セオの告白2
セオはゆっくりと目を閉じ、静かに口を開いた。
「兄さん……この世界の精霊の属性は、いくつあるか知っている?」
「……え?」
レイナルトとセレスタンは互いに顔を見合わせた。
「それは……六つだろう?」
レイナルトが答え、セレスタンもうなずく。
「風、水、土、火、光、そして闇――ではないのですか?」
だが、セオは首を振った。
「違うんだ。正確には……八つ」
「や……八つ?!」
二人は驚きを隠せず声をあげた。
セオは改めて頷く。
「正しくは、その六属性に加え、『空間』と『時間』が含まれるんだ。
僕も、王家に封印されていた、古代文字の文書で知ったんだよ。
……さもなければ、この能力の説明がつかない」
セオは深く息を吸い込み、静かに呟いた。
「……封精杖、顕現」
その言葉とともに、彼の手の中に一振りの杖が浮かび上がった。
「なっ……?! 幻ではないのか……?」
目の前に突然現れた杖に、レイナルトとセレスタンは思わず息を呑む。
「僕は土と、空間の精霊に祝福を受けているんだ。
そしてこれが、僕の研究の結晶だ」
杖は白銀に輝き、古代樹の木が織りなす美しい造形。
柄から先端部にかけて、細かな古代精霊文字がびっしりと刻まれている。
柄の部分には八角形の金具がはめ込まれ、その中央には精霊石が埋め込まれていた。
光を放つたびに虹色に揺らめき、その輝きが周囲を神秘的に染め上げる。
八角形の各面には小さな魔刻孔があり、そこから細やかな術式の光が走って、
空中に複雑な封印陣を形成している。
そこには、精霊そのものが宿っているかのようだった。
セオは静かに言葉を紡いだ。
「僕はこれを使って、各地に広がる歪みの進行を、少しでも抑えに行こうと思ってたんだ。
そして少しでも時間を稼ぎ、魔力の流れを辿ろうと思ってた」
言葉の重みが部屋に満ち、レイナルトとセレスタンはただ黙って聞き入った。
やがて、セオは視線を強く二人に向けた。
「今はこれを、カナに届けたい。少しでも力になれるように。
カナなら、きっともっと上手に使えるはずだから」
そして、学院長に目を向けて問いかける。
「学院長先生、どなたかに、これをカナの元まで託すことはできるでしょう、か……?」
その瞬間、レイナルトがゆっくりと手を挙げた。
セオの言葉を静かに制すと、低い声で言った。
「俺が行こう」
張り詰めた空気の中に、決意の響きが鋭く突き刺さった。
*
「に、兄さん?! 何を言って……?!」
レイナルトはゆっくりと目を閉じ、深く息をついた。
そして静かに、セオに向かって頭を下げると、言葉を紡ぐ。
「セオ……いや、ルセオラス。
俺はこれまで、こんな状況になるまで、お前の苦しみや覚悟に気づけなかった。
その無知を心から詫びたい」
レイナルトは顔を上げると、セオの目をじっと見つめた。
「お前が背負った重荷を、もっと早く共有できなかったことを申し訳なく思う。
これからは、お前と共に立とう」
言葉を一拍置くと、レイナルトは絞り出すような声で続けた。
「そして、カナとも共に――彼女を守り、支え、共に未来を歩みたいんだ。
たとえどんな困難が待ち受けていようとも――俺が、必ず彼女を守る」
彼の瞳に強い光が灯り、部屋に静かな覚悟が満ちた。




