第五章 「空より斬る」
審判が手を上げる。試合場が静まり返る。
「始め!」
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次の瞬間、バルドが踏み込んだ。
地面が爆ぜる。巨大な剣が振り下ろされる。
轟音。石が砕けた。
「速ぇ!」「重い!」観客が叫ぶ。
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影は一歩横へ滑る。
横薙ぎ。巨大な刃が空気を叩き潰す。
影は刀を上げる。刃がぶつかる。轟音。
だが次の瞬間、影の刃が滑る。大剣の軌道が逸れ、巨大な剣が地面を叩いた。
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観客席がざわめく。「受けた!」
武人が首を振る。「違う。流した」
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試合場でバルドが笑う。「へぇ、今の流したのか」
踏み込む。振り下ろす。影が受ける。刃が滑る。また逸れる。
振り下ろす。影が受ける。滑らせる。
「まただ!」観客がざわめく。
武人が呟く。「同じじゃない。全部微妙に違う」
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影が踏み込む。
霞斬。
刃が走る。だがバルドが剣を返す。面で受ける。火花。衝撃。
「受けた!」観客が驚く。
武人が言う。「大剣で面受けか。守りも硬い」
バルドが笑う。「いい剣だ。だが軽い」
巨大な剣が押し返す。影が距離を取る。
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影が踏み込む。
断空。
重い斬撃。轟音。バルドが半歩下がる。だがまた面で受ける。衝撃が広がる。
武人が呟く。「今度は力でぶつけた」
影が刃を滑らせる。
月断。
大剣の軌道が逸れる。バルドの体勢が崩れる。
「崩した!」観客が立ち上がる。
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バルドが舌打ちする。「チッ……」
踏み込む。巨大な剣が振り下ろされる。
影はクナイを投げた。金属音。バルドが弾く。
その瞬間、影が踏み込む。
影踏。
間合いの内側。
霞斬。断空。月断。技が次々に出る。
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「なんだあいつ」「手が多すぎる」観客席がざわめく。
観客席の武人が言う。「あいつ、引き出しが多い」
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少し離れた席で天膳が小さく笑う。「昔からだ。一つじゃ通じない相手がいた。だから増やした」
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試合場でバルドが歯を食いしばる。「チッ……!」
男の体が膨れ上がる。筋肉が軋む。
武人が呟く。「異能力だ。身体強化」
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巨大な剣が振り上がる。今までより速い。重い。
下からの斬り上げ。影は刃を合わせた。その瞬間、衝撃が体を貫く。
堪えきれない。体が宙へ飛ばされた。
「飛んだ!」「終わりだ!」観客が叫ぶ。
空中。刹那、刀が鞘に収まる。
天膳の目が細くなる。「……あの体勢から、居合か」小さく笑う。「やるな」
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次の瞬間、抜刀。
霞絶。落下の勢いごと、刃に乗せる。
刃が走る。観客には見えない。ただ一瞬、空気が裂けた。
影が着地する。静寂。
バルドは立っている。「外した?」観客がざわめく。
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その時。
ピシッ。
小さな音。バルドの剣に亀裂が入る。
次の瞬間。
バキン。
巨大な剣が折れた。
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観客席が凍りつく。
バルドは折れた剣を見る。しばらく黙る。やがて笑う。
「……参った」
巨大な体がゆっくり膝をつく。
審判が叫ぶ。「勝者、影!」
歓声が試合場を包む。
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憲兵が入ってくる。鋼牙もその中にいた。
「街で暴れた罪だ。来い」
バルドは抵抗しない。影を見る。「……楽しかったぜ」
そう言って連れていかれた。
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観客席の上で天斬が静かに言う。
「ようやく、剣になってきたな」
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試合場では影が静かに立っていた。
折れた剣を見る。あれだけの攻防の末、ようやく一閃が通った。
天斬なら、どうだったろうか。
おそらく一合で終わっていた。
影は刀を鞘に収める。まだ、遠い。
第五章終~




