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とこしえの魔女は記憶を取り戻す  作者: カピバラ
クソったれみたいな人生で
7/8

少女は少女のままで 上


 小さい頃の優しかったお母さんを、最近はよく思い出していた。


 お母さんはよく彼氏が変わる。


 お母さん曰く、お母さんは可愛いから男によくモテるらしい。


 それがなぜ彼氏がかわるがわるになるのか、よく分からなかったけれど、お母さんが幸せそうだからそれでいいかと思えていた。


 けれど最近は少し、様相が違ってきている。新しい男を連れても、母はどこか不機嫌で、連れてくる男も少し怖い人になっていった。


 お母さんは好きだ。お母さんはお母さんだし、よく抱きしめて可愛いあたしの娘と何度も言ってくれたことがあるから。


 ただ、お母さんが好きな、お母さんを好きな男の人たちはみんな好きにはなれなかった。


 だからかだんだん、男という生き物に嫌悪感が目覚め始めていた。


 お母さんを傷つけて、あたしにもたまに暴力を振るう人もいる。


 初めて、そう言った暴力をされたのはあたしがまだ8歳の時だった。


 部屋に入るだけで、なぜか右頬を殴られた。あたしは訳もわからず泣くと、男はさらに暴力を振ってきて止めに入るお母さんがいなければ、死んでいたかもしれない。


 その日からだった。変な夢を見出したのは。


 それは確かな苦しみだった。


 磔にされ、延々と燃やされ続ける夢を見るのだ。焼き爛れる肌は無数の針に刺されたように痛く、口は乾き、眼球の水分がなくなっていくあの悍ましい感覚は、夢を見るたびに鮮明になっていく。


 一体これは、なんの夢なのだろうか。


 そうして年を重ねていくに連れて、まただんだんと違う夢を見ていた。


 あたしとは違う人の人生を見るのだ。


 生まれ落ち、忌子として扱われ、人を恨みながら、向かってくる人間を何人も何人も殺す女性の夢。


 そして、女は年を取らなかった。


 何年も何年も、魔女として扱われ、それはいつしか人の災厄となっていた。

  

 夢を見るほど、感覚は鮮明になっていき、人を殺す時の感触が生々しくなっていく。


 正直なところ、どんなにお母さんの男に暴力を振るわれようと、どんなに学校でいじめられようと、この夢への恐怖はどんなことよりも刻々とあたしを苦しめる。


 いつしか眠るのが怖くなり、眠れない日が続いていた。しかも今回のお母さんの新しい男は正直最悪で、すぐに手が出るような人だった。


 おっさんだし、臭いし、人相は悪いし。しかもヒモでギャンブルや酒ばかりをしてまさにクズを体現しているやうな人だった。


 休まるところはなく、家も学校も、寝る時でさえあたしの居場所はどこにもなかった。


 限界だ。そう思えてきていた。


 なんで生きているのかよくわからなくなっていた。


 いつも玄関の外で暗くなるのを待つ日々。


 死ぬか死なないか、その二択がいつだってあたしの頭を占めている。


 そんな折だった。変な人と出会ったのは。


 その人は嫌そうな顔をしながら、あたしにご飯を差し出してきた。ただの同情からなのか、あたしが女だからなのか。

 お母さんに貢いできた数々の男の顔を思い出す。


 それから、男は至って嫌そうな顔をしながら、毎日あたしにご飯を買ってきてくれる。


 これでは、まるで餌付けされる野良猫だ。


 まぁ、これが同情でも欲情でもなんでもいい、あやかれるものはあやかろう。


 ろくに食べ物がないから、助かっているのは事実だった。


 

 

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