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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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情報収集

学院を出て数時間、馬車は揺れることなく順調に進み、

ふたりの焦燥を現すかのように、早く王都を離れていった。


カナはようやく落ち着き、そっと窓の外を見る。

そこには、懐かしい草原が広がっていた。


彼女は少し緊張した面持ちで、エリアスの方へ身体を向けた。


「……エリアスさん、

精霊の森の異変って……今、どこまでわかっているんですか?」


エリアスは腕を組み、真剣な表情で答えた。


「報告によると……森の奥の木々が、一斉に枯れ始めたらしい。

代わりに、見たことのない黒い(もや)が漂い、

森の動物たちが怯えて外に逃げ出しているという。

周囲の住民にも、眠りから目覚めない者が出ている……」


「……そんな……」


カナの胸がざわつき、シルヴィアの姿が脳裏をよぎる。


「森にとって、ただ事じゃない現象だ。

精霊庁では、強力な魔力干渉か、封印の類いが解かれた可能性を疑っている」


エリアスの声は低く、その表情からも事態の深刻さが伝わる。


「村の者たちによれば、ほんの数日前までは何もなかったそうだ。

ある日を境に、急激に枯れ始め、眠り続ける者が現れたと……」


「……」


カナは、深刻な状況に絶句した。

やがて馬車は小さな村の前で止まった。


王都にも近い、商人や旅人がよく立ち寄る集落だ。


「ここで一度、情報を集める。

フェイル村や森の様子を 詳しく聞いておきたい」


エリアスの声に、カナは静かに頷いた。

エリアスが馬車を降り、カナにも手を差し伸べる。


カナは緊張を押し殺しながらその手を握り、静かな村の通りに足を踏み入れた――。





村はこぢんまりとしていたが、騎士団の駐留地としても使われているのか、

外れに立つ酒場には、それなりに人の出入りがあった。


カナとエリアスは馬車を宿の裏手に止め、目立たぬようにフードをかぶって酒場の中へと入った。

木造りの広間には暖炉があり、旅人らしき男たちが数人、ぬるめの酒を片手に談笑している。


「こう言う場所で、皆、情報収集をするんだ」


エリアスが低く囁く。

カナは小さく頷き、耳を澄ました。


「……黒い(もや)が、森の奥から這い出してくるのを見たってやつがいたな」


「なんだそりゃ、化け物でも出るのか?」


「いや、見たやつはおかしくなっちまった。昼間なのに、ずっとぶつぶつ独り言を……」


「それに、あの音……」


別の男が低くつぶやく。


「森の奥から、まるで獣でも呻いてるような、不気味な音がするって話だ」


「夜になると、森の奥からうなり声みたいな音がするって……あれ、聞いたら眠れなくなるってよ」


「そんな……」


カナが思わず呟いた言葉に、近くにいた給仕の娘が小さく首を横に振った。


「精霊の森の異変。最近、その話ばっかり。

……あの森は、本来、静かで、優しい場所だっていうのに」


酒場を出たあと、カナは小さく唇を噛んだ。


「黒い靄、獣のような音……森の奥で、何かが起きてる……」


エリアスは頷き、カナを見る。


「噂がここまで広がっているとはな……。

今日はここに泊まろう。

もう少しフェイル村に近づけば、核心的な情報がつかめるかもしれない」


エリアスの声に、カナは静かに頷いた。

胸の奥に、不安の種がじわじわと根を張り始めていた。

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