020▼場所:『困惑の公園で抱かれながらに』……語り手:『セミロング』
◆◆◆場所:『困惑の公園で抱かれながらに』……語り手:『セミロング』
「おい、こらっ、動くな!」
私の身体が『びくっ』と震える。
『やさ男(お兄ちゃん)』に抱かれた身体に熱が籠もる。
警察がきた?
ここに? なんで?
――二人組みの警察。
まさか、『やさ男(お兄ちゃん)』が知らせてた? 私を捕まえるために、ここで足止めしながら? それは私を? 捕まえに? 『家出』してた私を? それとも――。
「――きゃっ!」
突き飛ばされた。
思いっきり、力いっぱい突き飛ばされた。
なんで『やさ男(お兄ちゃん)』に突き飛ばされるかわからない。今まで、一度もこんな仕打ちなんてされなかったのに。時々、ヘンなこと言うぐらいのヘンな『やさ男(お兄ちゃん)』だったのに。それなのに……。
「おい、待て! 逃げるな!」
二人組みの『警察』が、なぜか逃げる『やさ男(お兄ちゃん)』を追いかける。
なんで、なんで、逃げるの? なんで、『やさ男(お兄ちゃん)』が逃げてるの?
私が逃げるなら、ともかく、なんで、『警察』を呼んだはずの『やさ男(お兄ちゃん)』が逃げるの?
「――いてぇっ!」
盛大にこけた。
『やさ男(お兄ちゃん)』が、逃げながら思いっきり、こけた。
――すごく、かっこ悪い。
「おらっ、おとなしくしろ! 『公務執行妨害((3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金))』で訴えるぞ!」
『やさ男(お兄ちゃん)』と警察がもみ合いをしてる。
――もう、何が何だか分からない。
分からない、全然、わかんない。
逃げてたら、追いかけられて、『警察』を呼んだはずの『やさ男(お兄ちゃん)』が捕まって、暴れてる。もう、全然、ホントにわからないよ。
私が騙されて騙されて騙されて騙されて、いろんなことがわからなくなってたのが、さらにわからなくなって、もう、私の頭がおかしくなってる。おかしくなってた頭が、ますますおかしくなってる。だから、こんなことになってるのかもしれない。
「キミ大丈夫、ケガはない?」
警察が私のほうに近づきながら話しかけてくる。
『やさ男(お兄ちゃん)』を取り押さえてる警察とは、別の人がこっちに来る。
「――――ッ」
「おい、ちょっと、キミ!」
後ろで声がした。
だけど、私は走る。もう、何がなんだかわからないから、逃げる。
また走る。また逃げる。
「もう抵抗するな! おい、こっちを手伝ってくれ!」
声がした。
後ろのほうで声がした。
もう、私にかける声がなくなった。もしかすると、『やさ男(お兄ちゃん)』がまだ暴れているのかもしれない。
ただ、走ってその場を逃げた。
わからないまま、わからないまま、『既視感』がずっと、襲ってた。
――もう、何も聞こえなくなった。
それなのに、こんなに、わからないことばっかなのに、私の『学習回路』は壊れてるらしい。
――いつまで経っても、理解できないょ。




