ジャンヌの琴線
さて、今日はジャンヌと街を歩くことになっている。昨日オボロと歩き回ったとはいえ、まだまだ知らないところもたくさんあるし、楽しみだ。
「今日はどこに行くの?」
「着いてのお楽しみ……でもいいんだけど、まずは劇場に行こうと思っているよ」
「劇場?」
「映画でござるか?」
「いや、姫殿下お抱えの歌劇団があってね。とても評判がいいんだ」
「わざわざチケットを確保しておいてくれたの?」
「所謂コネクションというやつだね」
まあそりゃそうか。
「でも、楽しみだね。そういう興行って行ったことないんだよね」
「拙者は里でよく見てたでござるよ」
「オボロの里って忍者の里じゃないの?」
「修行の一環として、扮装や演技の能力を培うのでござる」
「へえー。それもいずれ見てみたいな」
「本来外部の人間は入っちゃいけないのでござるが、シアン殿ならお連れするでござるよ」
「楽しみにしてるね」
「ござる」
「……いいかな」
「ん、ごめんね?ジャンヌを蔑ろにしようとしたわけじゃないんだ」
「ともかく、私も何度も見に行っているぐらいでね。ぜひ期待してもらいたいな」
「今日見るのはどんな演目なの?」
「今あまり話してしまってもつまらないだろう?まあ一言で言えば、身分違いの恋物語だね」
「へえ。たとえば、私とジャンヌみたいな?」
「……私はそこまで自由の効かない立場でもないよ」
そう言ってこちらを見るジャンヌ。どういう意図の言葉なんだろう。読めない。
「……見えたね。そこが劇場だ」
「楽しみだね。オボロ」
「ござるね」
……三人で楽しく劇を見た。騎士役の女の子も綺麗で花があったけど、お姫様役の子が特に可愛かった。演技もすごかったと思う。物語の世界に思いっきり引き込まれて、楽しかった。
「すごく良かったよ、ジャンヌ。連れてきてくれてありがとう」
「感動したでござる〜」
「それは良かった。好きなものを共有できて、私も嬉しいよ」
「特に、ヒロインの子の演技がよかったね。まるで本物のお姫様みたいに優雅で、上品な雰囲気を纏っていたよね」
「彼女は劇団のスターだからね。数百年に一度の逸材と言われているほどで、実は私も彼女をきっかけに歌劇にハマったんだ」
「へえ。そんなに影響力があるんだ」
「実際、空前の演劇ブームが起きているからね。最近、真似をした新興の劇団がいくつも現れてきているぐらいだ」
「それにしても、騎士役の方はかっこよかったでござる。ジャンヌ殿も普段から立ち振る舞いに雰囲気があるでござるし、ああいった舞台も似合うんじゃないでござるか?」
「ははは、そう褒められると照れてしまうな。実は、そう言ってスカウトされることも多くてね。ぜひ私をと……」
「まあ、ちょっと変わったところがあるから、客商売は向いてなさそうだけどね。ズレてるというか」
「……自分で言うのもなんだが、私はなんでもそれなりにこなせるエリートだと自覚しているのだけど?」
「いや、本当に自分で言……」
あ、怖い。顔は怒ってないのに、すごく怒られてる気がしてしまう。怒りのオーラを感じるというか。




