学院祭2
舞台が静まり返り、淡い光の粒が降り始める。
やがて、星空を思わせる背景の中央に、サラが姿を現した。
普段の彼女は、クールで言葉少なげな少女。
しかし、この瞬間――光のドレスを纏ったサラは、まるで夜明け前の星の化身。
長い銀糸の髪が光を受けて揺れ、観客の目を奪った。
「……え? あれ……本当に、サラ……?」
ミリアの呟きは空中に消える。
反対側から現れたのは、第三王子、ユリアン・ノクトス・ヴェルデン。
淡い蒼のマントを翻し、紫の瞳に金の光を宿して。
二人が目を合わせた瞬間、舞台の空気が変わった。
音楽が静かに流れ出す。
サラが一歩、そしてもう一歩と舞台中央へ進み、ユリアンがその手を取る。
指先が触れ合うと、光の粒が舞い上がり、会場全体が星屑に包まれた。
――壮絶に美しい舞が始まる。
二人の動きは、まるで夜空に描かれる星の軌跡。
サラの纏う光が柔らかく広がり、幻術で現れた光の蝶が二人の周りを舞う。
ユリアンの動きは流麗で力強く、サラを抱き上げるたび、星が流れるように降り注いだ。
「……すごい……」
ミリアが隣で息を呑む。
カナは声を出せず、ただ目を奪われていた。
舞の終盤、サラが宙に浮かび上がる。
ユリアンが魔術で支え、二人はまるで夜空を翔ける双星のように、観客の頭上を舞った。
光と幻術が一体となり、舞台全体が天の川のように輝き出す。
最後に、二人がそっと舞い降り、静かに手を重ねた瞬間――
星々の光が一斉に弾け、夜明けを思わせる黄金の光が会場を包む。
割れんばかりの拍手と歓声。
カナとミリアは感激で涙が止まらない。
サラは一礼し、舞台の光の中で、普段と同じ涼やかな笑みを浮かべていた。
*
舞台が幕を閉じ、歓声が遠のいていく。
舞台裏に戻ったサラは、深く息を吐きながら鏡の前に座った。
カツラの留め具を外すと、舞台の光を浴びて銀色に輝いていた髪がすっと外れ、
元の短い金髪が現れた。
「ふぅ……やっぱり少し重たいな」
サラは苦笑し、そっとカツラをテーブルに置いた。
その時、ミリアが駆け込んでくる。
「サラ! すっごく綺麗だったよ!」
ミリアが興奮した声で飛びつき、カナも目を輝かせながら近づく。
「ほんとに……綺麗だった。星みたいだった……」
サラは二人を見て、わずかに照れたように肩をすくめる。
「ありがと。……舞台用の魔術、かなり練習したんだ。
ユリアン殿下が相手役だったから、失敗できなかったし」
「もう! あんなにすごいのに、どうして秘密にしてたの?」
ミリアがサラの手を取って首を傾げると、サラは小さく笑った。
「魔術科は競争が激しいんだ。
目立ちすぎると面倒だから……でも、学院祭くらいは、ね」
その声は相変わらずクールなのに、どこか優しい。
カナは胸が温かくなり、そっと言葉を添えた。
「サラ、すごく素敵だった。
私も、あんなふうに……できるようになりたいな」
サラはカナの頭に手を置き、柔らかく撫でる。
「何言ってんの。カナはもう、十分特別だよ。
……精霊たちがそれを知ってる」
「そうそう!」
ミリアが力強く頷き、三人は顔を見合わせて笑い合った。
その時、ノックの音が響く。
「はい。どうぞ」
サラが言うと扉が開き、ユリアンが静かに現れた。




