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遠吠え

帰る日。


王、チャコ、鶯、執事にシスカと総出で見送られる事となった。


父さんはこんな事は初めてだったらしく緊張していたが俺はそれ所では無かった。


「ハル。‥本当に行っちゃうの?」


涙目になるシスカを前に戸惑いをみせると、側にいたチャコが優しくシスカに言う。


「姫様。そんな顔をしてはハル様を困らせてしまいますよ。」


その言葉がキッカケにシスカの目から涙が溢れ出し、溢れ落ちた。


えー!!?泣きだした!!?


えーと、どうしよ!どうしよう!?


その慌てる俺の様子を元の状態に戻ったミニブタプータンが見て、あたかも自分が上かの様に鼻高く俺に解く。


『ハルよ。女が泣いたぐらいで動揺するなんてまだまだど。男なら‥』


ブスッ!!


アイテムボックスから出された俺のフォークがプータンの頬に刺さる。


『ぬぉぉ!!!!』


俺は昨日のフォークを気に入ってしまった為、家畜小屋で働く人から譲ってもらったのだ。


『コラァ!!いくら俺様が丈夫でも突き刺すのは良くないど!!』


「うるしゃいバカ!お前と#一緒__いっちょ__#にすんなバカ!バーカ」


俺のそんな状況を他所に王は父さんと和む様に俺達を見ていた。


「シスカがこんなに人に懐いたのは妻が亡くなってから初めてだ。ネイブルよ。また時たまで良い。ハルを連れて遊びにも来てはくれまいか?」


「よ、宜しいので?」


「うむ。それにこれから起こる事に対して、

お主の知恵も借りねばならんだろうからな。のうグイス。」


王はそうやって鶯に促すと鶯は首を縦に頷かせた。


「はい。ネイブル卿の知識の豊富さはいつも私自身感嘆させられます。是非お力を貸して頂きたい。」


「グイス宰相まで。」


父さんは感動し右拳を左手で抑え跪く。


「有難きお言葉です。このネイブル。しかとその任、承りたいと存じます。」


「うむ。」


〇〇。


そうこうしている内に行きも馬車の従者を務めた30過ぎの男から父さんに声がかかる。


「準備が整いましたのでお乗りください。」


プータン、父さんは先に馬車に乗り込んだ。


だが俺は「えぇん。えーん」とずっと泣き続けるシスカに戸惑ったままだ。


うー。乗るに乗れない。


っつかこういうのに慣れてなさすぎてどう対応するのが適切なのか全くの皆無だ。


えーい。こうなったら!!


俺は意を決してシスカの胴回りに抱きついた。


かっこ悪い抱きつき方かもしれんが、俺の身長ではシスカの胴回りしか届かんのだ。


だが効果覿面だったようだ。


シスカの泣き声が急に収まった。


なんかの映画でこうしてたのを思い出してやったのは正解だったな。


さて、この後、映画の場合どうしてたっけ‥あっ!そうだ!


俺はシスカを抱いたままアイテムボックスからターコイズ色のほんと小さな石を取り出した。


プータンとブラブラしていた時にたまたま見つけて拾った物だ。


これを【クリエイティブ】!!


ターコイズ石が一種かがやくと、形が小さな指輪へと変形した。


それを確認した俺はスッとシスカから離れ、俺よりもやや身長の高いシスカの頭を撫でる。


するとシスカはさっきの泣きまくる態度とは一変、顔をうつ向け俺との視線をズラす。


俺は首を傾げたが、そのままシスカの人差し指にターコイズ石をはめこんだ。


すると、その様子を見ていた王と鶯、チャコ、それに馬車に乗りこんだ父さんまでもが驚く素ぶりを見せたが、俺はそちらに見向きもせずシスカを見る。


シスカは急に嵌められたターコイズ石の指輪に動揺している様だった。


心なしか顔が赤いのは気のせいだろうか?


まぁいいや。ここで決め台詞。


「この指輪を君が持っている限り、俺はいちゅでもシスカと一緒だよ。必ずまた逢いに来る。だからもう泣かないで。」


俺の一言でシスカは急に俺に背を向けた。


え?怒らせたか!!?


動揺し始める俺だったが急にシスカの返事が返ってきた。


「し、仕方ないわね。こ、こここ、これに免じて今回だけは帰る事を許してあげるわ。」


なんだ?効果あったのか。良かった。と胸を、なで下ろす。


「な、なら俺は行くね。」


そういってシスカから離れると馬車に乗り込んだ。


「じゃぁ。出発してしますよ。」


バシ!と馬にムチがなると馬車の中が動きだした。


俺は馬車の窓から身を乗り出し、もう一度皆に手を振ると、笑顔で手を振り返してくれた。


だがシスカだけはずっと向こうを向いたままだ。


あの行動はいったいなんなのだろう?


女心ってのは‥わかんねぇなぁ。


〇〇。


こうして俺達はまたレイドクス領の門を潜り抜けた。


そして抜けた先にはまたキリス達が待っていた。


父さんから聞いたんだが、キリス達はDランク冒険者パーティーらしく、ギルド内では【パプリカンズ】と言うチーム名を名乗っているそうだ。


何故パプリカ?と父さんに聞くと、何でもマロンが命名し、理由は可愛いかららしい。

そしてマロンは何を隠そう宰相の娘だと言う事を父さんから聞かされた時は思わず水を含んだ口から水を吹き出してしまった。


「きゃー!!会いたかったよぉハル君にブーちゃぁ~ん!!」


マロンは出会うなり速攻で俺とプータンを抱きしめる。


ブーちゃん?知らない筈だけどあながち名前と近い!


『な!や、やめろぉ!!』


嫌がるプータンを他所に俺は高揚している。


ほほほ。相変わらず柔いのぉこりゃ。ヨダレが、ってまた意識が違う方へと行きそうになっちまった。


あぶねー、あぶねー。


キリスがまた父さんに挨拶する。


「ネイブル卿。また宜しくお願いします。」


「宜しく頼むよ。」


父さんは笑顔で返した。


そして帰りの夜。野営準備を終えた頃。


父さんは新しいオモチャ。オセロを取り出して、さぁ始めようと思った時である。


『ワォォォォン!!!』


何処からともなく犬の遠吠えの様な鳴き声が聞こえた。


するといきなりキリス達が立ち上がり緊張の糸が張り詰める。


俺はその行動に首を傾げると側にいたプータンが俺の疑問に答える。


『この遠吠えはウルフだど。』


「ウルフ?」


『あぁ。彼奴らは統率性があって群れで狩りをするど。そしてその遠吠えを聞いたが最後、既に囲まれてるんだど。』


「ネイブル卿!ハル様!馬車の中へ!!」


キリスはそう指示を出すが父さんは首を振る。


「僕もやろう。」


そう言って父さんは馬車からレイピアを取り出した。


「テリーネ君。ハルを馬車の中へ。」


「え?だ、大丈夫なんですか?」


父さんの行動に動揺するテリーネだがマロンがテリーネの肩に手を置く。


「大丈夫。ネイブル卿は特別。」


どうやらマロンは何かを知っている様だ。


だがしかし、敵がくるなら俺も戦うべきか?魔法なら使える。


「父しゃん!俺も‥」と言おうとすると父さんは口に人差し指を当て、ニコっと俺に笑顔を向ける。


任せろ。って事なのか?


「さ、テリーネ君。ハルを馬車の中へ、#従者__ドルデ__#さんもさぁ!」


こうして誘導されるまま従者と俺、プータンは馬車の中へと入れられた。

 

 父さんはそれを確認するとレイピアを胸元に垂直に立て深呼吸を一つ。


「さぁ。狩の時間だ。」



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