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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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エリアスの想い

シルヴィアに別れを告げ、カナは森の中の来た道を戻っていった。

木々の間を抜け、大きく夕暮れ色の空が見えた瞬間――


「……!!」


こちらを見つけたエリアスが、安堵の息を吐いたのが分かった。

肩の力が抜け、こちらに駆け寄ってくる。


「カナ! 大丈夫か? 

心配していた。ケガはないか?」


カナは深く息を吐き、強く頷いた。


「はい……大丈夫です。

シルヴィアから、森の異変のことを聞いてきました」


「そうか……とりあえず、森から出よう」


二人は森から出ると、村に向かって歩き出した。




「……エリアスさん……」


カナは話した。

精脈のこと、黒い靄の正体、水の精霊王の加護を受けたこと。

そして――。


口ごもりながらも、覚悟を胸に秘めて言葉を紡ぐ。


「……シルヴィアから聞いたんです。

もし、私の魔力が浄化に耐えられなければ……私は消えてしまうかもしれないって」


彼女の瞳は揺れ、言葉の重みに押しつぶされそうだった。

エリアスの表情は一瞬、凍りつき、心臓が締めつけられるような痛みが走る。


「消える、だと……? そんなの、絶対に許さない」


彼の声は震え、感情が溢れ出すのを止められなかった。

エリアスは握りしめた拳を見つめ、しばらく動けなかった。


目の前のカナは、強い決意を抱いている。

それでも、彼の胸の中では、不安と恐怖が交錯し続けていた。





カナが告げた重い言葉は、エリアスの胸に鋭い棘のように突き刺さった。


「消えるかもしれない」――その言葉は、彼の中で幾度も反響し、

彼の胸に、凍てつくような恐怖と、無力感が押し寄せる。


彼がカナに出会ったのは、ただの仕事だった。

精霊庁からの派遣で、精霊の声を聞く少女を迎えに来ただけ。


――それなのに。


その屈託のない笑顔と優しさに触れるたびに、胸が締めつけられるような恋心を覚えた。


しかし、カナの瞳が向く先は、レイナルト。

レイナルトがカナへ向ける想いも、痛いほどわかっている。


だからこそ、言葉にできない。

告げれば、きっと彼女の未来を壊してしまう。


「カナが……消えるなんて、そんなこと、絶対にあってはならない……!」


だが、その言葉を口にすればするほど、現実の重みがのしかかった。

守りたいと願う相手が、今にも消えてしまうかもしれないという無力感。


でも今、目の前で消えそうな彼女を前にして――抑えきれない感情が爆発した。


「俺だって、お前を――!」


叫びながら、カナを強く抱きしめる。

その瞬間だけは、彼の中の迷いも、遠慮も消え失せた。


抱きしめる腕の力が増すたびに、抑えていた想いが爆発する。

カナの戸惑いと温もりが、彼の心の中で絡み合う。


けれどすぐに、自分の行動が何を意味するのか理解し、慌てて身体を離す。


「すまない……忘れてくれ」


声を震わせながらも、顔を背ける。


「俺はただ、君を守りたいだけなんだ」


けれど、その言葉は自分自身への言い訳にも聞こえた。

本当は――自分も、彼女の側にいたいのに。


彼女の幸せを願う気持ちと、自分の想いの狭間で、エリアスの心は引き裂かれていた。

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