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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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出発前夜

サラはしばらくカナを抱きしめたまま、涙を見せまいと必死に堪えていた。

やがて、わずかに肩を震わせながら、低くかすれた声で囁く。


「……おみやげ、買ってくるから。

きっと……受け取ってよ」


その言葉に、カナの胸がぎゅっと締めつけられる。

涙に濡れた瞳でサラを見上げ、小さく、それでも強い決意を込めて答えた。


「……帰ってきたら、サラにも、ミリアにも……聞いてほしいことがあるの。

今はまだ、言えない。

だから……必ず、帰ってくる」


サラは黙って頷き、もう一度だけ強くカナを抱きしめた。

その背を優しく撫でながら、何も言わずに想いを伝えるように。





――そして夜。


カナは旅行鞄を開き、静かに荷物を詰め始めた。

部屋はひっそりと静まり返り、

月明かりだけがカーテンの隙間から差し込んでいる。


鞄を閉じて、静かに部屋を見回す。

カナの視線が棚で止まる。

花冠はあの日のまま、淡い光を放ち、静かにそこにあった。


そっと両手で持ち上げ、静かに胸に当てた瞬間、

胸の奥に押し込めていた感情が溢れ出した。


花冠から、レイナルトの温もりが感じられるようで……その優しさを思い出すだけで涙がにじむ。


「……大好きです……レイナルト様……っ」


小さな声が、静かな部屋に吸い込まれる。

カナは花冠をぎゅっと抱きしめ、

彼が月明かりの下で見せた、切なくも優しい瞳を思い浮かべる。


――最後かも、しれないだろ……?


――必ず帰って来い。もう、二度と離さないから。


その声が耳元に蘇り、頬を一筋の涙が伝った。

ベッドに横たわり、枕を抱きしめ顔を埋める。


泣き声を必死に抑えながら、ただ、心の中で何度も願った。


――絶対に、戻ってくる。


――もう一度、レイナルトの腕の中に……。


月明かりに照らされる中、カナはそのまま静かに目を閉じ、涙に濡れたまま眠りへと落ちていった。

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