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異世界の現実

『ワォォオン!!!!』


「来るぞ!!!馬車を囲め!」


キリスの指示で皆は馬車を囲み馬車を背後に武器を構える。


俺はその様子を窓から覗き込む。


『ガァァアウ!!!!』


急に唸るような声がしたかと思いきや、いきなり暗闇から黒いウルフが突然現れ、テリーネに飛びかかっていた。


それにパクストンがすぐ反応し、テリーネに飛びかかるウルフを真横からハルバードの先で突き刺す。


グシュァ!!!!


そしてパクストンはまだ突き刺さるハルバードを抜きとり血を振り払う。


崩れ落ちたウルフの傷口からは多量の血が溢れ出ていて、既に事切れていた。


この世界に来て初めてみる生き物の死。


それも戦闘という命のやり取りの中での死だ。


正直、言葉で表せれぬ程の恐怖を感じ、言葉が喉で詰まった。


「ありがとう!」


テリーネがパクストンに礼を言うと「構わん。そんなことより魔法をいつでも打てるようにしとけ!」と指示をし「わかった。」とテリーネは自分のバトンをもう一度強く握りしめ、目の前に頭ぐらいの大きさのサンダーボールを浮かび上がらせる。


『ウォォォオン!!!』


「来るぞ!」


今度はキリスの前からウルフが牙を剥きだし飛びついた。


キリスはそれをロングソードで横薙ぎにし、切り捨てると、続く様に四方からもウルフが現れ、今度はマロンに飛びかかる。


それのフォローに入ったのは父さんで、レイピアを振る。


チュイン!チュイン!チュイン!!


ウルフは一瞬で3つに切り分けられた。


それにキリス達は驚きの眼差しを向けたが父さんが「油断するな!」と喝を入れる事で皆の意識は再びウルフにむけられ、父さんはそのまま片手を上に掲げ詠唱する。


「【ライト】!」


父さんの真上に光の玉が現れ、辺りを照らしだすと、ウルフ達の姿が露わになる。


1.2.3.,6.10、11?かなりいる。


皆の顔もさらに緊張が走っているのが肌で感じ取れた。


「さぁ今の内に!!」


父さんの掛け声で皆が頷き、一気に乱戦状態となる。


まずはテリーネが【サンダーボール】を放つ。


ドガァン!!バリバリ!と一体のウルフに直撃するが、その放った瞬間の隙を狙い右翼から迫りくるウルフ。


だがまたパクストンがフォローに入り「うぉぉぉ!!」と気迫を込めたハルバードを振り落としウルフの胴体を切断。

さらに飛びかかるウルフ達をハルバードを振り回し弾きとばす。


「ちっ、数が多い!」


「怯むな!!フォローしあって確実に仕留めていこう!」


父さんが更に喝を飛ばす。


キリスも負けじと乗り出し一体相手に剣を降る。だがウルフも黙ってはおらず、それを口で受け止めた。


ガツ!!!


そして連携を組んだかの様にもう一匹のウルフがキリスへと飛びかかり鋭い牙がキリスの腕に食い込んだ。


ガブ!!!


「ぐぁ!」


悲痛の顔をするキリスに対してマロンが即座に動き、メイスをバットの様に横薙ぎに振り付けウルフの横っ面を捉える。


ゴッ!!『キュウン!!』


腕を噛んでいた一匹のウルフが弾き飛ばされるが、まだ剣を咥えるウルフが残っている。


それに対してキリスは血みどろの腕を振り上げ、ウルフの顔面に拳を入れた。


ドガッ!!!『グガ!』


ウルフはその衝撃で更に興奮し、今度は首を激しく振り付けキリスから剣をもぎ取ろうとした。

だがキリスがそれをさせまいとウルフと取っ組み合いになり、転がり込んだ。


何回か転がり込んだ後、キリスが上位位置に付く。そしてそのまま「うぉぉぉぉ!!」と怒号を上げ、何回もウルフの顔を血みどろの腕で殴りつける。


殴るたびに飛び散る血飛沫が激しさを物語る。


そしてやはりその間の隙をウルフは絶対に

逃さない。 他のウルフがキリスに襲いかかる。


危ない!!と思った瞬間に、凄い勢いで踏み込みを入れた父さんがレイピアでそのウルフを斬りつけた。


ヒュン!!!『キュウン!!』


その間もキリスは怒号を上げ続けている。


「だぁぁぁ!!!」と何度打ち込んだか分からぬキリスの気迫こもる会心の一撃が、ついにウルフの顎を緩め、キリスは直ぐに剣を抜き取った。


そして両手で剣を振り上げウルフの顔に振り落とす。


ドシュヴ!!!


血飛沫が飛び、キリスの顔は血まみれだ。


「よし!次だ!」


キリスは直ぐに立ち上がり、次のウルフへと斬りかけにいった。


その様子に俺は、この世界を舐めていた自分に気づいた。


これが生きるか死ぬか。殺らねば死ぬ命のやり取り。


この先、この世界で生きていくには必ずしも通らねばいけない現実を目の当たりにした俺は、思わず窓から見えぬように馬車の隅に身体を震わせ蹲ってしまった。


怖い。その感情が身体の全神経を麻痺させたのだ。


その様子を隣で見たプータンが俺の側により唖然とした表情を作る。


『その反応。‥まさか血も見た事ねぇ甘ちゃんな奴だったのどか?』


くっ。悔しいが言い返す言葉が無い。


「あぁ‥ちょうだよ。悪いかよ!?」


俺は苦し紛れに反抗する様な態度でそう返すと、プータンは溜息を1つ吐き捨てる。


『ちっ。何でこんな奴にオデ様は‥』と愕然とした表情を見せたが、次第にそれを好機と思ったのかニタついた表情へと移り変わる。


『くくく。よくよく思えばこれは好都合ど。このままビビったままやられちまえば俺様は自由じゃないかど?いい!これはいいど!!そのままビビって何もできずにやられちまえど!!かかか!!』


従魔契約はしたが俺を死んでも守るという契約はない。

だからこの対応だ。理解はしている。

何故しなかったは知ってほしいとは思わないから言いはしない。


だが正直の気持ちでいえばあの時何故足さなかったのか後悔してしまっている自分も今いる。


しかし、どうする?


外を見る?また覗いた時に皆んながもう食われていたらどうしよう?


そう思うと皆んなが血みどろの海の中でウルフに食べられているシーンを想像してしまい、更に身体を震えさせる。


くそ!俺はこんなにヘタレだったのか!?


唇を噛みしめる俺の脳裏にいきなりヘラの言葉が頭をよぎった。


(今の所は異世界を楽しんでもらって結構です。)



バカヤロウ。何が異世界を楽しめだ?楽しめるかよこんなの。


今は戦わなくて良くてもいずれは絶対、"殺らねばならない"。


何で、何で俺だったんだよ?忘れてたのに!忘れてたのに!!!


今度は涙まで溢れ出てきた。


そんな時、急に俺の首元に腕が回る。


「大丈夫ですか?ハルさまぁ~。」


ハルさまぁ~?と思った瞬間にはもう遅く、従者にいきなり取り押さえられ口を塞がれ首にナイフを突きつけられていた。


従者の顔は先程とは打って変わり下卑た表情をしている。


そしてそれを見るプータンは嘲笑うかの様にその状況を楽しんでいた。


『ハハハ!これは一本やられた様だどハル!。』








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