表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わから聖女~いいんですか? 神の声が聞こえるわたしを本当に追放しちゃうんですか?~  作者: 藤村灯
すごいです! 飲めば元気になるマナ水ですね!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/20

第10話 泉の精霊と対決ですか?

「マジキモっ。レーネちゃん特製(とくせい)のマナドリ、サゲにきたってワケ?」


 白い修道服(しゅうどうふく)を身にまとった、12歳くらいと見える少女。

 長いプラチナブロンドに青い瞳が印象的(いんしょうてき)だが、不機嫌そうに目を細め、首を(かし)げている。

 修道服は聖女の儀礼服(ぎれいふく)()したように改造されているが、(たけ)は短くスリットは深く、白いタイツに包まれた細い(あし)大胆(だいたん)露出(ろしゅつ)している。


『良かったな。ソーニャだけが露出狂(ろしゅつきょう)じゃなくて』

「わたしのは仕事着(しごとぎ)だよう!」


 レーネの視線が頭上(ずじょう)に向けられ、細めていた目が大きく見開かれる。


「オバサン、あんたひょっとして、第666代聖女?」

「あー、ママの次はオバサン呼ばわりだよ……」

『なんだ、あいつ。あたしが見えるのか』


 興味深(きょうみぶか)げに見下(みお)ろすフテネルから視線を外し、レーネはソーニャに指を()()ける。


「知ってるわよ追放聖女(ついほうせいじょ)! どうせこのだらしない胸で、(えら)いジジイを(たら)()んで認定させたとかでしょ? マジありえないんですけど。本物の聖女なら追放されるようなやらかし、大聖女様(だいせいじょさま)……いえ、女神フェルシアが放っておかないんだから!!」

「逆なんですけど。わたしの胸を(つか)んだ(えら)い人が、破門(はもん)できない腹いせに、追放って言い出したんだけど――」


 事情を知っているなら話せば分かってもらえると思ったソーニャだったが、レーネには何か別方向(べつほうこう)の思い込みがあるようだった。


『ひゃははははッ! 確かに。フツーはありえないやらかしだもんな!』

「もう、ちょっとは反省(はんせい)したんだから! フテネルはメルちゃん守ってて!」

「ウザっ! こいつやっちゃって!!」


 周囲を取り囲んだ騎士たちが()りかかってくる。

 最初こそ足止(あしど)め狙いや牽制(けんせい)での捕縛(ほばく)狙いだったが、ソーニャが下手な牽制(けんせい)程度ではかわしもせず、完全に見切られていることに激昂(げっこう)し、すぐに本気の斬撃(ざんげき)に切り替わる。


本気(ほんき)っていうより正気(しょうき)じゃない感じだね」


 聖堂騎士たちは、血走(ちばし)った目で剣を振り回す。おかげでフテネルがあえて意識を()らさなくても、メルは物陰(ものかげ)に隠れ、安全を確保できたようだ。


「どうせそのオバサン、ちょっと()ったくらいじゃ死なないから! マジメにやってよね!」

「この状態じゃ()()()()()のも無理かな。手早(てばや)く眠ってもらおうか」


 レーネの(あお)りに騎士たちは息を荒げて剣を振る。ソーニャは連携(れんけい)の取れない大振りを苦もなくかわし、軽装鎧(けいそうよろい)隙間(すきま)を狙った強烈(きょうれつ)な一撃で、次々と騎士たちを(しず)めてゆく。


「このオバサン(くさ)っても聖女だし。ここで黙らせないとレーネが終わっちゃう。ありえないんですけど? ……アシュレ、やっちゃって!」


 ソーニャとフテネルに(せわ)しなく視線を走らせていたレーネが、小さな試験管(しけんかん)をソーニャに投げ付け、涙目で(さけ)ぶ。


「お!?」


 狙いを(それ)れた試験管(しけんかん)に構うことなく、ソーニャは最後の騎士の斬撃(ざんげき)()けようとするが、足元を取られ体勢を(くず)す。かわせないと判断し、踏み込んで左手で受けたソーニャは、喉元(のどもと)に右の貫手(ぬきて)を打ち込み、騎士を悶絶(もんぜつ)させる。


 足元の違和感に目を走らせると、割れた試験管(しけんかん)から(こぼ)れた少量の水が、ソーニャの足を拘束(こうそく)しながら蛇のように()い上がって来る。


『水の精霊(せいれい)ニクセか?』

「本物の精霊なんて見たことないでしょ? マナドリ(だよ)りの騎士なんかより、ずっと強いんだから!」


 レーネが次々放り投げるマナ水を取り込み、水の精霊――アシュレはソーニャを拘束(こうそく)する触手(しょくしゅ)を増やしながら、やがて水汲(みずく)み場へとたどり着く。

 噴水(ふんすい)の水が派手に()き上がり、美しい女性の姿を取る。


「うわぁ。キレイだねえ」


 場違いに感嘆(かんたん)の声を上げたソーニャは、水の触手(しょくしゅ)にごぼう抜きに引き抜かれ、水汲(みずく)み場へと叩き落される。


「『ソーニャ!!』」


 メルが助け出そうと()()るのを、フテネルは()(とど)める。


「あひゃ❤ やめといたほうが良いよ。怒ったアシュレ相手に、人間が(かな)うはずないから」


 水面(みなも)煮立(にた)ったように荒れている。嘲笑いながらのレーネの忠告通り、いま水汲(みずく)み場に近づけば、ソーニャと同じくアシュレの手で、水の中に引きずり込まれてしまうだろう。


「ざーこ❤ よわよわじゃない。レーネのやることチクったりしなきゃ、許してあげてもいいけど?」


 足をつけば腰程度の深さのはずなのに、ソーニャは藻掻(もが)くばかりで上がってこない。


「ほらがーんばれ❤ がーんばれ❤ 早くしないと(おぼ)れちゃうよ?」


 手拍子(てびょうし)(あお)っていたレーネだったが、とっくに(おぼ)れたはずのソーニャが水面を割り立ち上がるのを目にし、口を開けたまま固まる。


『水場で水の妖精が無敵なのは、(さわ)れないからだ。残念だったなクソガキ。マナの(かたまり)みたいな存在なら、ソーニャは(つか)めるし(なぐ)れるんだよ!』

「そんな……ズルい!」


 目が()れ、マナの濃度(のうど)で見分けられるようになったソーニャは、水の触腕(しょくわん)(さば)き、引き千切(ちぎ)り、拘束(こうそく)()いて行く。

 水中でやったように、アシュレが口から触手(しょくしゅ)()()み、(おぼ)れさせようとしても、ソーニャはマナを吸収し、(せき)()み、えづきながらも水を()きだす。


 失ったマナを補給(ほきゅう)すべく、アシュレは無数の触手(しょくしゅ)を振り回し、マナ水の(びん)を割るが、(わず)かばかりのマナでは、ソーニャに(けず)られる量に遠く(およ)ばない。

 (あば)れる触手が、慎重に()けていた褐色(かっしょく)(びん)を割る。


「アシュレ、ダメ!!」


 (わず)かに動きを止めたのち、触腕(しょくわん)は次々褐色(かっしょく)(びん)を割り、マナドリを体内に取り込む。


 ソーニャに押され、少女くらいのサイズになっていたアシュレは、虹色(にじいろ)(かがや)きを放ち、触手の数と(するど)さが増す。

 よけきれず(はだ)衣装(いしょう)を切り裂かれるソーニャ。(かがみ)のような瞳に(かす)かな笑みを浮かべ、構わず間合いを詰める。


「聖なるかな。俗世(ぞくせ)(けが)れを捨て、女神フェルシアに抱かれなさい」

「やめて! アシュレを殺さないで!」


 泣きながら()()るレーネも、無数の触腕(しょくわん)に襲われ、切り裂かれる。


()(あらた)めなさい――」

『ソーニャ!』


 フテネルの呼びかけでソーニャの瞳に光が戻る。

 だが右の貫手(ぬきて)は止まることなく、アシュレの胸部に()()さる。


「ああっ……」


 水汲(みずく)み場まで辿(たど)()いたレーネの目の前で、アシュレは色を失い(くず)れ落ちる。

 ぐしゃぐしゃの泣き顔のレーネに、歩み寄り(こぶし)を突き出すソーニャ。


「ひゃん!」


 悲鳴を上げ顔を(かば)ったレーネが、こわごわ目を開けると、突き出されたソーニャの(てのひら)の上には、甘い異臭を放つ(かたまり)()せられている。


「エナドリの薬効成分(やっこうせいぶん)。すごいね、ひとりで調合(ちょうごう)したの?」


 にっこり微笑(ほほえ)むソーニャの(となり)に、ずいぶん背丈(せたけ)(ちぢ)んだアシュレが顔を出す。


「アシュレ!!」

「お婆ちゃんに(めん)じて、()()()()はここまでだ、よ……?」


 ソーニャの視線が、へたり込んだ自分の足元に向けられているのに気付き、レーネは初めて自分の粗相(そそう)に気付く。


「ちょ、ナニ勘違(かんちが)いしてんの! こ、これは聖水(せいすい)! アンタに使わないであげた、とっておきの秘密兵器なんだから!!」


 耳まで赤くなり(わめ)くレーネに、ソーニャは頭から水をぶっかけ、いたずらっぽい笑みを浮かべた。


「これはお返し」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ