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「界」  作者: 緑陰
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第八章 「嵐の匂い」

鐘の音が会場に響いた。

休憩は終わり。観客たちが再び席へ戻ってくる。

「始まるぞ!」「酒持ってこい!」「次は誰だ!」

先ほど以上の熱気が広がっていた。

試合場の砂がならされる。司会の声が響く。

「それでは、武術大会後半戦を再開する!」

歓声が上がる。

いくつかの試合が続いた。槍と斧、拳法と剣。武人たちが激しくぶつかり合う。観客席では酒を片手に怒号が飛ぶ。

やがて司会が声を上げた。「次の試合!シード選手の登場!」

門が開く。天膳だった。

「……あいつか」「噂の剣士だ」観客席の武人が言う。

向かいの門が開く。細身の剣、洗練された構えの剣士が出てくる。

試合開始。剣士が踏み込む。速い。刃が走る。

だが天膳は動かない。剣が届く直前、一歩。それだけ。剣が空を切る。

二撃、三撃。斬撃が続く。当たらない。

「何だ?」「距離が合わない」観客席がざわめく。

天膳が小さくため息をつく。「……終わりか」

剣士がさらに踏み込む。その瞬間、一閃。剣士の剣が宙を舞った。刃が喉元で止まる。

静寂。審判が叫ぶ。「勝者、天膳!」

「早すぎる!」「何もさせてない!」歓声が上がる。

天膳は興味なさそうに試合場を降りた。そして小さく呟く。「……退屈だ」

試合は続く。司会が声を上げた。「次の試合!」

門が開く。男が一人歩いてくる。両手に剣。双剣だった。

「……あいつか」「優勝候補だ」観客席の武人が言う。

向かいの門から大柄な剣士が出てくる。

試合開始。大剣が振り下ろされる。ライが動く。速い。一瞬で背後へ回る。

斬撃。血が舞う。腕が宙を飛んだ。悲鳴。

ライは止まらない。二撃、三撃。砂が赤く染まる。

「やめろ!」審判が叫ぶ。

ようやくライが止まる。足元には動かない体。会場が静まり返った。

「……死んだ」誰かが呟く。「容赦ねえ」別の男が言う。

天膳の仲間の一人が、静かに息を呑む。「……双剣のライ」小さく呟く。「本物だったか」

影は黙って見ていた。

砂に染まる赤。動かない体。久しく見ていなかった光景だった。

昔の自分も、あれと変わらなかった。いや、もっと無感情だったかもしれない。

影は視線を落とす。今は、少し違う気がした。

ライは客席を見る。その視線が止まる。天膳だった。

ライがわずかに笑う。「久しぶりだな」

天膳が小さく笑う。「ライか。まだ大会に出てるのか」

ライが肩をすくめる。「暇でな」

そして客席の影を見る。目を細める。「……あれか。霧の剣士」

その時、司会が声を上げた。「続いての試合!初参加ながら怒涛の勝ち上がり!霧の剣士!」

観客席がざわめく。影が静かに立ち上がる。

その時、大会責任者の声が会場に響いた。「待て」

司会が言葉を止める。

「本日の試合はここまでとする」

一瞬の静寂。次の瞬間、観客が叫ぶ。「ええ!?」「まだ見たいぞ!」

責任者が続ける。「負傷者の処置、試合調整。残りの試合は明日行う」

ざわめきが広がる。

影は静かに座り直した。

試合場の反対側。ライが影を見ていた。しばらく視線が合う。ライが小さく笑う。「……明日か」

影は何も言わない。

天斬が横で少し笑う。「楽しみだな」

大会一日目は終わった。だが戦いは、まだ終わらない。


第八章終~

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