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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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セオの告白1

「カナなら、きっと大丈夫だよ」


セオは穏やかに言った。


「あの祝祷で――きっと全ての精霊に愛されたはずだ。だから、きっと守ってくれる」


「いや……」


レイナルトは蒼白な顔のまま、低く否定する。


「確認した。カナはすべての精霊に愛されてはいるが、

彼女が扱えるのは――風と水、そして光だけだ」


セレスタンも頷く。


「そう……なんだ」


セオは小さく呟くと、静かに目を閉じた。

しばしの沈黙。


やがて目を開いた彼は、真っ直ぐにレイナルトとセレスタンを見据え、口を開いた。


「……なら、急がないと」


セオの声は低く、研ぎ澄まされた刃のようだった。


「風と水と光だけじゃ、全部は守れない。闇や炎に晒されたら……」


言葉を切り、彼は一瞬だけ唇を噛む。

レイナルトの肩がわずかに強張った。


「カナは、狙われる」


その一言が、重く室内に落ちた。

セレスタンの表情も硬くなる。


「……すでに動いている可能性もあるか……」


空気が冷えたように感じられ、誰もが次の一手を探るように沈黙する。





セオは、決意を固めたように息を吸い込んだ。


「……カナを助けるために、僕の研究を話すよ、兄さん」


その瞳には迷いがなかった。

静かに手を掲げ、低く呟く。


「――霊路(れいろ)顕現」


瞬間、空気がわずかに震え、彼らの目の前に王国全土の立体地図が浮かび上がる。

大地の奥を流れる精脈が、脈動する光の線として顕れた。


正常な流れは淡く青白く輝き、しかし――ところどころに、赤黒く濁る歪みが脈打っている。


「なっ!」


「……これは……!!」


レイナルトも、セレスタンも、言葉を失ったまま、その光景に見入っていた。


「これは、王国の精脈の流れだよ」


セオは淡々と告げる。

地図の上に浮かぶ赤黒い脈動を、レイナルトとセレスタンは無言で見つめる。

それが「危険な歪み」を意味することなど、説明されるまでもない。


「……こんなにも歪みが……」


レイナルトの声はかすかに震えていた。


「そう。そして――」


セオは指先で地図上をなぞった。


「それは徐々に、この学院の精霊樹に近づいているんだ。

隣国は魔術大国――我が国の精霊の祝福と魔術の調和を脅威とみなし、それを破壊しようとしている。

精脈が乱れれば土地は荒れ、民は混乱に陥る。

きっとその隙に攻め込むつもりなんだ。

だから……精霊樹が闇に呑まれたら、王国は……きっと、終わる」


レイナルトとセレスタンは絶句した。


そしてレイナルトの視線は、自然に辺境へと向かう。

そこは、赤すら霞むほど、真っ黒に塗りつぶされている。


「……精霊の森が……」


絞り出すような声が、室内の張り詰めた空気を震わせた。


「最初は……精霊の森の周辺だけだったんだ」


セオの声は低く、しかし一言ごとに重みを増していく。


「それが今では、あちこちに広がっている。

――これは、この国の誰かが協力していると考えるべきだ」


レイナルトは息を詰まらせ、言葉を失った。


「……内通者か。何のために……」


「媒介者なのか……それは、まだ分からない」


セオは、地図から視線を外さずに続ける。


「今、魔力の流れを辿っているところなんだ。

ただ、一つだけ、確かに言えることがある」


彼は短く息を吐き、二人を見た。


「――干渉を行っている敵術者が生きている場合、歪みは時間を置いて……必ず再発する」


その言葉が落ちた瞬間、室内の空気はさらに冷え、誰もが次に来る危機をはっきりと想像した。

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