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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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情報収集2

途中に立ち寄ったいくつかの村でも、似たような噂を耳にした。

眠ったまま目覚めぬ者。突然、意味のわからぬ言葉をつぶやき始めた者。


エリアスは言った。


「フェイル村手前の村に立ち寄って、もっと詳しい情報を集めたい。

森の異変を最初に目撃したのは、あの村の猟師たちだ」


そこは、山間の小さな村で、畑と果樹園の緑に囲まれた、のどかな土地だった。

だが、その穏やかさとは裏腹に、村の空気には、どこか張り詰めたものが漂っていた。


カナとエリアスは、村の広場に面した大きな屋敷――村長の家を訪ねた。


迎えてくれたのは、村長である初老の男性。少し疲れた表情をしていたが、

礼儀正しく応対してくれた。


エリアスは突然の訪問を詫び、精霊庁の調査だと明かす。


「今、フェイル村で何が起きているのか……教えていただけますか?」


村長は一度黙って視線を落とし、二人を招き入れる。


「……寝たまま、起きてこない者が数人いると聞いております。

最初は病かと思いましたが……目覚めないようです。

そして、黒い靄の近くに長く留まった者、触れた者は、人が変わったようになるようです。

まるで、魂ごと抜け落ちてしまったかのように」


その言葉に、エリアスが低く唸る。


「……黒い靄……」


 村長が小さく頷く。


「……ええ……帰ってきた時には、既に様子がおかしかったそうです。

まるで夢の中にいるかのように、誰とも目を合わせず、言葉も通じず……」


すると、部屋の隅にいた白髪の老人が、低く呟いた。


「……夢にあらずして、夢の淵。

魂……深く沈みて帰らず……」


その声に、三人の視線が動く。老人は杖をついて歩み寄り、静かに口を開いた。


「昔、似たような話がこの地にもあったのじゃ。

黒き靄と夢の病、古き伝承。忘れ去られし古の言葉じゃが、こんな詩が伝えられておる」


彼はゆっくりと、確かめるように、詩を語った。


「かの黒き夢、魂を深く呑みしもの、白き息絶ゆとも魂は還らず。

彼のものら、深淵にて見果てぬ願いに縛られつつ、夢とて夢ならず」


語られた詩の響きが、空気を震わせる。

瞬間、エリアスが目を見開く。


「……その詩は!」


言葉の続きを呑み込むようにして、彼はすぐに黙った。

代わりに、強く唇を噛み締める。


カナが不安そうに見つめると、エリアスは小さく首を振った。


「この詩は……今となっては一部しか残されていない、古の記録にある呪詛に酷似している」


「ご存知なのですか?」


村長が驚いたように問うと、エリアスは静かに頷く。


「“夢とて夢ならず”――これは、病ではない。

……これは、深層意識への干渉。

あるいは……魂そのものを閉じ込める何か、です」


「それは……?」


そう問う村長の声には、震えがあった。

エリアスはしばし黙し、やがて静かに答える。


「……いいえ。すみませんが、まだ断定はできません。

だが、少なくとも、靄に触れた者や眠り続けている者の魂が

”何らかの力で捕らわれている”と仮定すれば、回復の手がかりもあるはずです」


その言葉に、村長と長老は、わずかに希望を見出したように顔を上げた。

だがカナの心には、ひとつの疑問が灯っていた。


――夢に囚われた魂は、どこにいるのだろう?


その問いに、応える者はまだいなかった。

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