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野人転生  作者: 野人
欲望の都市

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おっさんのど根性みせたらぁ!

コミック十二巻、発売中です!

あとがき下のバナーをクリックしていただくと、販売リンクに飛べます。

よろしくお願いいたします。

 上半身が包帯でぐるぐる巻きの俺。


 その足元では、パピーが周囲を警戒しながら歩いている。


 俺の隣には、薬師ギルドの紋章が刺繍されたアウターを着た薬師。


 こんな愉快な仲間たちが目立たないはずもなく、周囲の人にジロジロ見られながら歩いていく。


 さっきの噂が、尾ひれをつけながら俺たちを追いかけている。


 奇妙なことになっちまったな。そう思いながら歩いていると、目的地の宿が見えてきた。


 そこで気づく。


 あ、やべ。


 パピーのこと、どうしよう。


 俺が力をつけてパピーを守れるようになるまで、パピーの存在は秘匿する予定だった。


 そのため、良くないことなのだが、パピーの宿泊は無申告だった。


 パピーの抜け毛の処理などに気を付けてはいたが、完璧ではない。


 おそらく、部屋を掃除している人から報告は行っているはずだ。


 存在がバレてはいたが、今までは厚意でお目こぼしされていた可能性が高い。


 ここまで大っぴらに存在がバレてしまったら、宿側も知らないフリは難しいだろう。


 めちゃくちゃ居心地がよかったが、宿を離れてどこかで家を借りた方がいいかもしれない。


 宿を出るときは謝意を含め、多めに支払いをしよう。


 はあ、また金が飛んでいく……。




 宿に着くと、周囲の客がざわめきだした。


 いつものコンシェルジュさんが、俺を見て少し表情を変える。


 心配されたが、無事だと伝える。


 そして、パピーをテイムしたので近々宿から出ていく予定であること。


 それまではパピーも部屋に入れてほしいこと。


 万が一、部屋に傷や汚れが付いた場合、俺がすべての責任を取ること。


 それを伝えると、コンシェルジュさんは了承してくれた。


 俺は感謝を伝え、部屋へと向かう。




 部屋に入ると、ホッとする。


 期間はそこまで長くないが、ここが俺の帰る場所だったことを再確認。


 居場所を移すことの寂しさはあれど、これ以上厚意にあぐらをかくマネはできない。


 服を着替え、軽く身なりを整える。


 そして、洗濯物が置いてある部屋の隅へと向かう。


 洗濯前のシャツやらパンツやらが置いてある場所に手を突っ込むと、中に隠してあった小さな革袋を取り出す。


 中を確認すると、金貨が五枚。


 俺の虎の子である。


 もともとセキュリティの高い宿なので、泥棒の心配はそこまでしなくてもいい。


 それでも、用心するにこしたことはない。


 泥棒も、おっさんの汚れたパンツに手を突っ込むのは躊躇するだろう。


 俺は革袋の匂いを嗅ぐと、ちょっと嫌な匂いがした。


 金貨を取り出して匂いを嗅ぐと、無臭である。


 よし、これなら大丈夫だ!


 受け取る薬師ギルドの若者と、教会の人には申し訳なく思う。


 しかし、金貨は金貨である。


 これしか支払える金がないのだ。




 部屋を出る直前、足が止まる。


 はあー、教会行きたくねえ……。


 だって、絶対痛い。


 間違いなく痛い。


 さっきの激痛だけでお腹いっぱいなのに、これからもっと痛い目に遭うのだ。


 よっぽどのドMでもない限り、足取りは重くなる。


 前回、骨折を回復魔法で治してもらった。


 あのとき、メッッッッチャメチャ痛かったのだ。


 時間は短かったが、骨折したときより痛かった。


 そして、今回の治療。


 骨折の比じゃないくらい痛かった。


 あの痛みを短時間で凝縮したような痛みが、これから待っている。


 正直、そのせいでテンションがおかしい。


 頭の中でクレメンスとか言っちゃうくらいには、テンションがめちゃくちゃだ。


 こんな弱った状態のままでいられないのは分かる。


 すぐに怪我を治して、置いてきた荷物を回収に向かわないといけないことも分かっている。


 でも、アレ以上の痛みが待っていると考えると、足が前に進まない。


 しかも、噂が広まっている状態だ。


 教会で無様な姿を見せれば、醜聞となって町中に広がるだろう。


 そうなれば、俺は終わりだ。


 誰からも舐められる道化になり下がる。


 冒険者としても、裏ギルドの構成員としても、そうなればおしまいだ。


 俺がこの町から情けなく逃げ出すのは、まだマシな未来だ。


 最悪、緑《グリューン》に消されかねない。


 正直、すべてを後回しにして、ベッドでグースカ寝ていたい。


 だけど、そんな現実逃避は許されない……。


 はあ、ストレスで頭皮の方がやられそうだ。


 現実じゃなくて、頭皮から毛根が逃避ってか……って、じゃかましいわ!


 やはり、テンションがおかしい。


 こんなときは、空手の息吹で気を落ち着かせよう。


「こおぉ、っていててて」


 あー、背中いってぇ! 


 くそ、得意の空手を使っての解決も無理か……。


 いつまでも、薬師ギルドの若者を待たせるわけにもいかない。


 ここは、昭和生まれのおっさんとして、オールドスタイルで行かせてもらう。


 つまり、気合と根性だ。


 俺は目を閉じて、深く深呼吸をする。


 深呼吸が終わると、扉を開けて足を外へと踏み出した。


 激痛がなんぼのもんじゃい! おっさんのど根性みせたらぁ!


カクヨム様で先行公開中。

こちらも、よろしくお願いいたします。


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