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人類の脅威であるアビスを殲滅するために、僕はアビス王と契約する~信用させて、キミを殺す~  作者: 夜月紅輝
第3章 嫉妬の罪、それは無理解の証

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第87話 前哨戦、そして敵の魔窟#1

 ルカラとイノを交えた交流中の最中、アルスから呼び出しを受けたノア。

 緊急の用があるようなので、案内された時に教えてもらった執務室に向かう。


 そこに辿り着き、ドアをノックしようとすると、それよりも先に扉が開いた。

 出迎えてくれたのは、アルスのオペレーターであるグレーテだ。


「お待ちしておりました」


 そう短く発言すると、片方の扉を大きく開けて、自らの身を引いた。

 それによって出来たスペースに移動していくと、中は調度品ぐらいしかない質素な部屋だ。


 執務室となれば、多少壁際にはいくつかの棚があり、そこに本が敷き詰められているイメージがある。

 しかし、それを覆すようなミニマリストのような味気ない部屋であり、あまりにもシンプル。


 そんな室内の、入り口から向かって正面に執務用の机に着いて作業するのがアルスだ。

 今も忙しなくボールペンを握って忙しなく書類に目を通しながらサインしている。

 瞬間、アルスがチラッとノアの方を見て、手を止めると、


「全く、今はもう便利な道具が揃っているというのに、大事なものだけ未だに手書きでなくてはいけない。

 正直言って、面倒極まりないな。目を通すからサイン程度ならグレーテがやってくれてもいいのに」


「私はオペレーターですので」


「そういう時ばかりは秘書という立場から逃げるな。

 というか、オペレーターという役割自体、隊員のサポート役だろ」


 そんなアルスの指摘に対し、グレーテは目線を外し、両手は耳に当てての完全防御態勢。

 もはや徹底抗戦の構えとすら見えるそんな秘書を見て、アルスも肩を竦めた。

 そのようなある意味微笑ましい光景を見つつ、ノアは空気を読んで話を進めることにする。


「それで.....僕に手伝ってもらいたい仕事ってなんでしょうか?」


「あぁ、実はこの先行われるであろうアビス王同時攻略作戦の前に、至急片付けておきたい案件があるんだ。

 単刀直入に言おう――明日の午前十時を以って、『嫉妬』の殉教者(マーダー)の拠点殲滅を開始する」


 アルスの言葉に、ノアは静かに瞠目する。

 同時に、脳裏に過ったのは新幹線で対峙した二人の殉教者に対してだ。


 その人物により、新幹線の乗客の一部はアビスとなり、同時に全員が死にかけた。

 それこそ、ライカとアルスの協力が無ければ、甚大な被害が出ていただろう。


 あれは間違いなく吐き気を催す邪悪の所業であり、決して許されることではない。

 つまり、あの場では逃してしまったが、もう絶対に逃してはいけない相手だ。


 そんな相手がいるであろう拠点がわかった。

 となれば、もはやそれを聞いただけでもノアがこの仕事を断る理由はない。


 それに、「嫉妬」の殉教者となれば、確実に「嫉妬」のアビス王討伐作戦で邪魔してくる相手でもあるだろう。

 であるならば、いずれ身にかかるであろう火の粉はさっさと振り払うに限る。


「もっとも見つけた拠点はあくまで一か所。

 恐らく他にもあるだろう拠点の一つでしかない。

 とはいえ、現在でも使用されてる拠点には間違いない以上、僕達は攻撃を仕掛ける。

 先の作戦で邪魔されるのも面倒だからな」


「わかりました。となると、複数人で一斉に仕掛ける感じですか?」


「あぁ、そうだ。メンバーに関しては、僕の方からすでに選定してある。

 そのメンバーは今な別の仕事からの期間中だから、明日にでも会ったら挨拶しておくといい」


「わかりました」


「ノアさんのオペレーターさんへの報告は、私の方から連絡しておきます。

 オペレーターに関してのネットワークは私達の方が知っていますし、仕事を頼む側の責任でもありますから」


 ということで、オルぺナへの仕事報告はグレーテが済ませるらしい。

 彼女の言葉を最後に、あっという間に会話が終わり、その場は解散となった。


――翌日


 いつもより長めに寝て体調を万全に済ませたノアは、一度執務室に向かっていた。

 というのも、そこで例の作戦に同行するメンバーとの顔合わせがあるからだ。

 そしてノアがドアをノックしようとすると、それよりも先にドアが開き――


「猪突ぅー猛しーん!」


「ぐぇっ」


 開かれたドアから見えたグレーテがサッと身を引いた瞬間。

 小さい影が高速で駆け抜け、ノアの鳩尾目掛けてダイビングヘッド。

 小さな頭の前頭部がメリメリと鳩尾周辺を圧し潰し、ノアの口から息が漏れる。


 それも肺にあった空気が強制的に抜ける感じだ。カエルを潰したような声に近い。

 衝撃が腹部から背中へ突き抜け、それに合わせて重心が傾き、足が引っこ抜け――


「くっ」


 ないように、咄嗟に右足を後ろに出して腹筋に力を入れた。

 それにより、ノアの体は途端に不動の壁となり、追突の衝撃のコンマ数秒後に来る小さな影の体重を全て受け止める。


 もっとも、それでも多少そのままの体勢で後ろに後退させられたが。

 その勢いも無事収まると、つい昨日見かけた大きさと特徴的な耳と尻尾を見て、ノアは誰が突撃してきたのか理解した。


「ひっさしぶりー、ラダ姉ぇー!......ってあれ? 違う。

 わぁ、ノアちゃんだ! ノアちゃんが受け止めてくれたんだ! 二回目だね!」


 ノアがすぐ下を向けば、そこにはタックルしたことに悪気すら感じさせない屈託のない笑顔を向けるイノの姿があった。


 イノがいるということは、どうやら今回の作戦のメンバーの一人であるようだ。

 そんなイノにキラキラとした瞳を向けられ、ついでになぜかそのまま抱き着かれたまま頬ずりされた。


 何を言っているかわからないと思うが、この状況を押し付けられているノアもわからない。

 ただ行われていることをそのまま言葉に表せば、そうなってしまうのだ。

 悪い気はしないが.......やはり、とても年上には見えない仕草である。


「おいおい、なにやってんさねアンタ。

 アンタの突進を受け止めてくれたからいいものの、そうじゃなかったら任務に支障が出るじゃないか」


 とりあえず、ホールドアップしながらされるがままのノア。

 そんな彼とイノに対し、廊下から少し野太いが女性味のある声が響いた。


 その声にノアが視線を向けると、今にも張り裂けそうなピチッとした服をきた大男がいるではないか。

 言うなれば、インナーと呼ばれるものを着ているが、なぜかへそ出しである。

 加えて、屈強な肉体により、筋肉の凹凸がハッキリと見える、胸筋すごっ。


 身長は二メートル近くあり、片手には肩に担ぐように上着を持っていた。

 髪は黒に緑の刺し色があり、緑の瞳、顔はゴツく化粧が施されている。

 そう、俗に言う「お姉さん系男性」である。

 すると、その男性――「ラダ姉」と呼ばれる人物がノアを一瞥し、


「イノの突進に耐えられるなんて、細い体の割にやる男じゃない。

 この子の突進に耐えられる人は早々いないから、この子も受け止められて嬉しかったんだろうね。

 ま、要は懐かれたって認識をしておけばいいさ。男なら悪い気はしないだろ?」


 そう言って、最後には気さくなウインクを送るラダ姉。

 そのハートでも飛んできそうな視線に、ノアが反応の仕方がわからずフリーズした。


 とりあえず、「はい」と頷いておいたが、色々と状況がカオスすぎる。

 そんなノアの一方で、ラダ姉はノアの横を通り過ぎる際に肩をポンと叩き、


「とはいえ、懐かれた以上、ちゃんと向き合ってあげなよ?

 でないと、この子も『嫉妬』で感情が不安定になっちゃうからね」


「は、はぁ......わかりました」


「それじゃ、サッサと中に入るわよ」


 そう言葉を言い残し、先に執務室に入っていくラダ姉。

 マークベルト以上の大きすぎる背中を見ながら、ノアもイノと一緒に入室した。

 その大きな背中が脇に移動した直後、開けた視界に入ってくるのはアルス――ではなく、鋭い拳だ。


「姉ちゃんからいい加減離れろ、この野郎!」


 険のある言葉が鋭く向けられ、同時に飛んでくるのは殺意の一撃。

 まともに当たれば確実に相手の顔面を陥没させるであろう威力のある拳が、風をシュッと切る音を鳴らしてノアの顔面に向かってくる。


「え......?」


 あまりの急な出来事に理解が出来ず、ノアの思考が一瞬止まった。

 それでも体は咄嗟に避けようとするが――あ、そういえば、体にイノいるじゃん。

 というわけで、ノアの体は首から下から動かせず、首を傾けても避けられるか――


「はい、ストップでござるよ」


 瞬間、二人の間を割って入るように、浅葱色ならぬ浅黄色をした隊服の男性の着物がノアの視界を覆い潰した。

 そしてその男性は自分の右腕の肘を、目の前にいる拳を繰り出した少年の肩にひっかける。


 それにより、ノアに届くはずだった拳は鼻先数センチという所で止まった。

 しかし、それでも拳圧はあるのか、ちょっとだけ鼻がジンジンして痛い。


「何すんだ!? オレ様は姉ちゃんを助けようと!」


「シスコン、大いに結構でござるが、ここでいざこざはご法度。

 それも、これから任務だというのに、その戦力を減らすのはどうかと思うぞ」


「うっせぇー! 知るかぁー! 姉ちゃんが人質に取られてんだろうがー!」


「どう見ても人質はむしろあっちの子だと思うんだけど」


「くっくっく、英雄ってのは良くも悪くもトラブルに巻き込まれて面白いな」


 騒ぎ立てるブロンドの立派なリーゼントをさせた獣人の少年と、それを諫める和服で長髪をまとめた侍。


そんな少年に対してツッコみを入れるピンク髪の女性と、特徴的な瞳をした作業服をした女性――ルカラ。

 そこにアルスとグレーテを加えた計七人の人物が執務室に集まっていた。


「来てくれたか、ノア君」


 すると、ノアの到着を察して、執務用の机からアルスが声をかける。

 その言葉を合図に、これまでのメンバーが一斉に両脇に移動し、ノアにくっついていたイノも移動。


 その中で、グレーテだけがアルスのそばに移動した。

 そして、まるで幹部を従えたような構図で隊員達が並ぶ中、アルスは構わず口を開き、


「ここにいるのがこれから任務に挑むメンバーだ。

 同時に、『嫉妬』のアビス王を倒す際にも活躍してくれる頼もしき存在でもある。

 まずは順番に自己紹介してもらおう。そうだな――」


「なら、ここはもう挨拶が終わってるイノから行くよ!」


 アルスが視線を巡らせると、イノが元気よく手を挙げた。

 その言葉を合図にアルスが頷くと、イノはそのままのテンションでノアに振り向き、


「イノの名前はイノ=ロックフェルト! よろしくね! んで隣にいるのが――」


「姉ちゃんの自慢の弟ォ、シシマルだ! 英雄だろうがなんだろうが関係ねぇ!

 アルスさんの手前、ボコさないでやるが、姉さんにこれ以上近づいてみろ!

 アビス王の前にテメェを真っ先に殺してやる!」


 左側一番手前にいるイノが挨拶した後、リーゼントをぶるんと揺らしたシシマルが吠える。

 その鋭い目つきから放たれる威圧感は、言葉通りに意味合いが含まれてるのだろう。


 そんな彼には耳はあるが、尻尾は無かった。

 それから左側最奥にいる長髪の黒髪を束ねた侍が、シシマルを諫めつつ口を開く。


「シシマル殿、アルスさんを立てるならまずその言葉遣いを何とかするでござる。

 そして、某がザブロー=ランドルトでござる。

 奇怪な格好と口調でござるが、遠くの地出身故にご容赦していただきたい」


「そんじゃ、次はこっちの番だね」


 そう言って声をかけたのは、右側の手前にいるピンク色の髪をした褐色の女性。

 見た目の印象だけを言えば、黒ギャルというタイプに近いだろうか。

 その女性が軽く手を振って挨拶しながら、自己紹介をする。


「アタシがミッシェル=ロバーツ。代表の次に速い雷使いだよ。

 つっても、代表が早すぎるだけで、速度にはだいぶ天と地ほどの差があるけど、とりまヨロ~」


「んじゃ、次はアタイだな。そういや、まともとな自己紹介してなかったな。

 ルカラ=ホークスェンだ。これからよろしくな、少年。

 それと、ちなアタイの所属は白のパレスだから。魔技も特殊だしな」


 ということらしい。

 白のパレスのメンバーはその特異能力故に様々なパレスに出張中と聞いている。

 なので、ルカラもきっとそう言った人材で黄のパレスへと呼ばれたのだろう。


 実際、武器研究室にいたのもそういった理由が関わっているのかもしれない。

 そして最後、隊員の中で一番大柄な、それでいて女性っぽい雰囲気も纏わせる男が口を開き、


「最後は私ね。私はラダンマ=ゴードン。見ての通り女性よ。

 皆からは親しみを込めて『ラダ姉』と呼ばれてるわ。よろしくね☆」


 大きな手を小さくひらひらと振るラダ姉――改めラダンマ。

 そんな気安い距離感に、ノアはとりあえずペコリと頭を下げた。

 それから全員の挨拶が終わると、改めてアルスが口を開く。


「改めて、このメンバーで本作戦に挑むことになる。

 言うなれば、強襲だ。殉教者どもは一匹たりとも逃してはいけない。

 全員、気を引絞めて任務に挑め。それでは――出発だ」


―――数十分後


 まるで疾風のような移動速度で走り抜け、ノア達が辿り着いたのは山奥の一か所。

 そこにはもはや誰も使っていなさそうな廃屋敷があり、もはやホラースポットだ。


(なんかお化けとか出そう.....)


 そう思った瞬間、ノアの背筋にゾッと怖気が走る。

 というのも、ノアはお化けやそういうのが苦手なのだ。理由は、物理で倒せないから。

 もっとも、魔技で倒せるなら克服するかもしれないが。


 そんな廃屋敷をぼんやり眺めていると、アルスが一人の女性隊員に近づいていく。

 どうやらあらかじめ待機させていたB級隊員らしく、その人物から情報を伺っているらしい。

 すると、ルカラがノアの近くにやってきて、愚痴を吐くように呟いた。


「おいおい、この屋敷って確か『Dr.フィガロ』の研究屋敷じゃねぇか。

 つっても、もう使われてねぇただの残骸だが、それでも殉教者が占領していい場所じゃねぇぞ」


「この場所を知ってるんですか?」


「ん? あぁ、ここは有名な場所だからな。

 ここは『Dr.フィガロ』っていう有名な研究者がいたとされる最後の場所でな。

 それこそ、特魔隊のアビスリングの能力向上理論を確立させた大恩人だ」


「それほどまで凄い人なんですね。

 それで、最後となるともう亡くなられてるんですか?」


「いんや、それがわからん。突然姿形もなく失踪しちまったんだ。

 特魔隊の力の源を知る重要人物だから捜査も徹底して行われたが......結局見つからずじまい。

 生きてれば、今年で八十八とかになるだろうが、恨みを持たれてないわけじゃないだろうしな」


 それは遠回しに生存説を否定しているルカラの言葉であった。

 とはいえ、現実的に見れば、恐らくそっちの方が可能性は高い。

 なぜなら、アビスリングによって隊員達はアビスと戦えているのだから。


 その武器の殺傷能力を上げられたとなれば、殉教者やアビゲイルが黙ってないだろう。

 故に、失踪と見せかけて殺された――そう考えるのが至極真っ当な考えなのだ。

 そしてルカラが怒っている理由は、同じ研究者としての立場からなのだろう。


「ったく、アイツらにあの人の遺作が壊されてたまるか!

 アレらは人類の英知だぞ! 絶対に壊されてたまるもんか!

 必ず全てぶっ倒して、お宝を回収してやる!」


 全然そんなこと無かった。なんだったら、我欲マシマシであった。

 研究者は人間関係に希薄と俗説で聞くのだが、やはりそうなのだろうか。

 それとも、ルカラが単純に研究者気質が尖り過ぎているだけなのか。

 とりあえず反応に困ったノアは、苦笑いだけ浮かべておくことにした。


「全員、よく聞け」


 その時、アルスが全体に向けて声を発した。

 その声は決して大きくないが、されど隅々まで通る声で全体に指示を与える。


「これより五分後に強行作戦を実行する。

 それに伴い、屋敷周辺にいるB級隊員は屋敷の周辺で待機及び警護。

 もし、火急の問題が発生した場合は、簡潔に情報伝達をするように。指示はその時に与える」


 それからアルスが「また」と言葉を付け加えると、


「仮に屋敷から戦闘音が消えた場合、一分後も音がしなければ速やかに撤退すること。

 並びに、撤退後は緑のパレスにはグレーテを通して緊急回線で次の大型作戦の中止を伝えて欲しい」


 今度はこれから突入するメンバーへと視線を向け、


「そして僕と一緒に屋敷へ突入する部隊は、動きに関しては各々の判断に任せる。

 ただし、必ず二人以上で行動するように心がけてくれ。以上」


 その言葉を最後に、アルスは全体に向けて背を向ける。

 その次に、自分の手に装着したハーフグローブを再度しっかり装着させると、


「殲滅だ」


 そう宣言した。


******


 かつてDr.フィガロと呼ばれる有名な天才科学者がいたとされる廃屋敷もとい研究所。

 そんな研究所のとある薄暗い一室には、モニターの光源だけが周囲を照らしていた。


 そのモニターには研究所の周囲に設置されたカメラを通して外の映像が映し出されており、そこには今にも研究所に向かってくる物騒な男女の姿があった。

 そんな光景を、椅子の肘掛けで頬杖を突きながら、ピンク髪の女がぼんやりと眺める。


「団体様ご到ちゃ~く。メンバーを見た感じ、特魔隊の最高戦力ってとこじゃない?

 一人知らん男の子映ってるけど」


「あぁ、それは例の彼だよ」


「まさかこんな所まで来てるなんて。にしても、もう一人のメスゴリラいないね。

 死んだのかな? 死んでくれてると嬉しいなぁ」


「へぇ、これが例の.......って例ってなんだっけ? ミュウちゃん教えて!」


「『傲慢』のアビス王の器」


「あ~、なるほど......え、ヤバくね?」


 オレンジ色の髪に猫耳を生やした男装麗人――ミュステルの言葉にピンク髪の女が、ガタッを頬杖をついていた肘掛けから肘を落とす。

 そんな女に対し、全く同じ顔をした、されどミュステルより少し声の低いライオットが答える。


「大丈夫だってベロニカちゃん。

 そのためにこの屋敷に色々トラップ仕掛けてあるでしょ?

 それも科学者のベロニカちゃんがいなきゃできなかったわけだし」


「それに、仮にあの御方が出てくるとなれば、特魔隊そのものが黙っていない。

 となれば、この戦いであの御方が出てくるとはない。

 仮に、出てきたとしたらその時は――ボクと共に運命を共にしよう」


「あ......はい♡ ......じゃねぇよ! そのビジュアルで私を騙そうとするな!

 ちょっとトキめいちゃったじゃねぇか!」


「おっと、それは失礼。しかし同時に、残念でもあるな。

 君のような見目麗しいレディーを口説き落とせないというのは」


「そういうのいいから。

 それじゃ、私は戦闘能力皆無だし、ここで邪魔はしとくから。後は皆で頑張って」


 そう言ってピンク髪の女――ベロニカは視線をモニタ―に戻した。

 その言葉を最後に、ミュステルは「お任せあれ」、ライオットは「了解」とそれぞれ挨拶し、二人の後ろにいる同じく殉教者達と共に闇へと消えていく。

読んでくださりありがとうございます。


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