出会いの予感
結局釣りは、あんまり上達しなかった。まあ今まで釣りをしたことのない人間が、リール無しでの釣りにいきなり挑戦したんだから。当然と言えば当然だろう。あとは……
「シアンはダメな大人だなあ。こんな年下のガキにこんだけ大差で負けちゃって悔しくねえのかよ」
「ほんとに自分でも情けないよ。でも、キョウカが私の分まで釣ってくれたおかげで助かったな」
思ったよりもキョウカの教えは役に立たなかった。ささっとコツだのなんだのを教えてくれたけど、すぐに勝負だって言って自分の釣りに集中してしまった。まあ、変に自分にかかりっきりで釣果がなくなっても困ったしね、とも思う。あと、キョウカは感覚型だ。理論は理解してるんだろうけど、頭じゃなくて体でそれを覚えている。うまく整理して誰かに伝えることには向いていないのだろう。
「たりめーよ!アタシがあいつらのリーダーだ。アタシが養わないで誰が養うってんだ」
「キョウカは優しい女の子だよね」
「……たまにそういうこと言うのやめろよ。ハズいだろうがよ」
やっぱり褒められていないのかな。すぐに照れて頬を染めてしまうキョウカを見て、なんとなくいじめたくなってしまうが、どうにか我慢する。
「でも本心だよ。……キョウカが照れるのが可愛くてつい言っちゃうってのいうのもあるけど」
「……」
無言で睨まれた。けど本気で怒ってる顔じゃない。むしろ恥ずかしいのを我慢してる感じがする。なんとなくわかってきたな。
「みんなもそろそろ戻ってる頃かな」
「そうだな。うちのアホ姉はなんの役にも立ってねーだろうけど」
「……どうかな」
なんて会話をしながらみんなのところへ戻って行った。すると……
「ねえ、あんた名前は?こんな森の中でどうしたのさ」
「お嬢ちゃん迷子かな?どっちから来たかわかる?」
「こんな森の中に迷子?いや違う。お主さては魔物だなー?」
「わしは迷子でもないし魔物でもない!さっきから何度も言うておろーが!わしは!偉大なるドラゴンの王の末裔!ネブラ様じゃ!」
なんだか騒がしくなっていた。




