痛がるベレニス
ずっと洞窟に住んでいた黒龍が、近頃拠点を移しながら東へ移動してきているらしい。そんな噂を町で聞いた。人を殺すことはしないが、建物を壊して食料を奪い取っていくらしい。
……もしかして私たちがちょっかいをかけたやつかな。無関係だといいな。
「その黒龍なら、うちの軍隊が調査団を派遣するって話だったぜ」
ベレニスに噂について聞いてみたら、こう返ってきた。
「ベレニスも行くの?」
「いや、あたしら近衛騎士団は王族の剣だ。基本は王都を離れることはできない。民のために動くのは、王国軍」
「そっか。でも、ジャンヌは外に派遣されてたよね?」
「あれは重要な任務があったからな」
「聞いちゃまずい話かな」
「別にそうでもねえよ。龍の国に挨拶に行かせてただけだ。定期的にあるんだよ」
「へえ。話し方は変だけど、使節として礼を失することはなさそうだもんね」
「まさにそれだな。うちの国の分館は学者肌のガリ勉ばっかだからな。礼儀どころかコミュニケーションを取ることすら下手奴が多い。だから武官でも、それなりの育ちの人間が行ったほうが確実なんだと」
「なるほどね。……ところで、肩こりがひどいの?」
さっきからずっと肩を叩いたり首を回したりしていて、ずっと気になっていた。
「ん?ああ、鎧も剣も重いからな。仕事するだけで毎日バッキバキだぜ」
「よかったらマッサージしてあげようか」
「まじでか!でもお前、力弱そうだしなあ」
「それは否定しないけどね。でもツボを知ってるからさ」
たとえばここだと首の付け根を掴む。
「ほああ〜。……確かにめっちゃ効くじゃねえか。よし、もっとやってくれ」
「うん。とりあえず肩甲骨かな」
「んあああ」
「この窪みとか」
「うおおお」
「……腰もこってそうだね」
「わ、お前急にぐわああ」
楽しい。めちゃくちゃいいリアクションをしてくれるので、やりがいがある。
「ふくらはぎも痛いんじゃない?」
「ぬおおおおお……な、何笑ってんだお前……」
「いやあ、痛そうにしてるベレニスが可愛いなって」
「な!シアン、お前変態だったのか!?」
「違うよ。ほら、土踏まずいくよ」
違うと言いながらニヤケが止まらない。普段強気な子が悲鳴を上げてるところを見るとゾクゾクするかも。
「お前絶対あああああ」
「お客さんこってますね〜」
「あとでぶっふおおおお」
今この瞬間の楽しさだけを考えよう。




