3-25 屋上で
「あ、いた。おーい、涼葉ー」
「あ、裕兄、それにみんなも」
涼葉はレジャーシートで陣取っており、既にそこには神子さんと杏香さんも一緒だった。すみれのやつ……上手くかわしたな。
「みかんは一緒じゃないんですか?」
「ええ、あの子からざっくり話は聞いたわよ。多分今は1人でいたいんじゃないかしら。それよりもすみれちゃんは居ないの?」
「すみれなら杏香さんを避けて別の場所に、愛莉も一緒です。恐らく宇佐美はみかんと一緒かと」
「あら、嫌われちゃったかしら」
「そりゃ、あれだけベタベタすれば無理もないでしょ」
「じゃあ、姫香さんは?」
「そういえば、見てないな」
織田さんは、体調の問題で競技への出場はパスしてたのは聞いたが言われてみれば今日はまだ見ていない。
あ、それと織田さんが参加しないなら男女比が15:15になって俺が乃愛と組む必要がなかったことは言わないお約束。俺も気づいてなかったし。
昼に屋上に呼んでおいたのはいいけど、まさか朝からいるんじゃないだろうな……
「ちょっと、俺探してくるよ。みんなは先に食べてていいぞ」
そう言い残して、俺は校舎の屋上へ。
「あ、天野さん。約束通り来ましたよ」
「待たせて悪かったな。朝からここにいたのか?」
「ええ、ここからだと競技も良く見えますし、秋風がとても気持ちいいですし」
「そっか。涼葉がみんなの分のお弁当作ってきてくれたんだ。良かったら織田さんも一緒にどうだ?」
「是非ご一緒させてください。彼女のお料理はとても美味しいので」
一瞬、間を開けて織田さんは再び口を開いた。
「そろそろ本題に入りましょうか」
「ああ、そうだな」
「先に言っておきますが、天野さんのことです。これは愛の告白とかではないのでしょう?まぁ、仮にそうだったとしても答えはNOですが」
「確かに告白っていえば告白だが俺の話は愛なんてくだらない事じゃないよ」
「あら、愛の告白がくだらないとは……よっぽど大層な告白のようですね」
「単刀直入に聞くけど。織田さんってさ……どうして嘘を吐いてるんだ?」
俺の言葉に織田さんは急に顔色を変え、俯く。
「……なんのことでしょうか?」
そして、惚けるように俺に聞き返す。
「織田さん。体が弱いっての嘘だろ?」
「……いつから気づいてたんですか?」
どうやら観念したようだ。
「最初から。俺たちが最初に織田さんの家に行った時からだよ」
「どうしてですか?」
「確か、体が弱くて引越しの荷物を片付けるのに手間取ってたから学校に行けなかったって言ってたよな?」
「……そうですね」
「俺たちはあの日、急に押しかけた。それなのに、荷物整理に追われていた人が接客でお茶を出せるわけがない。そこで気づいたよ」
「なるほど、流石の推理力です」
やっぱ、俺って探偵とか刑事とか向いてんのかな?
「私、実は中学生の時の友達がいないんです」
「なんでまた。織田さん優しいのに」
織田さんは少し照れるようにして話を続ける。
「中学生の時、私は学年でトップの成績でした。それに加えて少しお堅い性格だと周りのみんなからは少し近寄り難いオーラを出していたんでしょうね」
「高嶺の花みたいな?」
「まぁ、そんなところです。なので私、高校では友達が欲しかったんですよ」
「なら、最初から学校に来れば良かったのに」
「体が弱いと学校を休み続けていればそのうち誰かが心配して家まで来てくれるかなって」
「なるほどねぇ、それで中途半端に荷物が片付けられてないまま残ってたってわけか」
「はい、来ていただいた際に手伝ってもらえばお礼も出来ますし自然と友達になれるかなと。まぁ、今思えばこのようなことしなくても天野さんたちは友達になれていたような気がしますけどね」
「それで、今までそれを演じきっていたのはバレたら友達じゃなくなってしまうと思ったから?」
「それもありますが……実は私、運動はちょっと苦手で……」
織田さんは両手の人差し指を合わせて、恥ずかしそうに告げた。
誰にだって苦手なことくらいあるって事だ。例えば、乃愛ならおばけ、みかんなら空気を読むこと。運動神経抜群の愛莉は勉強が苦手だからすみれに教わってると聞いた。すみれはその逆で運動が苦手なので実技テストの前は愛莉に特訓してもらってるそうだ。
「ま、気にするな。俺からみんなに言うつもりはないし、話したければ織田さんから話しな。そんなことで友達辞めるようなら、既に友達として失格だから」
「はい、そうします。でも、天野さんも少し意地悪ですね」
「えっ?」
「だって、最初から気づいてたんでしょう?なのに、今更になってそれを言い出した」
「ごめん、俺も正直に話すよ。実は織田さんにしか頼めないことがあってだな。最悪、このことを弱みにして頼もうとか考えてたんだけど。その必要はなさそうだね」
「はい、そうですね。私に出来ることならなんでも。その代わり……と言ってはなんですが、私からも1つお願いしてもいいですか?」
「そうだな、俺からもお願いする訳だし、構わないよ」
「あの……ですね。これからは私の事、名前で読んでくれませんか?」
確かに、織田さんだけは苗字で更には「さん」付けで呼んでいた。彼女も言っていた通り、少しお堅い雰囲気は感じていたのでそう呼んでいたのだが。
「わかった。これからよろしくな姫香。俺のことも裕太って呼んでくれ」
「はい、裕太さん」
織田さん……改め、姫香はお堅いオーラなんて感じさせない満点の笑顔を見せた。
「で、俺のお願いなんだけど……」




