学院祭3
舞台裏の扉が静かに開くと、ユリアンが現れた。
「サラ、お疲れさま。素晴らしい舞だったね」
殿下は舞台の時と変わらない穏やかな笑みを浮かべながら近づいてくる。
サラは驚きながらも立ち上がり、頭を下げた。
「殿下……こちらこそ、ありがとうございました。
殿下の魔術があったからこそです」
殿下は軽く首を振る。
「いや、私一人ではあの雰囲気は作れなかった。
君の光と幻術があったからこそだ。
……正直、舞っていて本当に星の中にいるような気がした」
その言葉に、サラは少しだけ頬を染めるが、すぐに表情を引き締める。
「……ありがとうございます。
そう言っていただけると、練習を重ねた甲斐がありました」
ユリアンがふと視線を動かし、カナとミリアを見る。
「君たちも、見に来てくれてありがとう」
「は、はい! 本当に……お二人とも、とても綺麗でした!」
ミリアが少し緊張しながら答えると、カナも小さく頷いた。
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
ユリアンはにこやかに微笑むと、軽く会釈をして部屋を後にした。
扉が閉まると、ミリアが感嘆の息を漏らす。
「はぁ……やっぱり殿下って……オーラが違うね……」
「まったく……ミリアったら」
サラはほんのわずか笑うと、呟くように言った。
「今日は……ありがと。
……二人が見に来てくれて、私、本当に嬉しかった」
*
サラに別れを告げた後、カナとミリアは、
待っていたセオと一緒に、騎士科の広場へと向かった。
そこでは、騎士科の学院祭恒例の模擬戦――予選が行われている。
円形の訓練場には観客席が設けられ、歓声と剣戟の音が響き渡っていた。
鎧に身を包んだ生徒たちが、真剣な表情で剣を交え、砂煙が立ち上る。
「わぁ……迫力あるね……!」
ミリアが目を丸くする中、セオは席に腰を下ろすや否や、
前のめりになって食い入るように戦いを見つめた。
騎士科の二人がぶつかり合い、鋭い打撃音が響くたび、セオの手が膝の上でぎゅっと握られる。
「……動きが速い……あの剣筋、防御のタイミング……すごい……」
小さく呟きながら、瞬きすら惜しむように試合を追う。
カナがそっと横顔を覗くと、セオの瞳は熱を帯び、
普段の控えめな雰囲気とはまるで別人のようだった。
「セオ、騎士科に入りたいの?」
カナがそっと尋ねると、セオは一瞬だけ視線を外し、少し恥ずかしそうに答えた。
「……昔から、騎士に憧れてたんだ。
でも、剣を握るより、精霊と向き合う道を選んだんだ」
その声は淡々としているのに、ほんの少し悔しさがにじんでいる。
「でも、セオって精霊術もすごいでしょ?
剣だけじゃない、精霊だって人を守れるんだよ!」
ミリアが横から笑顔で覗き込む。
「セオならきっと守れる人になるよ! 私、応援する!」
「……ありがとう、ミリア。
だけど、こうやって見ると……やっぱり、憧れるんだ」
ミリアの言葉に、セオはわずかに頬を赤らめながらも、もう一度戦いに目を戻した。
その瞳は、騎士の姿を夢見る少年のまま、まっすぐに輝いていた。




