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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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不穏な影

生徒たちが成績表を受け取り、一喜一憂している頃。


学院の門を抜けて、一頭の早馬が駆け込んできた。

その背には、精霊庁の紋章入りのマントをまとった伝令。


門番と短く言葉を交わすと、馬上から封蝋のついた書簡を差し出した。


「……精霊庁より至急。エリアス・グラン殿にお渡し願いたい」


伝令はすぐに踵を返し、砂煙を上げて学院を後にする。


すぐに、学院内に滞在していたエリアスのもとへ封書が届けられた。

封を切り、内容を読むや否や、彼の表情が険しくなる。


「……フェイル村近くの精霊の森で、異変……だと?」


手紙を読み終えると同時に、立ち上がる。


「……学院長に報告する。取次ぎを」


足早に学院長室へ向かう廊下を進みながら、

エリアスの胸に、フェイル村で出会った少女――カナの顔が浮かんでいた。





「おはよう、エリアス。よく眠れましたか」


「はい。学院長。失礼します」


扉を開けるエリアスに、学院長セレスタンは、机の上の書類に目を落としたまま声をかけた。

しかし彼のただならない声にすぐ視線を上げる。


「……何かあったのですか」


「たった今届きました……こちらを」


セレスタンが封書を受け取る。

そこにある精霊庁の紋にわずかに眉を上げたが、静かに目を通す。


『フェイル村近郊、精霊の森に異変発生。

精霊の反応が急激に乱れ、森全体が不安定化。

周辺住民にも影響の恐れあり。至急対処を要す』


「なんと……」


しばし沈黙した後、深く眉間に皺を寄せた。


「……この報告、彼女の覚醒と無関係とは言えないでしょう」


エリアスは頷く。


「……やはり、そう思われますか」


「精霊の力が急に増し、影響を及ぼすことは珍しくありません。

まして、あれほどの祝祷の後だ……」


学院長は重くため息をつき、机に指先を組む。


「フェイル村は、あの子が最初に庇護を受けた場所……放ってはおけん」 


学院長はしばし沈思し、やがて机の上の封書を閉じた。


「……いずれにせよ、誰かが向かう必要がある」


その低い声には、迷いのない決意が滲んでいた。

エリアスは一歩前に出ると、胸に手を当てる。


「私が参ります。

精霊庁の職務として、現地を調査し、必要な措置を講じましょう」


学院長はわずかに頷き、その瞳に確信の光を宿す。


「……それが良いでしょう。ですが……。

彼女の同行が必要かもしれません」

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