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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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明かされる目的

ep.84の続きになります!

「……ルセオラス……いや、セオ。なぜここに」


声がわずかに震えた。

弟は、落ち着いた笑みを浮かべたまま、ゆっくりと歩み寄る。


「隣国から、きな臭い噂が届いたんだ。

国境沿いでの動き、交易路での不審な荷……。

留学を続けている場合じゃないと思ってね」


淡々とした口調だが、その言葉の奥には冷ややかな緊張が潜んでいる。


「帰ってきてからは、ずっと調べ物と研究をしてたよ。

……父上も、学院長先生も知ってる。だから学院の中で動いても黙認されてるんだ」


レイナルトは一瞬、言葉を失った。


「研究……? どこにいた」


「一般寮だよ。あそこなら、誰の目にも留まらない。護衛もいない方が動きやすい」


肩をすくめる仕草は軽やかだが、その瞳は一片の冗談も含まない。

月明かりが二人の金髪を照らし、兄弟の輪郭を浮かび上がらせる。


ルセオラスはカツラと眼鏡を戻す。

セオ・クローヴァに戻ると、一歩踏み出し、手を差し出すと言った。


「詳しい話は学院長室でしよう。

兄さんにも聞いてほしい」


「……わかった。

……良く戻った。セオ」


しばしの沈黙のあと、レイナルトはその手を握り、固く握手を交わす。

そして短く息を吐くと、頷いた。

夜風が二人の間をすり抜け、精霊樹の葉をさらりと揺らす。


二人は中庭を後にし、静まり返った学院の廊下を連れ立って歩き出す。

石畳に響く靴音だけが、長く尾を引いて夜に溶けていった。





学院長室の重厚な扉が静かに開く。

セレスタンは二人の姿を見ると、静かに息をつき、セオを見た。


「ついに、明かされたのですね」


その言葉には、覚悟と重責が込められていた。

セレスタンはゆっくりと立ち上がると、レイナルトに向かって頭を下げる。


「レイナルト殿下。

陛下の命により、ルセオラス殿下のことをお伝え出来ず、申し訳ありませんでした」


レイナルトは少しだけ緊張の色を滲ませながらも、真剣に頷くと言った。


「いや……理由は聞いた。どうか、顔を上げてほしい」


隣にいるセオは、静かな表情を崩さない。

セレスタンは彼に向かうと、静かな口調で問いかけた。


「では、研究は成功されたのですね」


彼はゆっくりと頷いた。


「ええ。これまでの調査と、実験の成果は確かなものです」


その言葉に、レイナルトは眉を寄せた。


「……セオ。さっきから言っている『研究』とは、一体何のことだ?」


セオの目が鋭く光る。


「王国の安寧を脅かす、隣国の不穏な動きに関するものだよ。

精霊の力の異常な乱れや、封印の緩み……。

それらの原因を解明し、対策を講じるために研究していたんだ」


空気が一層引き締まった。

レイナルトの眉間に深い皺が寄った。


「その異常な乱れと封印の緩みとは……具体的に、何を意味するんだ?」


セオは言葉を選びながら答えた。


「長年、王国の守護にあった精霊の力が不安定になって、弱まっているんだよ、兄さん。

それは単なる自然の乱れではなくて……。

多分、というか、十中八九、隣国の意図的な介入があると思ってる」


彼は続ける。


「だからこそ、僕は帰国して密かに研究を進めてきたんだ。

新たな封印の方法や、異変の原因となる存在の特定を」


沈黙が室内を満たす。


レイナルトは眉を上げると息を呑み、低く言葉を紡いだ。


「……精霊たちの力が不安定になるというのは……。

もしや、森や土地に異変が起こるということか?」


セオは頷いた。


「そう。

……って、に、兄さん、大丈夫?!」


レイナルトは、音を立てて血の気が引くのが分かった。


「辺境の精霊の森の異常……カナが、そこへ向かっている。

もしや、隣国の、手の中へ……?!」


「えっ?! カナが?!」


セオはセレスタンを見る。

学院長は眉をひそめて頷いた。


「精霊の森近郊で異常発生、調査ということで、

精霊庁の上級官、エリアス・グランと共に向かっています」


セオは絶句した。


「カナが……」


学院長室に、重い沈黙がのしかかっていた。

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