


 少しづつ、確実に(けず)られる岩肌を目にし、レーネはぽかんとした表情を浮かべている。

 ごとりと重い音を立て扉が(かたむ)くと、人がどうにか(くぐ)れる程度の隙間(すきま)が開いた。


「よし、行ってみよう!」


 岩肌に付いた生々しいソーニャの血の(あと)を凝視し、今度こそレーネは言葉を失い(だま)り込む。


 中は自然の物らしい空間が広がっており、足元には水が()まり、地底湖(ちていこ)ができている。山に()った雨が一度集まり、ここを起点に伏流水(ふくりゅうすい)や川となり、山裾(やますそ)に流れているようだ。


「すご~い!!」


 ソーニャの目を(うば)ったのは、湖面からそびえ立つ、見上げるほどに巨大な、水晶に似た結晶体(けっしょうたい)


『これは……魔晶石(ましょうせき)か? こんなサイズ、天界(てんかい)でもなけりゃ――おいソーニャ、うかつに近寄るな!』


 めまいを感じふら付いたソーニャに、フテネルが警告(けいこく)を放つ。


『マナは本来循環(じゅんかん)するものだ。余剰(よじょう)になるほどの土地でなければ、自然にこんな大きな結晶ができるはずもない』

「いったい誰が……あ、ソーニャ様!?」


 ふら付きながら近寄ろうとするソーニャは、あっけなく水面に向かい落下する。幸いなことに、水深(すいしん)は浅すぎず深すぎず。ソーニャはそのまま立ち上がり、水に()かりながら、ふらふらと魔晶石(ましょうせき)に歩み寄る。


『馬鹿! 離れてろって。これだけ大きいと、お前でもヤバいぞ』

「だいじょうぶ。気を抜かなきゃ、持ってかれる程ではないから」


 周囲を飛び回り、警告を続けるフテネルに笑って見せると、


「誰が作ったか分からなくても、少なくともレーネちゃんの泉がマナ()れを起こした原因は分かったよね」


 魔晶石(ましょうせき)の元に辿(たど)()いたソーニャは、軽く足を開き構えると、


()()()()なきゃ」


 渾身(こんしん)の力で魔晶石(ましょうせき)を殴りつけた。

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