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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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精霊の森、封印5

襲いかかってきた歪みの黒い影が、カナを包み込もうとしたその瞬間、

突然、無数の精霊たちの光が彼女を取り囲んだ。


澄んだ輝きが波紋のように広がり、漆黒の闇を切り裂いていく。


「あなたたち……」


カナの瞳から、一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。

歪みに囚われ、消えていく精霊たちの悲痛な姿が、彼女の胸を締めつける。

それでもなお、彼らは必死に彼女を守ろうと光を放ち続けていた。


その優しさと献身に触れ、カナの心は激しく震えた。

歪みを生み出し、精脈を蝕む存在への耐え難い怒りが、彼女の内から沸き上がる。


「許さない……」


その怒りは、魔力となって一気に噴き出した。

まるで荒れ狂う波のように、怒涛の力がカナの身体を満たし、周囲に轟音の如く響き渡った。


光と闇の境界が揺らぎ、戦いの舞台が今、激しく揺れ動く――





カナの全身からほとばしる光は、世界そのものを塗り替えるかのようだった。

魔力の奔流は泉の底の水を震わせ、精霊層の空間を眩い波紋で満たしていく。


轟く光の本流が、黒き歪みへと突き進む。

闇は獣のような咆哮を上げ、幾重にも形を変えて抵抗したが、その全てが次々と光に裂かれていく。


光と闇が幾度も衝突し、空間は軋むように震えた。

だが、その度にカナの瞳は揺るぎなく輝きを増し、杖を握る手に宿る力はさらに強く脈打った。


――バシュッ!!


裂け目が走る。

黒き歪みの中心が引き裂かれ、そこから濁流のような闇が噴き出した。


それをも光が飲み込み、やがて闇は細い糸となり、霧散していく。



静寂。



泉の底に残ったのは、ただ柔らかな金色の光と、穏やかに揺れる水の気配だけだった。

カナはその場に膝をつき、胸の奥から静かに息を吐き出した。





泉の底で、精霊石が静かに青く淡い光を放ち始めた。

それは長い悪夢から目覚めたように、柔らかく、澄んだ色を広げていく。


シルヴィアが歓喜に満ちた声を上げる。


『カナ!! やったわ!!』


ナイアリスの低く静かな言葉が、深く水底に響いた。


『……見届けた。歪みは浄化された。

この森はじき元に戻るだろう。見事だった』


カナは胸に広がる安堵を感じながら、そっと息を吐いた。

精霊たちが祝福するように周囲へ集まり、その光のぬくもりが全身を包み込む。


「よかった…」


微笑みが浮かび、足に力を込めて立ち上がった、その時。


空間の奥で、かすかな歪みの残響が脈打った。

細く鋭い刃のような黒光が、音もなく水を切り裂き、一直線にカナの胸を狙ってくる。


歪みが息絶える際に放った、最後の怨嗟の牙。


カナの瞳が見開かれ、反射的に杖を振るう。

水底を震わせるほどの閃光が弾け、刃を正面から受け止める。


だが、その瞬間――

黒い刃の先端は砕けながらも、一筋の黒が突破し、カナの胸を深く貫いた。


『カナっ!!』


シルヴィアの叫びがこだまする。


冷たい重みが胸奥に落ちる。

息が詰まり、視界が白くにじむ。


それでもカナは声を上げず、両手に力を込めて杖を振り抜いた。

金の奔流が黒を飲み込み、残響は苦鳴にも似た振動を残し、塵のようにほどけて消えていった。


静けさが戻る。

しかし、カナの胸の奥には、氷片のような感触が残されたのだった。

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