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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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決意を、胸に

夕暮れの空が紫色に染まるころ、カナとエリアスは静かに村へと戻ってきた。


「ただいま……」


カナとエリアスがゆっくりと扉を開けて中に入ると、

疲れ切った表情のエダンと、やや赤い目で彼らを迎えたマリナの姿があった。


「おお、よく無事に戻った!」


エダンの声は安堵に満ちていた。

マリナもにっこりと笑いながら、力強くカナの手を握る。


「本当に良かった……あなたたちが無事でいてくれて、どんなに嬉しいかわからないわ」


カナは、胸がじんわりと温かくなるのを感じながらも、心の中にはまだ緊張が残っていた。


「あの、エダンさん、マリナさん……」


話そうと口を開いたカナを、エダンが優しい声で制した。


「まずは落ち着け。夕食をとろう。話はその後にしよう」


マリナが奥の台所から、熱々の料理を何皿も運んでくる。

温かな灯りの下、テーブルにはたくさんの心のこもった料理が並ぶ。


エリアスは、一度は礼を言ってから「自分は村の宿に」と言いかけたが、

マリナがにこやかに声をかけた。


「どうぞ、ゆっくりしていってください。

いっぱい食べて、疲れを癒してくださいな」


その温かい言葉に、エリアスはぎこちなくも微笑みを返し、席に着いた。

フォークを手に取り、最初の一口を口に運ぶ。


「……美味しい」


カナが満面の笑みで頷いた。


「そう!マリナさんの料理は、とっても美味しいんです!」


マリナは照れくさそうに微笑む。

温かい空気が部屋を満たしていた。

彼女は嬉しそうに笑い返す。


「ありがとう。

あなたたちのために作ったのよ。いっぱい食べてね」


部屋の中には、ほっとする温もりと、しばしの安息が広がっていた。


夕食を囲みながら、エダンはカナに微笑むと静かに言った。


「こうしてまた、カナと一緒に食事ができることが、何よりの喜びだ」


「……エダンさん……」


カナはその言葉に胸が熱くなり、涙がこぼれそうになるのを必死で堪えた。





夕食後。

皆で、居間に移動する。


エリアスは言葉を発さず、ただ静かにカナの隣に座った。


カナが震える声で口を開く。


「……私、靄を抑えられるかもしれません」


カナは、自分が消えてしまうかもしれないことは伏せ、

学院で光の精霊に浄化の力を授かったこと、

その力で、靄が抑えられるかもしれないことを話した。

もし靄が消えれば……人々は少しずつ元に戻ってくると。


それを行うのは――今夜だということも。


エダンはカナの目をじっと見つめ、深く息を吐いた。


「カナ。お前のことはもう、我が子のように思っている。

だからこそ、その言葉が嬉しくもあり、同時に怖くもある」


マリナはカナの手をそっと握り、優しく声をかける。


「無理はしないで。あなたが倒れてしまっては、私たちみんなが悲しむ。

どうか、自分の身体も大切にして」


カナはマリナの温かいまなざしに胸を締めつけられ、強く頷いた。


「ありがとうございます。

でも……皆のために、やらなければ」


マリナは涙を流しながら、そっとカナを抱きしめた。


「どうか、無事でいて。お願いよ……カナ」


エダンもまた、涙をこらえながら静かにその様子を見つめると言った。


「お前の覚悟はわかっている……。

だが、忘れるな――誰よりもお前自身を守ることも、戦いの一つだと」


エダンには、カナが何か大事なことを隠していることが分かっていた。

その上で、彼女の悲壮なまでの決意が、何よりも強く伝わっていた。


その言葉に、部屋に緊張が走る。

カナは深く息を吸い込み、覚悟を新たにした。


「必ず……帰ります」


静かな決意が、夜の闇に溶けていった。

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