12 非リア充 と病弱プリンセス の巻
年末は忙しいです。
年始も忙しくなりそうです。
ああ、書く時間がない……。
明日はマンダラ祭りの前夜祭。
本当に『リア充は爆ぜろ!』ですよ。
ああ、座禅組には辛い、辛すぎる。
映画を観に行きました。
仮面ライダーもスターウォーズも面白かったなあ。
本願寺と仙人のあのシーンって絶対アドリブだよね?
ハン・ソロが超格好良かったなあ。
あれ、感想がどっちもオジサンについてだ……。
オレはダチュラさんというらしい女性に腕を極められていた。とても痛い。でも、ダチュラさんはとびきりの美人なのでむしろウェルカ……ああ、折れるー! やっぱりダメ! ギブ! オレはダンダンと地面をタップした。
「痛い痛い! ヘルプミー! オレは不審者じゃないよー!」
「黙れ塵芥屑蟲。お嬢様が見ていなければ生爪を剥いで拷問していただろうに。それとも頭の皮が良かったかしら? 麻痺毒とナイフの飴と鞭は得意なの」
この人怖い! 押さえつけられて顔こそ見れないけど、この人絶対ギラギラしてるよ!
「ダチュラ、その方は本当に安全です。離してあげてください!」
「ほら、クーちゃんもそう言ってるしさ! オレ怪しい者じゃな……イタタタタ!」
「慣れなれしくお嬢様の名を呼ぶな。同じ空気を吸うな。同じ世界に存在するな」
その発言は遠回しにオレに死ねと!? いや、その前に殺されそうだけど……。今も腕がミシミシと悲鳴を上げている。
「オレはクーちゃんの言う通り、勇者と一緒に召喚された異世界人なんですって! 噂くらい聞いた事があるでしょう!?」
「……それを証明出来るのかしら?」
「ロ、ロクロウさんに聞けばすぐに分かるよ!」
「ロクロウ・マックイーンのこと? わざと多忙な人物を指定して、嘘がバレるまでの時間稼ぎのつもりかしら?」
「ほ、本当だよう! イタタタタ!」
た、確かにロクロウさんって忙しいから、すぐに証明はできないかあ。他だとキリリアさんに、チュウマ隊長と愉快な仲間達……も忙しいよなあ。ナディくんとヒュアちゃんは立場がなあ……。となると彼方くんと奈川木かな? でも勇者本人は許可を得るのが最難関そうだ。あれ、詰んだ?
「ダチュラならすぐに可能なのではありませんか? わたくしからもお願いしますわ」
「お、お嬢様、頭を下げないで下さいまし! うぅ……分かりました。やりますから!」
「だそうですわ。良かったですね、オダケン様」
「う、うん? そう……だねえ」
オレが悩んでいる内にも、クーちゃんとダチュラさんとで話は進んでいった。
クーちゃんはにこりと微笑んだ。
オレも微笑み返す。が、実は状況をよく理解出来ていない。何が可能で、何が良かったの?
ダチュラさんはいきなりオレに馬乗りになり、強く頭を地面に押さえつけた。咄嗟に横を向いたので回避したが、危うくオレのファーストキスが母なる大地になる所だった。中学の時に讃称したけど、オレの初めてを捧げるつもりは毛頭ない。
無理矢理首を曲げ後ろを振り向くと、ダチュラさんが銀色に光る何かを摘まんでいた。
「……ダチュラさん、その右手にあるのは何でしょうか?」
「毒針」
「え、ちょっと、毒ぅ!? ストーップ!」
「死にはしない。一時間程体が動けなくなるだけの麻痺毒よ。ただ、アレルギーのある人は心臓まで止まるかも」
ダチュラさんは遠慮無くオレの首筋に毒針を打ち込んだ。
待って、心臓って! アッーーーー! ……なんかチクッとした。
「ら、らめー。ひびりぇて、りょれつがまわらりゃい」
「……この毒ってこんなに即効性あったかしら?」
喋ろうとしても舌が回らないせいで上手く出来ない。でもそれがなんだか楽しい。歯医者さんで虫歯を治療した後、麻酔の残っている頬をわざと噛んでしまうのと似ている。後で後悔するのに。
「あにこりぇ、いがいとおもひりょ……いっ!」
舌噛んだ。
「あの、舌を噛むかもしれないので、あまり話さない方がよろしいのではないでしょうか?」
「……馬ッ鹿じゃなかろうか」
クーちゃん、もう手遅れだよ……。ああ、後悔。
ダチュラさんは凍てついた目でこちらを一瞥し、オレの上で魔法陣を展開していた。見る限り通信系統の術式だ。ロクロウさんに叩き込まれたから読める。
ちなみにこの世界で魔法陣が読める魔術師っていうのは、大抵宮仕えが出来るレベルみたい。実はオレ達は凄い英才教育を受けていると、この前厨房でお芋洗いの手伝いをしていた時にメイドさんから聞いた。
「もしもし、パパ? アタシよ」
『ダチュラですか、どうかしましたか?』
え、パパ!? この声ってロクロウさんだよね。じゃあダチュラさんが……前にエチゾウさんが言っていたロクロウさんの養子って事!?
「お嬢様にちょっかいをかけているクソムシ野郎がいたから捕まえたんだけど、その野郎が自分は勇者召喚された一人だとほざいててさ。パパに確認しろって煩いから念話しちゃった」
『声を聴かせてくれませんか?』
ダチュラさんがオレの髪を掴んで頭を魔法陣に近づけさせた。イタタッ! 禿げるー!
「りょくろうしゃん、おれりぇすー!」
『オダケン様……ですか? 一体何をなさっていたのですか? もう戦闘訓練の時間ですよ? 喋り方が変ですよ?』
ああ、もう遅刻確定か……。どんなお仕置きがオレを待ってるんだろう。生きてるかなあ、明日のオレ……。
「あー、さっきアタシが麻痺毒打ったからだ」
『ううん、困りましたね。これでは質疑応答が出来ません。映像も送って下さい』
「メンド……」
『ダチュラ?』
「くさくないので、今すぐやりまーす」
ダチュラさんは魔法陣を切り換え、ちゃんと映るようにぐいと更にオレの頭を引っ張った。イタタ。それって魔法陣の位置を下げれば良いんじゃ……。
『……本当にオダケン様は何をなさっていたのですか?』
ロクロウさんが見たのは毒のせいで表情とか色々弛緩したオレと、ギラギラと目を輝かせてオレに馬乗りになったダチュラさん。そして、その背後で心配そうな表情をしているクーちゃんだった。
大きな溜め息を吐いた音が聞こえた。
『その方は本物のオダケン様です。信頼出来る方ですよ。ダチュラ、解放してあげなさい』
「あ……解毒剤何処かに忘れた」
『……それでは、毒の効果が切れた後にすぐ解放しなさい。ちゃんと謝るのですよ』
「はいはい」
ダチュラさんは生返事をしながら、魔法陣を収めて念話を切った。
気まずそうな目でオレを見ている。
「その……アタシも多少は悪かったと思うけどさ。でもアンタが怪しかったのは事実だし、今度からは気をつけてよね」
「……ダチュラ」
クーちゃんが優しく呼びかけた。静かに首を横に振っている。
「お嬢様ぁ……。うぅぅ…………ゴメンなさい……」
ダチュラさんはかぼそい声で弱々しく呟いた。さっきまでとは違い随分としおらしい。
「らいじょーぶれしゅよ。じゃあ、おわびにともらちにらってくりゃしゃい」
「……何言ってるか全然分かんないんだけど」
「にゃんとお!」
恥ずかしい……。『友達になってください』って言うタイミングって中々ないし、言うのにも勇気が要るんだよねえ。
ところでダチュラさん、いつまでオレに乗ってるんですか。言ったら殺されると思うから言わないけど、その見た目から想像出来ない程に重いんですが。絶対体中に暗器とか仕込んでるでしょう? さっきの針だって何処から取り出したのか分からなかったもん。
と思っていたら通じたのか、ダチュラさんが立ち上がった。軽く睨まれた。……きりんぐみーそふとりー。
「さあ、お嬢様。そろそろお部屋に戻りましょう」
「でも、オダケン様をここに放っておく訳には……」
「そんな事を言っていたらまた風邪をひいてしまいますよ。先日治ったばかりではないですか。またここに来られなくなりますよ。今日だって勝手に外出なさって。お嬢様はお身体が弱いんですから、無理はしないで下さいまし」
「分かっておりますわぁ……。でも、あと少しだけ。せめてオダケン様が治るまではここにいさせてください。わたくしにも責任はありますから」
クーちゃん、君はなんて優しい良い子なんだろう。お兄さん涙がちょちょぎれてきちゃったよ。
オレはそっと涙を拭った。
「……分かりました。でも、もう一枚ガウンを羽織って下さいね。何か温かいものも用意します」
ダチュラさんは渋々ながらもいかにも高級そうなガウンとティーセットを召喚した。裏起毛で暖かそうなガウンだ。今年のトレンドなのかなあ。冬用に見えるが、今の季節には早すぎないだろうか。ダチュラさんは黙々とお茶の用意をこなしていた。
召喚魔法は中々に便利そうだ。でも確かロクロウの教えだと、幾つか欠点があるんだっけか。同じ魔法陣が刻まれたもの、もしくは正確な位置座標が分かるものしか召喚できない。今思うと勇者召喚ってとても高度な魔術なんだなあ。それを一人でやらかしたロクロウさん……何者!?
更に重ね着をしたクーちゃんはまるまるもこもこと着ぶくれしていた。まるでサナギのようだ。
「オダケン様、どうかなさいましたか?」
オレの視線に気づいたクーちゃんが尋ねてきた。
「随分と厚着だねえ。暑くないのかい?」
「いつものことですからもう慣れ……あら!? オダケン様の喋り方が元に戻っておりますわ」
うん? おお、本当だ。痺れがとれてる。動けるぞ!
「見て見て、立てるよ! ほうら、踊りだって踊れるよ! 喜びの舞!」
「まあ、なんて不思議な舞でしょう!」
「嘘……まだ三十分も経ってないのに!? 分量を間違えたのかしら……? いや、そんな筈は……」
ダチュラさんは喜びに腰を振るオレを驚きの目で見つめていた。なんかそんなに見られると照れちゃうなあ。
何かを思い付いたのか、ダチュラさんはオレの背後に回り込んだ。その手には何処からか取り出した注射器のような物が握られていた。クリクリおめめにヒレっぽいのがついていて、マスコットみたいで可愛い。でもなんだかとっても嫌な予感。
「ダチュラさん……その手にあるのは何でしょう?」
「吸血魚で作った採血器」
「という事はつまり……」
「アンタの血液を貰うわ」
オレは逃げられなかった。ダチュラさんにしっかりと襟を掴まれていた。
「キャー。助けてー。殺されるー」
「変な声出さないで。採るって言っても少しだけよ。何リットルも採る訳じゃあるまいし」
「当たり前だよ! リッターいったらオレ死んじゃうからね!? 助けてえ、クーちゃん!」
クーちゃんは物悲しそうに、対照的的に騒ぐオレ達を見ていた。
「オダケン様が治ったら、わたくしも部屋に戻るという約束でしたね。やはりまだ少し名残惜しいですわ」
クーちゃんはしょんぼりとしながら呟き、お茶をすする。カップから昇る湯気が空中に霧散して見えなくなる。冷えた水蒸気が水滴となり、クーちゃんの長い睫毛に絡まった。
ダチュラさんは咎めるような視線をオレに向けていた。なんかごめんなさい……。
「茶葉が勿体ないですし、お茶を飲み終えるまでですからね。アタシも手早く用を済ませますので」
「本当ですか!」
クーちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
オレがそんなクーちゃんに見惚れていたら、ダチュラさんが首筋に針を打ち込んできた。そこ、さっきと同じ所!
オレは軽い貧血で重たい上体を四阿のテーブルに預けた。よく磨かれた石が冷たく心地良い。
「アンタもお茶飲む?」
「いただきます」
一口すすると、花のように甘い芳香が鼻孔を刺激してくる。更に舌の上で琥珀色の液体を転がし、大人びた渋味と酸味を味わう。こくんと喉に流し込めば、ハーブのようにすっきりとした香りが鼻を吹き抜け全体を調和させる。ああ、美味しいなあ。
「ダチュラさんってお茶淹れるの上手いんだねえ」
「当然だわ」
「はい、ダチュラの淹れるお茶はこの国で一番なのですわ」
「それは言い過ぎです、お嬢様。アタシなんかまだまだです」
「あれれ、なんかオレの扱いが雑だなあ」
「当然だわ」
ポットの中身が尽きるまでおしゃべりは続いた。
「オダケン様のお蔭で今日はとても楽しかったですわ。ダチュラ、体調が良い時にまたここに来ても良いですか?」
「構いませんよ。今日みたいに一人で部屋を抜け出さず、アタシと一緒なら。お嬢様はこの国の王女なのですから、もう少しその自覚を持って下さい」
えっ、クーちゃんって王女様だったの!?
タイトルでネタバレ。
クーちゃんは今後の展開の重要人物。
クレオーメもダチュラも花の名前。
ちなみに、クリスマス番外編なんかの予定はない。
そもそも、あんまり話が進んでない。
あらすじにある『エクスプロージョン』もまだ覚えてないし。
このままじやタイトル詐欺だあ。




