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野人転生  作者: 野人
欲望の都市

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教会、怖い

コミック十二巻、発売中です!

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よろしくお願いいたします。

 パピーに対する教会の反応が怖いので、部屋でお留守番をしてもらう。


 教会の教えでは、モンスターは人類の敵とされている。


 テイムモンスターへの解釈も曖昧であり、どんな反応を示すか分からない。


 俺の向かう教会の司祭が、モンスター絶対殺すマンだったら最悪だ。


 教会と揉める気はないので、心細いがパピーは連れていけない。


 俺は断腸の思いで、頼りになる相棒と別れた。





 俺は気合の入った、キリリとした表情で堂々と歩く。


 背筋を伸ばすと傷が痛むが、このくらいの痛みなら我慢できる。


 ここからは一切、弱みは見せない。


 下品な尊大さではなく、静かな自信を持った自分をイメージする。


 ロビーで待っている薬師ギルドの若者に、感謝を告げる。


 そして、料金を多めに払う。


「こんなにいただけないですよ」


 遠慮がちに告げる彼に俺は言った。


「余った金で美味いものでも食ってくれ、こんな形でしか礼ができなくて悪いな」


 そういって、俺はニカッと笑った。


 我ながら胡散臭い。


 しかし、人生経験が浅い若者をうまく騙せたようだ。


 嬉しそうに礼を告げてくる。


 汚れた金(物理)ですまんな……。


 俺は心の中で若者に謝罪した。


 それから、教会に向かいがてら若者の話を聞く。


 彼は見習い期間中で給金が安く、生活が大変らしい。


 薬師なんてのは血筋のいいエリートがなるものだと思っていたが、彼は普通に試験を突破して採用されたらしい。


 金持ちの薬師はいわゆる研究職になることが多く、実際に人を治療するのは平民出身が多いそうだ。


 普通の市民が薬師になるには、薬師ギルドの試験を突破するか、薬師に弟子入りを認められることでなれるらしい。


 彼はギルド本部預かりなので、将来有望な若者なのだろう。



 薬草のことを聞いたり、俺の経験談を語ったり。


 楽しくおしゃべりしている間に、教会へとたどり着いた。


 周囲の建物には珍しい、白を基調とした外観。


 中央にある巨大要塞のような教会とは違い、こちらの教会は普通サイズだ。


 サイズは普通だが、細かな装飾の施された門や扉がある。


 周囲の壁には、神の使徒と呼ばれる羽の生えた人間が彫刻されている。


 下品な言い方をすれば、金がかかっていてハッタリが効いている。


 平均的な日本人程度の信仰心しか持たない俺でも、思わず襟を正してしまいそうになる。


 立派な門をくぐり、開け放たれている重厚な扉の先へ進む。


 教会の広い天井には、天使がゴブリンを踏みつけている様子が描かれている。


 教会内部は静寂に包まれ、かすかに祈りの声だけが響く。


 その空気を壊さぬよう、助祭と思われる青年が声をかけてくる。


「祈りを捧げにいらしたのですか?」


 どのようなご要件でしょうか? と、聞いてこないあたりがいやらしい。


 見たことねえけど、テメー何者だ? 普段、説法も聞かず祈りにも来ないテメーが教会になんの用だ? 簡単に司祭様に回復魔法をかけてもらえると思うなよ?


 俺の考えすぎかもしれないが、表情やニュアンスからそういった圧と傲慢さを感じる。


 冒険者ごときが、金さえ払えば回復魔法を受けられると思うな。


 バチバチの、牽制とマウンティングだ。


 とにかく、立場を『わからせよう』としている。そう感じた。


 ロック・クリフの教会は、金さえ貰えればなんでもいい。


 そんな感じだったが、こちらの教会はめんどうくさそうだ。


 同じ小国家群左遷組でも、巨大都市トゥロンの教会は一味違うらしい。


 こんなクソみたいな場所で権威だの格付けだの、聖職者がネチョネチョやっていて気持ち悪い。


 それも、こんな下っ端の助祭ごときが。


 俺はそんなことをおくびにも出さず、薬師ギルドの若者に目線を飛ばす。


「薬師ギルドから、付き添いでやってまいりました」


 薬師ギルドの名前を聞き、助祭の表情が変わる。


 まともに話を聞くモードに入った助祭に、若者は回復魔法の依頼を伝える。


 無作法で申し訳ありませんが……。


 そう告げて、助祭に握手しながら金貨を三枚渡す。


 硬貨の枚数が少ないことに不満げに眉をひそめ、そっと手のひらの中を確認。


 金貨であることを確認した途端、助祭の頬が緩む。


 財産を宗教関係に寄付することを浄財と言ったりするが、この様子で浄化されているのかね……。


 助祭は足取りも軽く、教会の奥へと歩いていった。


 絶対的な権力は、絶対的に腐敗する。


 有名な格言ではあるが、眼の前で見ると、なんとも言えない気持ちになる。


 もっとも、前世の中世で大暴れしていた宗教たちよりは、回復魔法という現世利益があるだけ、こちらの宗教の方がマシかもしれない。





 司祭を待っていると、気配察知にかすかな反応がある。


 マジかよ。


 教会のぶっとい柱の一本に、人の気配がする。


 これ、護衛か何かだよな?


 あんな狭いところで、ずっと不動なのだが……。


 置物じゃないよな。


 微妙に動いているから、人間なのは間違いない。


 俺があんな狭い所でずっと立っていたら、メンタルやられて発狂するわ。


 これが信仰心の力か。


 やたらと太い柱が多いのは、何本か中抜きして人を潜ませても大丈夫なようにってことか……。


 気づかなかったが、前回行った巨大な教会でも似たような仕掛けはあったのかもしれない。


 気づけたってことは、俺の気配察知のレベルが上がっている証なのだろう。


 それは嬉しいが、教会のセキュリティがイカツイ。


 ドン引きだ。


 貴重な回復魔法の使い手である司祭を守る必要があるのは分かる。


 教会の権威的にも、司祭を害されるわけにはいかない。


 人々が祈りに来る教会という施設上、堂々と警備の兵を並べるのも難しい。


 それにしても、柱の中に隠すとは……。


 魔法がある世界なので、構造上の強度などは心配していないが、柱の中に気配を消した人がいるというシチュエーションがもうヤバすぎる。


 気配が異常に薄いのも怖いし、あんな狭いスペースで不動なのも怖い。


 教会の僧兵、能力もメンタルも強すぎるんだが……。


 うん、絶対教会とは敵対しないようにしよう。


 荘厳で静謐な祈りの空間に、殺意を隠して兵が紛れ込んでいる。


 何この空間? 異質すぎて脳がバグるんだが……。


 とっとと治療を受けて、一刻も早くこの場から去りたい。


 教会、怖い。

カクヨム様で先行公開中。

こちらも、よろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
客が来る度柱に入るのか、1日中入りっぱなしなのか…… 武家屋敷とかの隠し部屋の場合、偽装を維持する為客から見える側はその瞬間まで開けないので、隣室とかに出入口が在ったとどっかで読んだが、柱だと上か下か…
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